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俺は俺であるために俺を捨てる  作者: 佐賀 貫
第1章
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日常クライシス5

 教授が来たことにより、その場にいた学生全員が教授の方へと向き直る。この教授、初めて見るけどパッと見、七十歳ぐらいだろうか。なかなかのおじいちゃんだ。

 

 一応、礼を心の中で述べておこう。遅れてきてくれてありがとうございます。


 「どうも、こんにちは。このゼミを担当する宇都宮です。早速、今日の予定についてなんだが、一回目のゼミだからみんなに自己紹介をしてもらって、その後で、このゼミはどういうことを、どういう風に進めていくのかといったことを私の方から説明する。といった流れでやろうと思っているんだけど、いいかな?」

 

 その場にいる全員が軽く頷き、教授の提案を了承する。

 

 まぁゼミの最初なんてこんなもんだろうな、普段の大教室での大人数の授業では人が多すぎて自己紹介なんてやってられない。しかし、こと少人数の場合だったら互いを多少なりとも理解するために大事な工程だ。


 「あと、本当は四年生も一緒に授業を行うんだけれど、この時期は就職活動で忙しいから、基本的に前期の間は三年生のみになると思っておいてください」

  

 言われてみると、確かに三、四年遅合わせてこの人数だったら、少なすぎるか。

 

 遅れてしまったり、パツキンジャージに再会したりで、あまり周りのことが見えていなかったけど、教室内をみると学生は俺を含めて五人しかいない。


 「では早速だけど一人ずつ自己紹介をしてもらおうかな」

 

 遅刻したこともあってか、教授は足早に予定を進める。

 

 しかしあれだな、大学三年の二十一歳になる年にもなっても、初めの自己紹介ってのは緊張するな。不干渉を望んでいたとしても緊張するものは緊張する。

 

「じゃあ、君から時計回りにいこうか」

 

 教授から見て左側、俺の二つ右隣に座ってノーパソをパチパチ打っていた、結構デラックスな体型でシャツにジーパン、という至極ラフな格好をした男が、教授に指名され、立ち上がる。


 「初めまして、三年の松長泰まつながやすです。出身はこの大学があるのと同じ、東京の新宿区です。だから大学には実家から通ってます。専門は経済学を学んでいます。よろしくお願いします」

 

 最後の『よろしくお願いします』に呼応するように、皆が軽く会釈をする。

  

 業務連絡のような自己紹介ありがとうございました、 随分と淡々とした普通の自己紹介だったな。まぁ大学三年ともなると自己紹介なんてこんなもんか。デラックス体系のデラックスくん。おけおけ。


 「はい。じゃあ次」

 

 ああ、教授の方からは何も突っ込んだりしないタイプのやつか。まあそっちの方が何も質問されることないおかげで余計な心配しなくて済むし、何より早く終わって助かる。


 「隣の君、お願い」

 

 教授に言われ、さっき俺に話しかけてきたやつが、ゆっくりと立ち上がる。

 

 こいつ、さっきは焦ってたせいか気づかなかったけど、男から見てもかなりイケメンだな。あと、服装がおしゃれすぎてなんだかよくわかんねーから読んでる人に説明できねーよ。少しはさっきのデラックスくんを見習ってください。

 

 俺が無駄な思考をしているうちに、隣のイケメンくんは、緊張する様子は一切なく、慣れた様子で自己紹介を始める。


 「どうもみなさん初めまして、須賀山優すがやまゆうです。出身は北海道です、なので東京の夏の暑さにはまだ慣れてません(笑)。北海道に旅行に行くって人はぜひオススメの所とか教えるので言ってくださいね。趣味はスポーツ観戦だったり、映画を見にいくことです。あと将来は公務員になろうと思っているので、今は公務員試験の勉強をしてます。最後に、これから二年間、このゼミでみなさんと一緒になるので、仲良くなりたいと思っているのでよろしくお願いします」


 「うっ……」

 

 おい……、終始笑顔で流暢に話し続けるなと思って見てたら、なんで最後、『お願いします』と同時に笑顔でこっち振り向くんだよ。

 

 思わず、辟易ろいで俯いてしまった……。

 

 我ながら情けない。


 「よし、じゃあ次。端っこの君」

 

 面食らっているうちに俺の番がきた。隣のイケメンくん。多少こいつにペースを崩させたけど、落ち着いていこう……。


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