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小さな社の小さな奇跡  作者: カモメ
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眩い光と喧騒の中で

強引に手を引かれ夜店方へと、誘われるひと葉。

「あの…困ります。…」と、青年に消え入りそうな声で伝えるも、青年は御構い無しにひと葉の左手を引いて灯りと喧騒の中に引き込んで行く。


ひと葉は手を引かれるままに、わた飴の出店の前に立っていた。

青年は懐から何かを取り出し夜店の人に手渡すと、夜店の人は代わりに半透明の袋の中にフワフワとした物が入ったものを青年に手渡した。

袋の下に棒のようなものが付いている。

コレを握れば良いのか?

ひと葉は只…その棒を握っているままでいると青年が半透明の袋を外してくれた。

半透明の袋の中には、まるで昼間…青い空に浮かぶ雲が目の前に降りて来た…そんな感覚に囚われていると、青年が

「ほら…千切って食べてごらん。」と

ひと葉を促した。

促されても狐に手を使って物を口にする習慣はない。

ひと葉は、そのフワフワした雲の様なものにかぶりつこうとした。

「ダメだよ…そのままかぶりついたら口の周りがベタベタするよ。」と青年はフワフワとした雲の様な物を右手でひとちぎり摘みひと葉の口に放り込んだ。



その瞬間ひと葉の全身に雷にでも打たれた様な衝撃が走る。

やがて…その衝撃はひと葉の指先に至るまでトロける様な頭が痺れる様な軽い気だるさを運んで来た。

「甘いだろう?何せザラメの砂糖が原料だからね

普通の白砂糖に比べて下品な程に甘いから…」


コレが…本当の甘いという感覚?


狐は雑食である。

虫も小動物も食べるが果物や木の実も食べる。

だから、柿や林檎、梨などの甘さは知っている。



しかし…砂糖という直接的な甘さは自然界には無い。

暫し呆けた様な表情のままのひと葉に

「もしかして?わた飴は始めてかい?」と青年に尋ねられ

ハッと気を取直したひと葉は

小さくコクンと頷いた。

「そうか…始めてかい?だったら境内に座って食べるかい?」


「そんなことしてバチ当たらない?」

消え入る様な声で尋ねるひと葉に青年は

「大目に見てくれるさ神様も…今宵はお祭りなんだから…」


と、またも強引にひと葉の手をひいた。



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