第二十八章 幻想世界!アクアリウムガーデン!
「「ようこそ!アクアリウムガーデンへ!」」
俺達がそこにたどり着くと多くの魚達が出迎えてくれる。周りには綺麗に着飾ったタツノオトシゴ達が取り囲んでくれる。
「うぁーーー!!」
「キラキラですねジロウさん!!」
「ちょっと眩しいわね。」
「流石夢の国アクアリウムガーデンだぜ!!」
年の瀬だというのにこの町は色々な動物で賑わっている。深海にあるというのに猫や犬といった陸上の生物も多々いるのだ。
「特別チケットご予約のウルフライダーズ様ですね!」
俺達が入り口から中の様子に見とれているとペタペタとペンギンが歩いてくる。多分ジェンツーペンギンだろう。
「お待ちしておりました。ジロウ様、かめちょん様、ナチュラル様、タカちゃん様、そしてイデア様!」
その後ろから銀色の魚が泳いでくる。
「私がこの街の長、リュウグウノツカイのセレーナですわ。」
ここアクアリウムガーデンはズー大陸近郊の海底に位置し経済力ナンバーワンの四大都市だ。 何故経済力が高いのか、それは街自体が巨大な遊園地であり、観光施設であり、映画館であり、ライブ会場である複合娯楽施設なのだ。立体視を利用したアトラクションの数々に水中での無重力状態を利用して縦横無尽にひしめき合う施設が街の賑わいを盛り上げている。
その分この街は民間のコミュニティというには少し不安がある。現実にある動画サイトやレコード会社が出資、若しくは技術提供をしているからこそ現実と変わらない精度で映画や音楽が楽しめるのだ。
「いよいよ最後の試練ですね、皆さん。」
リュウグウノツカイのセレーナは細長い体に少し不気味な顔付きをしているが銀色に輝く鱗で母親のような優しい声をしており不思議な魅力を放っている。
元々リュウグウノツカイはその姿から人魚姫の元となった魚でないかと言われる生き物だ。彼女の姿を見ているとなんだか説得力がある。
「最後の試練はここで遊んでいただくことです。」
「…遊ぶ?」
「ええ、今回皆さんのために特別優待券を用意しました。」
セレーナがそう言うと側にいたペンギンが俺達にチケットを差し出してくる。
「このチケットで一日遊び回っていただければ試練達成です。」
「わーい!ありがとうペンギンさん!!」
「元気のいいお嬢さんですね、折角なので入場記念にあちらで写真を撮りましょう!」
俺達にチケットをくれたペンギンはそういってイデアを引っ張る。
「うん!写真とる!」
イデアはペンギンに引っ張られ入り口近くにあった顔出しパネルへと駆け出す。
「あ、ちょっとイデアちゃん!?」
かめちょんが彼女を止めようとするとセレーナが俺達の間に入る。
「イデアちゃんの事は私も伺っております。」
俺達は彼女の言葉に耳を傾ける。
「彼女が何者でどうなるのか、我々四大都市の長は皆、全てを社長より伺っております。」
「そして私は皆様がこれまでどのような旅路を辿ってきたかも伺っております。」
「だからこそこの街では全てを忘れ楽しんで欲しいのです。」
「…彼女とあなた達の物語を皆が忘れてしまわぬように。」
「ジロウ!あれ乗ろう!」
「あぁイデア!」
イデアが指差したのはマンダのメリーゴーランドだ、現実のものと違って屋根がない。何故ならここは海の中、天気を気にする必要性もなければ乗り物も魚達であり自由に乗れる。なんなら重さも関係ないからナチュラルだって乗れるのだ。
「いつもは私達がジロウに乗ってるけど今日はジロウも乗れるね!」
イデアの笑顔は眩しかった。
日の光が届かない深海で、淡く煌めく人工的な光の中で、一層に眩しかった。
「…どうしたのジロウ?」
…いけない、ぼーっとしていた。
「大丈夫だよイデア。」
メリーゴーランドを降りた俺達はサンゴのベンチに腰掛けた。
「…イデアちゃん!あっちでくらげ達が歌ってるよ!」
かめちょんはイデアの肩に乗り不思議に発光するくらげ達を示す。
「うん!見に行こうお姉ちゃん!」
二人はそこへ向かって泳ぎ出す。
「…大丈夫ですか先輩?」
松下が声をかけてくる。
「…大丈夫だナチュラル、平気だ。」
「無理すんなってジロウの旦那、私もわかるからさぁ…。」
高島妹も声をかけてくれる。
「…タカちゃん、チキンジョッキーは最初から全部教えてくれたのか?」
俺は質問を投げ掛ける。
