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11.アリエルの弱点?

 ご飯を食べ進めていると、廊下から賑やかな声が聞こえてきた。

 近づいてくるにつれ、それは会話と言うよりは言い合いのようだった。

 ダイニングの扉が開かれる。

 入ってきたのは次女のアリエルさんと三女のジャスミンさんだった。

 

「だーかーらー! もう犬とか猫を連れてくんなってんの!」

「なんで~! 可愛いのに~」

「可愛くねぇよ、あんなの!」

「えー? 今度アーちゃんも一緒にもふもふしようよ」

「ふざけんな、ぜってー嫌だ!」


 何やら怒っている様子のアリエルさん。怒られていることが納得いかないのか、膨れっ面のジャスミンさん。

 犬や猫って単語が聞こえたから、今日の子猫の話をしているみたいだ。

 ジャスミンさんは動物が好きみたいだから、ペットにしたいらしい。けど、それにアリエルさんが反対しているようだ。

 

「ったく。もう連れてくんなよ。ティナ今日の晩飯は――」


 ため息を吐くアリエルさんと私の視線が合う。

 ペコッと頭を下げると、舌打ちをされた。


「んだてめぇ。まだいたのか」


 ギロリと睨みつけられる。

 さっきジャスミンさんに怒っていた時は顔は怖くなかったのに、今はめちゃくちゃ迫力のある怖い顔をしていた。

 アリエルさんに先生と認めてもらう日はまだまだ遠い。

 

 よし。

 ここはティナさんの美味しい晩ご飯をみんなと囲んで会話に花を咲かせて、親睦を深めるとしよう。

 私とシャルの出会いの話なんて、きっと楽しんでくれると思う。


「アリエル様とジャスミン様も晩ご飯ですか?」

「うるせぇ! 話しかけんなっ!」


 一蹴された。

 ていうか、最初に話しかけてきたのはアリエルさんだったような……。

 相変わらず乱暴な言葉遣いだなぁ、なんて思っているとアリエルさんが踵を返した。

 再び廊下へ向かうアリエルさんに、ご飯の用意をしようとしていたティナさんが質問する。


「え、アリエル様、どこへ」

「そいつと一緒になんて食えるかっ!」

「アーちゃん、ご飯食べないの?」

「後で来る! けっ、そいつのせいでオレの生活リズムが狂うぜ」


 私を毒づきながらダイニングの外へ向かうアリエルさん。

 廊下へ出る一歩手前で立ち止まった。

 あれ? やっぱり一緒に食べたくなったのかな? ツンデレか? ツンデレなのかな?

 アリエルさんは振り返って私を睨み、


「べーっ!」


 舌を出して、アリエルさんはダイニングを出ていってしまった。

 アリエルさんを追いかけて、ジャスミンさんも出ていく。


「待ってよアーちゃん!」


 バタンと扉が閉まり、ダイニングには静けさが戻った。

 アリエルさんとジャスミンさんのお皿を準備していたティナさんは、並べたお皿を回収する。


「本当にすみません、クロエさん」

「あぁ、いや。なんか私のほうこそすみません」

「いえいえ。クロエさんが謝ることはありません」


 ティナさんがそう言ってくれるけど、申し訳ない。

 どう見ても私が来たせいでティナさんの仕事が増えている。ただでさえ一人増えているっていうのに、余計なことまでさせていると思うと、心苦しい。

 一日も早く、ティナさんがストレスで倒れてしまう前に四姉妹と距離を縮めないと。

 そして魔法を覚えてもらって、立派な冒険者になってもらおう。

 

「そういえば、このお屋敷は犬や猫を飼っていないんですよね?」

「ええ。はい」

「ジャスミン様、すごく飼いたそうなのにどうしてです?」


 これだけ広いお屋敷なら犬や猫の一匹や二匹くらい飼っていても不思議じゃない。

 ティナさんの負担は増えるかもだけど、個人の部屋でも十分お世話できると思う。


「クロエさんの言う通り、ジャスミン様は何度も子犬や子猫、たまに変な生き物も拾ってこられます」

「一度も飼おうってならなかったんですか? シラユキ様も、好きそうなのに」

「アリエル様が絶対に嫌だと」

「たしかに、さっきも嫌って言ってましたもんね」

「はい。アリエル様は幼いころに猫にひっかかれて……あっ」


 余計なことを言ってしまった、とティナさんが自分の口を手で覆う。

 だけど、ばっちり聞こえてしまっていた。

 ふーん? そうなんだぁ。


「へぇ、アリエル様は動物が苦手なんですね」

「あのクロエさんっ。このことはアリエル様には……絶対に誰にも言うなと強く釘を刺されてるんです……」

「はい、もちろんです」


 つまり、そこまで知られたくないってことか。

 ふむふむ。これはいいことを聞いたかもしれない。

 アリエルさんは子犬や子猫も含めて動物が苦手、と。

 あんなに口が悪いのに動物が怖いなんて、案外可愛いところがあるものだ。

 どこで使えるのか不明だけど、とりあえず脳内にメモをしておいた。

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