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俺は俺であるために俺を捨てる  作者: 佐賀 貫
第1章
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13/14

危機からはもう、逃げることを許されず1

 昨日一日はかなりストレスを感じてしまう一日だった。

 

 いつも一人でパソコンいじってるか、ゲームしてる、あるいは、バイトで黙々とぼっち働きして過ごしてきたからその弊害があまりにもでかすぎた。

 

 今日も今日とて大学が昼からなため、午前中は部屋でゆっくり過ごすことができる。大学三年ともなると午前中に授業を入れるバカはいない。今日取っている授業に関しても、昨日のゼミのような生徒参加型ではなく、受動的なものばかりだ。パリピでも意識高い系でもない俺は、卒業のために必要であるゼミを除いたら、他に参加型の授業は取っていない。

 

 なんでわざわざ他のやつと意見を交換し、情報を共有しながら時を過ごさなければならないのか。

  

 しかし、そういったコミュニケーション能力をつけておくことが、社会に出た時に必ず役に立つと言われている。

 

 そんなものが必要な社会……俺は出たくない。

 

 いや、出れないといった方が正解だろう。

 

 そもそも本当に社会はコミュニケーションを取らしてくれるのだろうか。

 

 よく企業は自分意見をはっきり言い、相手の意見をしっかり聞く。そしてコンセンサスを取ることがコミュニケーション能力だと謳っている。

 

 でも俺には社会がそのような仕組みになっているとは思えない。

 

 本当の社会とは、上の意見をしっかり聞く。例え自分の考えと背反していようとも、押し殺し、上の意見にしっかりと洗脳されていくことが今の社会だと感じている。

 

 そう。社会とは一種の宗教だ。

 

 社会のマナー、ルールから逸脱する者は排除される。そしてそのマナーやルールに洗脳され、自分の意見や考えがそれらに洗脳されたものであるということを忘れてしまった者たちが社会で生き残っている。いや、生かされている。

 

 社会におけるコミュニケーションとは、対人関係によるものではない。互いが社会という概念に対して忠実であること。それが重要視されている。

 

 よく現代の大学までの学生期間では、個性を大事にしろと言われる。

 

 しかし、いざ社会に出てみると、個性ある者は生きづらさを感じるだろう。

 

 当然だ。社会に本当の個性は必要ないからだ。

 

 そして、個性が大事というふうに教育を受け生きてきた。と反論しようものなら、社会人たちは口を揃えて言うだろう。

 

 「個性とはマナーやルールという常識があって、その上で成り立つものだ」と。

 

 何度聞いてきただろう。この個性のルールを。

 

 ルールがあんだったらそれもう個性じゃないじゃん。と思うのは俺だけでしょうか。

 

 だめだだめだ。時間を持て余しすぎて、また色々と思考を巡らせてしまった。こんなことしてたら物語が一向に進まない。俺の煩悩がご迷惑をお掛けしました。


 さて昨日は色々あって疲れてしまい、早く寝たため、珍しく朝から起きているわけだが何をしようか。

 といっても俺にやることはゲームくらいしかないんだけどな。

 そう思っている時だった。

 

 ピンポーン。

 

 インターホンが鳴った。


 あれ?アマゾンでなんか頼んだっけな?

 

 俺の家のインターホンを鳴らす人間なんて、宅配の兄ちゃんか、セールス勧誘の輩くらいだ。

 

 俺はストレスという重圧によって重くなった腰を、必死にあげる。

 

 そしてカメラ付きインターホンではないため、仕方なく受話器を手に取る。


 「はい」


 「久しぶり」


 「………………」

 

 物心つく以前から聞き慣れた、むしろ聞き飽きた。と言ってもいい声色に、暫しの戸惑いを覚える。そして、どうして俺の家に来ているのか疑問に思っている間に、相手はさらに言葉を続ける。


 「聞こえてる?」


 「何しに来た?」


 「何しに来た。って。特に用は無いけど。たまたま近くを通りかかったからついでに寄ってみただけ」


 「用が無いなら来なくていいじゃん」


 「いやいや、わざわざ来たんだから」

 

 たまたま来たんじゃねーのかよ。そしてたまたま来られても困る。昨日あれだけ人と話してHPを削られて、いや、削り切られて瀕死状態になっているんだから、今日はしっかりと午前中だけでも自宅療養をしなくてはならない。自己保全、健康維持、それが何よりも勝る重要事項だ。


 「いや、でも。っきょ」


 「まあ、とりあえず中に入れてくれよ」

 

 今日は忙しいから。と言おうとしたところで、強引に話を持っていかれる。まあ昼から授業があるだけで、特に用なんて無いんだけど。


 「……わかった。でも昼から授業があるから、それま……」


 「昼までなんていねーよ」

 

 うぜーっ! 超うぜー。食い気味で言ってくるあたりがうざさを倍増させている。もうとっとと部屋入れて黙らせよう。そして俺は決して休ましてくれない昨日今日のブラック日常に嫌気をさしながら部屋の鍵を開ける。


 「相変わらず冴えねー顔してんな」


 「DNA一緒だからおめーも対して変わんねーけどな」


 「ねーちゃんに向かっておめーとは。おめーも成長したな」


 「DNA一緒だからだろーな」


 まあいいや。と言いながら姉は俺の部屋へと入ってくる。

 

 そう。家にやってきたのは姉だ。

 声を聞いた瞬間に一瞬でわかる。当たり前だ。一応家族なんだから。

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