「…話を聞いたのは兄貴の方だ。私は兄貴から聞いただけだから旦那から聞くまでは知らなかったよ。」
「…そうか。」
「私はさ、よかったって思うんだ。皆と旅が出来て。」
タカちゃんはいつになく女々しかった。
「兄貴が親友の頼みだからって言うからいつも狩りばっかりしてた私も兄貴と行動を合わせるようになってさ、それであれからジロウの旦那にも気付かれないように撮影してたり最初は大変だったさ。」
「でもよかったって思うんだ。皆と旅が出来て。」
「よ、また会ったなあんた達!」
ラーテルのテルーは気さくに話しかけてくれた。
「テルーの旦那?どうしてこんなところに?」
タカちゃんが訊ねると無愛想な顔付きで彼は答える。
「例の新人の初仕事だよ、今からライブなんだ。」
「あなた達もどうですか?ルルちゃん、可愛いですよ、ふふふ!!」
妙に興奮気味のオオアナコンダに若干ひきながら俺達はライブ会場に訪れる。大勢の動物が一匹のイルカの周りを囲っている。観客と彼女の間には冥府の悪魔もいた、しっかり警備員として彼女の周りを泳いで回っている。
「みんなー!元気ー!!」
「「「「くぅーーーー!!」」」」
「今日も私の年末ライブに来てくれてありがとう!!」
「「「「きゅぅーーーー!!」」」」
「なら張り切っていくよーー!!」
「「「「きゅぅーーーーと!!!!」」」」
よくわからない掛け声が響くとライブが始まる。なんでも彼女、イルカのルルは現実でもアイドル活動をしているらしく最近話題らしい。イデアとかめちょんも喜んでみいっている。
「ウホホホ!!」
ストロンガー、お前もか!?
「おや、到着したようだねジロウ。」
俺だけが場の空気についていけず困惑していると後ろから老虎の声がする。隣にはサーベルタイガーのブレイドもいるようだ。
「老虎さん、あなたもいたんですね。」
「まぁ彼に仕事を紹介した手前だ、それに蛇鬼が彼女のファンみたいだからね。」
相変わらず優しい笑顔の虎はアイドルではなく俺を見ていた。
「…ジロウ、少しだけ話さないかね?」
「ジロウ、私はこのゲームの中でこそ最強のチームの長ではあるが現実の私は実に惨めな存在だ。」
会場の外で俺と老虎、それとブレイドは座っていた。
「本当に野良猫以下だよ。」
物寂しい老虎の顔は猛獣のそれではなかった。
「そんなことありませんよリーダー、私達に居場所をくれたのはリーダーです!」
強い口調で彼を批判するのはブレイド、彼女はどうも老虎を慕っているようだ。
「ありがとうブレイド、私も君達のお陰でこの場所にいれるよ。」
照れ臭そうに老虎は笑う。
「悪いねジロウ、貴重な時間なのにおじさんの愚痴に付き合わせちまって。」
「いいんですよ老虎さん、あなたが言いたいことはわかってるつもりです。」
「…そうか、なら最後に助言をあげよう。」
「…なんですか?」
「この世界はゲームの世界だ。現実に出来ないことが出来る。」
「でもそれは全ての夢が叶うわけじゃない。」
「しかし君が望むならそれはよい世界になのだ。」
「それはきっとここでなくてもそうなのだよ。」
「もうじきだね!」
俺達は街中のアトラクションを楽しんだあと大きなサンゴ礁の丘に来ていた。この水中の中で年越しの花火が上がるのだ。
「楽しみだな花火!!」
イデアは眩しかった。相変わらず。
一日中眩しかった。
「ねぇみんな?」
「…なにイデアちゃん?」
「どうしたの?」
「なんだってんだ?」
「今日は一杯遊んでくれてありがとう!」
イデアは眩しかった。
眩しかったんだ。
初めてイデアにあったあの日。
現実の世界でみた蛍光灯よりも。
あの娘は眩しかった。
眩しかったんだ。
花火は撃ち上がる。
綺麗なホタルイカ達が縦横無尽に水中を駆け回る。
それは最早花火と言うより光の行進だった。
俺達の視界にその流星群が降ってくる。
その中でもやはり、イデアが一番眩しかった。
眩しかったんだ。
「大好きだよイデア、これから先も。」
俺はイデアに伝えた。
「…わたひも、いであちゃんのこと、すっと、ずっと大好きでふ。」
かめちょんも。
「私も忘れないわ、あなたのこと。」
ナチュラルも。
「わた、俺もお嬢のこと忘れないぜ!」
タカちゃんも。
「私もみんなが大好きだよ!!」
イデアも。
俺達はきっとこの日のことを一生忘れない。




