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10.シラユキの実態

 お風呂から出て少しして。

 私はダイニングで、ティナさんお手製の美味しい晩ご飯をいただいていた。


「クロエさん、なんだかご機嫌ですね。何かいいことでもありましたか?」

「えっ、そう見えました?」

「はい。とても」


 柔らかく微笑まれて、恥ずかしくなる。

 まぁ、実際ちょっと浮かれていた。

 ティナさんのご飯が美味しいこと。そしてお風呂場でのシラユキさんとのことだ。

 長女のシラユキさんに相談して協力してもらえるのなら、百人力な気がする。

 自分から私にそう言うってことは、シラユキさんは魔法を学ぶ気があるのだろう。さすがは長女だ。まぁ、距離感とかに気をつけないと、とは思う。

 とにかく、シラユキさん以外の三人を説得することだけを考えればよさそうだ。


「実は、さっきシラユキ様に会ったんです」

「あらシラユキ様に。おかえりになられたんですね」


 シラユキさんは帰ってお風呂に直行してきたのかもしれない。

 ティナさんは晩ご飯の支度をしていたから、気が付かなかったのだろう。

 

「そこでシラユキ様が、妹たちのことで困ったことがあれば何でも相談してくれって言ってくれたんです」

「まぁ、シラユキ様が……」

「はい。さすが長女ってことなんですかね」


 姉として、四姉妹の現状をいいとは思っていないのかも。

 ティナさんから最初に話を聞いた時は四姉妹全員が魔法を使う気がないって話だった。けど、実際はシラユキさんはそんなことはないのかもしれない。 

 今日だって、私が来ることは忘れていたけど朝から依頼でもこなしていたのだろう。

 シラユキさんに妹のことで協力してもらう分、私に手伝えることがあれば手伝いたい。


「ところで、今日はシラユキ様も依頼だったのですか? 朝からお出かけされてたって聞きましたけど」

「あー、そうですね……」

「……?」


 何やらティナさんの目が泳ぐ。

 アリエルさんと同じように依頼じゃなかったのだろうか。アリエルさんはお昼に出ていったから、違う依頼だとは思うけど。

 明日もシラユキさんが依頼に行くのなら、私もついていこうかな?

 四姉妹がどこで依頼を受けているのかっていうのも気になるし。 


「シラユキ様は街で過ごされていたのかと」

「なるほど、討伐系の依頼は受けられていないのですね」


 冒険者の依頼と聞くと、誰もがイメージするのはモンスターの討伐だと思う。

 たしかに飛竜などの巨大凶悪モンスターの討伐は冒険者の花形だし、それに憧れて冒険者となる人も多い。

 だけど、討伐に行く以外にも依頼はたくさんある。

 困っている人は街中にも大勢いるのだ。

 何かの材料となるものを採取する依頼、何かを作ったり壊したりするお手伝い、迷子になったペット探しなんてものもある。

 つまるところ、冒険者と言うのは何でも屋みたいなものなのだ。


「あのクロエさん」

「はい?」

「その…………ません」

「え?」

「シラユキ様は依頼は受けられておりません……」

「どういうことです……?」


 依頼を受けるため以外に街へ、それも朝から夕方までとなると、そんなの遊びに行っていると言っているようなものだと思う。

 きっと今日は休日だったのだろう。

 それが毎日なんてありえない。


「今日はお休みだったんですよね? それで気が抜けて、私が来ることを忘れてしまった」

「い、いえ……」


 ティナさんが渋い顔をして否定する。

 周りを見て誰もいないことを確認して、私の耳に顔を近づけた。


「大変言いにくいのですが……」


 声を潜めて、ティナさんが言う。

 息が耳に当たってくすぐったい。


「シラユキ様は毎日、街のお嬢様方と遊ばれているのです」

「え……」

「お綺麗な方々と朝から会われておられるようです」


 私は言葉を失ってしまった。

 あの性格と容姿だから女の子たちがキャーキャー言ってシラユキさんを取り囲んでいるのが容易に想像できる。

 だけど、ボクを頼ってなんて言いながら自分は遊んでいるなんて。

 もしかすると、一番冒険者としてやる気がないのはシラユキさんなのかもしれない。


「その交友関係でお屋敷に必要なものを売ってくださるお店に色々とお安くしていただくこともあるので、いい面もあるのですが……」


 困ったようにティナさんがため息を吐いたのだった。


ティナ=シュリファー

23歳。ヴァレル家の使用人。

黒髪のロングヘア。

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