1.理不尽な追放
ギルドを追放された主人公と四姉妹ヒロインたちのドタバタファンタジーです。
あらすじにも書いていますが、四姉妹が登場するのは五話の最後からです。
「クロエ。悪いが君はクビだ」
ギルドマスターの部屋に呼び出されたかと思うと、そう宣告された。
私の前にいるのは筋骨隆々で立派な髭を蓄えた男。
王都でも有数の巨大ギルド・エーデルシュタインのギルドマスター・ゲハムさんである。
「え……クビですか?」
「クビだ」
「あの、どうして……」
「昨日、俺の娘とパーティーを組んで依頼に行ったそうだな」
「はい、それは行きましたけど」
ゲハムさんの言う通り、昨日はゲハムさんの愛娘であるリュグナさんのパーティーにさそわれたので一緒に依頼を受けた。
ここだけの話、リュグナさんはマスターの娘と言う立場を利用して偉そうな態度を誰に対しても取っているので、好かれていない。
私もその一人で、正直パーティーには入りたくなかった。けど、断ったら何をされるかわからないので、渋々行動を共にしたのである。
「依頼は失敗したそうじゃないか」
「しましたけど、でもあれはリュグナさんが」
「はぁ……やはりな……」
大きなため息を吐くゲハムさん。
昨日の依頼は飛竜三体の討伐だった。
難しい内容ではあったけど、パーティが上手く立ち回ることができれば十分に依頼を達成できるはずだったのだ。
しかし、リュグナさんの我儘な独断専行によって大失敗に終わったのである。
「昨日、リュグナが泣きついてきたんだ。クロエのせいで失敗したのに私に責任を押し付けてくるって」
「え……」
「クロエ。失敗は誰にでもある。しかし、人のせいにするのはよくない。それも俺の前で娘に責任を転嫁しようなんて言語道断」
「待ってください、私は本当のことを」
「黙れ!」
鋭く大きな声を出されたので、思わずひるんでしまう。
「リュグナがクロエを追放しなければ、自分が辞めるとまで言っているんだ。また責任を押し付けられるかもしれないと泣きながらな」
「そんな……」
「とにかく、お前はクビだクロエ。退職金はくれてやる」
手のひらサイズの布袋を投げられる。
重さ的に、銀貨30枚より少ないくらいだろうか。
ゲハムさんは鼻を鳴らして、私のベルトの魔法書が入ったホルダーへ視線を向けた。
「クロエ。お前は運が良いことに特殊な魔法書も持っているのだから、すぐに次のギルドも見つかるだろう。では、話はこれで終わりだ」
「待ってください!」
「終わりだ!」
強い口調で断言される。
娘の言ったことを心から信じているんだろう。これじゃあ取り付く島もない……。
唇を噛んで、ぐっと拳を握る。
このまま引き下がって、追放されるしかないのかな……。
と、ベルトのホルダーにある魔法書が金色の光を放ち始めた。
そして、私でもゲハムさんでもない、女の子の声が響く。
声色に怒気が滲んでいたからか、ふわりと風も舞い始める。私の明るい茶髪のミディアムヘアも揺れていた。
「——黙って聞いておれば人間。随分と勝手なことを申すではないか」
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