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俺は俺であるために俺を捨てる  作者: 佐賀 貫
第1章
2/14

日常クライシス1

 スマホのアラームが六畳ワンルームの部屋に響き渡る。

 

 俺はそれを聞き、いつもと変わらず目覚め、いつもと変わないそのアラームを止めた。

 

 履修科目は既に決定している。大学三年の春ともなると、小さい頃はよくあったなんかこう、新学期に対する緊張とか、興奮みたいなものが全くもって皆無なんだな。何かに慣れてしまうということはつくづく悲しいものだ。

 

 いや、なんで俺は新学期という始まりの日を、こんな悲しい面持ちで迎えないといけねーんだ。

 

 そんな無駄なことを考えながら、ベッドから体を起こし、大学へ行くための身支度を始める。

 いつも通りまず洗面台に向かい、歯を磨き、顔を洗い、寝癖を直し、鏡を見る。そこには目つきが悪いにもかかわらず、覇気が全くなさそうな顔が映っていた。

 

 どんな時でも同じ顔面を反射してくる鏡、そしてその物理法則に賞賛を送りつつ、俺は洗面台を後にする。

 

 あくびをしながら着替えるためにクローゼットへと向かう。かといってここで、「さーてどれにしようかなー」何て考えることは一切ない。

 

 俺みたいな友達のいないぼっち大学生は、服選びで悩んだりなんかしない。

 

 なぜなら誰かに見られたり、関心を持たれたりすることがないからだ。だから俺はその辺のなんちゃってパリピ大学生みたいに、女にモテるためだとか、おしゃれだね、と言われるために服を選んだりはしない。

 

 俺が服を選ぶ理由はただ一つ。

 

 『気温』


 そう。これだけなのだ。ただただ春夏秋冬の気温に合わせた服を着る。仮に服を選ぶのに悩むことがあるとすれば、急な気候変動による、気温の変化だけだろう。

 

 そんなわけで、俺は何の迷いもなく適温の服を選ぶ。

  

 着替え終わった頃には授業開始の十五分前になっていた。特に慌てることもせず、荷物を持って部屋から出た。大学から徒歩五分の錆びれたマンションに住んでいるため、このぐらいの時間に家を出るのがちょうどいいのだ。


 「え、朝ごはんは食べないの?」

と思った人へ、結論から先に述べるさせてもらいましょう。


 「食べません」

 

 なぜなら一般的に大学生が起きる時間は朝ではないからです。起きる頃には朝が終わっています。お日様が真上まで登っています。それが大学生です。


 「そんなのは友達が多くて朝まで呑んで遊んでいるいる人たちでけじゃないの?」

 と思った人へ、結論から先に述べさせてもらいましょう。


 「違います」

 

 なぜなら、友達のいない大学生でも、授業やバイトが終わり、家に帰ってくると、漫画読んだり、ラノベ読んだり、アニメ見たり、YouTube見たり、ソシャゲしたりしていて、寝るのが遅いからです。起きる頃には朝が終わっています。お日様が真上まで登っています。

 

 これがぼっち大学生です。

 

 と無駄口を叩いているうちに人通りの少ない住宅街を抜け、その先の信号を渡ったところにある一葉ひとば大学へと到着していた。

 

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