2011年GW・奈良和歌山宮島旅行Ⅲ
明日香村に行く途中に橿原考古学博物館があると踏んで、案内板に注意しながら走ったが、見つけきれず明日香村に入ってしまった。仕方ない、橿原考古学博物館は諦めた。また次の機会だ。
やっぱり最新式のHDDナビは頼りになる。一発で民宿若葉に到着した。宿はじゃらんでの紹介通り、鳥居を右折した狭い岡寺への参道の途中にあった。岡寺の参詣者をすり抜けるようにデリカを走らせる。
「若葉って書いてあるよ」
「兎に角、車停めにゃいかん」
俺は右手の別の寺の駐車場に一旦停めて若葉に向かう。安い民宿だから建物が小汚ないのは仕方ない。手前に食堂らしき入り口、中に人が居る。隣が民宿の入り口らしかった。民宿の方の戸に手を掛けたが、鍵が掛かっている。チェックインが4時のせいか。仕方ないので食堂に回って訊いてみた。
「今日宿泊予定の者ですが、チェックインまで車停めさせてもらえませんか?」
宿の奥さんとおぼしき年配の女性は気軽に、「はい、いいですよ。駐車場は宿の手前を右に入った奥です」
チェックインまでまだ3時間ある。滅多に来れない古代史の檜舞台、明日香村だ。杖をアシストに目一杯歩き回ってみるか。
この坂を登りきったら岡寺だ。大勢の参詣者が行き交う。仁王門を潜ったらすぐ拝観受付があった。拝観料は大人一人300円。観光地で金を出し渋るのが俺の悪い癖だが、素直に払った。恥ずかしいことに俺は今まで岡寺という名前さえ知らなかった。岡寺参道にある若葉に泊まることになって初めて知ったという体たらくだ。俺には日本全国まだ行ったことのない神社仏閣が腐るほどある。携帯で由緒・由来を調べてみる。実際に現地に居ながらだから頭に入りやすいだろう。
4月の初め、ヒルトン福岡シーホークでの会社設立60周年記念式典の帰りに参拝した宗像大社にしても、車のお祓いで有名な神社くらいの認識だったが、団体ということで特別に案内してくれた祢宜に詳しく説明して貰って初めてご祭神が宗像三女人であることを知り、古代史に於けるその存在の重要性が分かった。
仏教と神道の語彙・用語は難解だが、理解しないことには記紀を始めとした古代の文献に触れることすらできない。何より折角こんな遠くまで足を伸ばして肌で感じる意味がない。
境内は石楠花が満開だ。本堂の御本尊、国内最大の塑像、如意輪観音を拝んで三重の塔の高台より明日香を見渡す。連休初日は天気に恵まれた。このままずっと雨に祟られることがないようにと願いながら岡寺を下りる。京都にしろ由布院にしろ、人気のある観光地は概して水が清らかだ。明日香村も例外ではなかった。歩く側を流れる溝の水さえ清流だった。
鳥居を潜って左に行けば石舞台古墳だ。俺たちの横を貸し自転車がどんどん追い抜いていく。
「私たちも自転車借りようよ。若葉の横に一杯あったよ」と嫁。
「馬鹿か、ありゃ岡寺に行った奴があそこに置いとるんや。宿の案内にゃ貸し自転車があるとかなかったぞ」
ここは明日香村の岡という地区になる。街並みは風情たっぷりだ。古民家風の民宿もある。
「今度はここに泊まろうよ」
明日香村観光会館があった。二階建ての民家風の建物だ。
日差しが強い。額に汗が滲む。
「きちぃ。ここでちょっと休憩じゃ」
記念にパンフを一部抜いた。古代の都・飛鳥のCGがアナウンスとともにモニターから流れている。
――朱雀に会いたい――
キトラ古墳の案内だった。俺は1年前、国立飛鳥歴史公園を訪れて高松塚古墳に行ったが、内部見学はできず空気だけ吸ってきた。どうせキトラ古墳も現地に行ったと言う事実だけで終わるのが分かっていたので足は伸ばさなかった。
石舞台古墳の手前まで歩いて煙草を一服する。さすがゴールデンウィーク、人出が半端じゃない。Uターンして今度は反対側を歩いてみた。