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変わった営業マン―電話ボックスを売りに

作者: ばんがい

会社を経営していると色んなヤツラがやってくる。

新事業の提案だったり、寄付や支援の要求だったり、男も女も老人も子供もとにかく多種多様なヤツラが大勢だ。

その日、私の秘書が案内してきた男は冴えない営業マンだった。


「こちら最新モデルの電話ボックスとなっています」

「防音性能はもちろん全面スモーク張りのおしゃれな新デザインです」

「それに内側にはフックが付いていまして、電話ボックスの中にカバンや傘をぶら下げることもできるんですよ」

さっきからギクシャクしたジェスチャーをまじえながらこうやって売り込んでいる。彼は電話ボックスの営業マンだ。ただし優秀とは言い難いタイプの。


「一つ聞きたいんだが」

私の声にビクリと営業マンが動きを止めた。

「今どき新しい電話ボックスが本当に必要だと思うか?しかも全面スモークの」

緊張から汗をダラダラ流す営業マン。言うべき言葉が見つからないようで口をモゴモゴやっている。やはり彼にとっても答えづらい質問だったらしい。

「はぁ、なら質問を変えよう。お前ならこの電話ボックスを欲しいと思うか?」

この質問に男は目の色を変えた。

「も、勿論です!こんな素晴らしい電話ボックスを私は見たことがありません!こんなものが昔からあればきっと……」


グラリ


話の途中で突然に地面が揺れた。

地震だ。結構大きいぞ。

揺れが治まってから慌ててテレビをつけると、やはり大きな地震だったようだ。震源地の被害を伝えるニュースがどんどん流れていた。

「と、とにかく安全の確保が先決だ。君も営業の話はひとまず置いといて……」

私がそう言って振り向くと営業マンの姿はいつの間にか消えていた。さっきまで売り込んでいた電話ボックスのパンフレットが身代わりのように置いてある。

つけたテレビからは空飛ぶヒーローが怪我人を救助しているのが映っている。ヒーローの顔はさっきの営業マンにそっくりだ。


「彼に必要なのは顧客ではなく新たな敵役とファンなのかもしれませんね」

秘書がポツリと呟いた。

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