からかい上手
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教室を出た茶遊は、少し苛立った様子で帰路を急ぐ。
(付き合い長いのに、ちょっと冷たすぎやしないか?)
もう出会ってから8年ほどにもなる親友の、これまでに無い冷たい態度に頭を抱える。
そんな調子で、夕暮れに染まる商店街を歩いていく。すると、同じ学校の制服をきた1人の生徒とすれ違う。長く綺麗な黒髪に、何か、既視感を覚えて振り返り・・・
「あの!」
確信を持って声をかける。
「はい?」
綺麗な透き通った声で返事をした彼女と、茶遊の目が合う。整った顔、それ故に少しの目のクマが、やけに病的に目立っている。
「これから、少し時間、あります?」
女性との会話に慣れていない茶遊は、自然に聞こえそうな言葉をなんとか捻り出す。
それを聞いた彼女は、少し困惑した様子で言う。
「ごめんなさい、無いです。」
彼女はそのまま少し速足で歩いて行ってしまう。
それと入れ替わるように見慣れたメガネが近づいてくる。
「お疲れ。」
少しニヤつく浩志が茶遊に声をかける。
「ついてきてたのかよ。」
「家隣でしょ?」
ふてぶてしく言う茶遊とは裏腹に、浩志はとても楽しそうだ。
「第三者の僕からしたら、さっきのはまるでナンパだったよ。」
「どうしても話したいんだけどなぁ。」
「それだけ聞くと気持ち悪いよ。」
「いや、違くて!」
笑いながらからかう浩志に言い訳しようとしたら
「わかってる。彼女がそうなの?」
急に浩志の雰囲気が変わり、彼女が歩いて行った方向を見つめる。
「そ、そうだけど・・・関係ないんじゃ無かったか?」
「気が変わった。」
「相手が美人だからって、すぐそれかよ!」
「いいじゃないか。わかりやすいだろ、僕。」
たあいない会話で、2人は笑顔になる。
「じゃあ、信じてくれるんだな。夢の事。」
「まぁ女性免疫ゼロな茶遊が、女性に自分から声をかけるなんて、信じるしかないだろ。」
また、笑いながら浩志は茶遊をからかう。
なんて事ない、いつもの光景だ。だが、今日の2人の会話は政治の話でも、アニメの話でも、家族や友達の話でも無かった。夢について、家に着くまでにしっかりと重要な事を2人で話し合って、まとめた。