2011年GW・奈良和歌山宮島旅行Ⅵ
名所案内の大きな看板もできていた。世界遺産の熊野古道が解りやすく書き込んであって訪れてみたい衝動に駆られる。今回は残念ながら時間に猶予がないが、いつか必ず歩いてやるつもりだ。
海岸沿の道路をデリカで走る。まだ見覚えのある景色にでない。ふと海に目を遣ると円月島だ。ということはもう直ぐだ。
あったぁ!例の駐車場だ 。
あのときここに車を停めて先の湯に行こうとして、空くまで対面で相当待った。いざ停められて、歩いて先の湯に行ったらちゃんと駐車場があって枠も空いている。これはしめたと早速俺だけ戻って車を止め直した。
先の湯はメイン道路から右折して離合できない狭い路地を行く。このGWは結構車が詰まっている。俺は運良く駐車場管理人の温情で自動販売機の横の枠外に停めさせて貰えた。さぁいよいよ待ちに待った古代天皇も入浴したという名湯の堪能だ。
義足の俺は、どんなに温泉に入り捲って慣れたつもりでも、先の湯の更衣室は緊張する。秘湯の造りなので更衣室から湯船までが平坦でなく、なだらかな階段状になっていて湯船まで距離がある。
あれは熊本の白川温泉だったか、いつもの片足のけんけんで浴室に入った俺は滑って力一杯転倒してしまった。腰をしこたま打ったことより何よりも恥ずかしかったのは、一本足の惨めな障害者が見世物の如く入浴客の面前で転倒したということだ。穴があったら入りたかった。
それからは慎重に両手を床につけた三足走行で入るようにしたが、ここではできない。右手で手摺をしっかり掴んで、二つある湯船の内の手前の、3年前無茶苦茶熱かった方に浸かる。ちゃん(息子)も一緒に入る。
3年前は熱さに耐えきれず海辺の湯船に逃れたちゃんだったが、「父ちゃん全然熱うないよ」
「ぁあ、どげんなっとん?」
温泉の管理人とおぼしき爺さんが下りて来て声を掛けてきた。
「湯加減は如何ですか?」
「おいさん、3年前は熱うて入れんくらいやったんに無茶温いやん。幻滅したでぇ」
爺さんは、「そうですか」と応えると男湯と女湯の境に上がって何やらごそごそやりはじめる。リベンジのつもりでわざわざやってきた崎の湯だが、この湯温なら俺がいつも行く禿の湯温泉と何ら変わらない。早々に引き揚げだ。
さすがにゴールデンウィーク、狭い駐車場に車が続々とやってくる。離合できない路地だから途中で止まられると帰る車が出られない。管理人が交通整理に大童だ。
大阪人らしきベンツが入ってきて管理人に悪態ついている。山陽道で急ブレーキ掛けやがった腐れベンツが彷彿される。
――ボケが!てめぇが勝手にやって来たんやねぇか。待てんなら黙って帰れや。
崎の湯を出てそのまま帰途に就く。途中のファミマで昼食だ。せっかく南紀まで来たんだからと魚の旨い店で食べたかったのだが、見つからなかった。
さぁて今からどうするか悩む。今回の旅行でどうしても寄りたかったのが誉田御廟山古墳だった。ホムタワケノミコトの墓だ。羽曳野市にある。どうも時間の調整がまずい。
明日香村への道中、西阪奈道路は羽曳野市を通るが降りられなかった。白浜からの帰りに寄ろうとも思ったが、また時間が中途半端だ。高速は千円だが、途中で下りると料金が倍掛かる。
阪和道は下り線のときと同じ区間でまた地獄の渋滞だ。やっと抜け出した最初のSAで車を停める。休憩が目的ではなく、時間調整の意味あいがあった。駐車場の段差に腰掛けて一服。
「これからどうすると?」
「あぁ今考えよるちゃ」
今年のゴールデンウィーク、7連休は嬉しいが、高校生は2日は登校日だ。ちゃんが小中学生のときは平気で休ませていたが、高校はそうはいかない。となると、中日の2日は小倉に居らざるを得ない。今から羽曳野市に行くと帰途に就くのは夜になって、一日は単なる移動日となってしまう。せっかくの休みが勿体ない。
そう言えば俺はまだ宮島には行ったことがない。いつも山陽道の宮島SAには寄るが…。行って見るか。
「こいから宮島行ってみるか?」
「大由起ちゃんまだ行ったことないと?」
「あぁないんや」
「いいよ行こうよ」
阪和道、近畿道、名神を経由して山陽道に入る。岡山県の吉備SAに入った。夕食を摂ったら車中泊には格好の時間帯になっていた。
清々しい朝だ。今日も晴天で絶好の観光日和、いつも旅日記に書くが、高速のSAは車中泊にはまさに至れり尽くせりだ。目覚めて顔を洗って歯を磨く。8時にレストランが開いて旨い朝定食を食ったらさぁ出発だ。