4話 『デートですよコイツはァ』1-3
あけましておめでとうございます。お久しぶりです。年末年始と忙しくようやくある程度書けたので更新した次第です。今年もよろしくお願いします。
「なあ。」
「んー?」
街を歩いていると、隣にいた優がぼんやりと話しかけてくる。
「腕組んでいい?」
「ハッ!?ダ、ダメに決まってんだろ!?」
「ダメ?」
「ダメだよダメ!そういうのはさ、その、恋人同士でやるもんっつーの?まずさ俺達付き合って...」
「危ない。」
「わっ!」
もごもごと喋りながら下を向いて歩いてると、優に肩を掴まれ抱き寄せられる。義人が居た場所を自転車が通って行く。
「あ、ありがと。」
「いいよ。いきなり変な事言ってすまねえ。」
「あ、いや、全然大丈夫なんだけどさ...。」
(優の手、結構がっちりしてたなあ...。へ、変に意識しちゃうな...。優、いつもより大人しい気がするけど気のせいかな...?)
一方優は
(肌柔らけーーーー!服の上からでも分かるぞ!?女子の身体ってこんな柔らかかったっけ?しかもいい匂いする~!平常心~!)
「そうだ、義人。」
「なに?」
「悪いな急に誘って。俺はお前がいつもみたいな格好だったらどうしようかと思ってたんだぜ?」
「この服は妹と母さんが着せたやつなんだよ。でも...俺結構、こういう服が似合うのテンション上がっちゃうな...。ふふふ...。」
優の目には義人はお姫様の様に映っていた。あどけなく可愛らしい笑顔、自分に気を使わない、本心から出る自然体の笑みがとてつもなく眩しかった。
「...好き...。」
「どうしたよ...。」
「なんでもない...。ああそうだ、ファミレス行こ。昼食いたい。」
「おう。」
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「2名様あちらのお席にどうぞ。」
店員に案内され、店内のテーブル席に座る。
「適当に頼めよ。奢るから。」
「良いのか?てかお前、なんのバイトやってたっけ?よく金保つな。」
「ホスト。つっても、キャッチみたいなもんだし、俺が捕まえたお客さんの使った金の何%が入って来るの。」
「はあ~。結構稼いでんの?」
「普通のバイトよりは割にあってると思うよ。てか、俺そもそも金あんまり使わないから貯まってくんだよ。」
「そういや、お前が何か買うとしても服とかだしな。あ、店員さ~ん。」
「そゆこと。あ、俺ビーフカレー。セットのドリンクバー俺とこいつの2つで。」
お腹の減っていた二人は直ぐに運ばれてきた料理を平らげ、食後のコーヒータイムに入っていた。
「お前さ。」
「なんだよ。」
「元々男もイケるクチ?」
「俺がゲイかってこと?いきなりなんだよ?」
「だってさあ、俺の事好きって言うけど、元は男なんだぜ?...普通に考えてみろよ言っちまえば、女装してる男みたいなもんだろ?俺。」
「...外で話すか...。」
「...?うん。」
優はそう言いながら席を立ち、二人分の会計を済ませ店を出る。義人もそれに付いていく。
「どこ行くんだよ?」
「近くの公園。そっちの方が話しやすいだろ?」
「まあ...。」
ファミレスから少し歩いた所にあった公園に入り、先に義人がベンチに座る。自販機で缶コーヒーを買って来た優が隣に座る。
「ほい、コーヒー。微糖だったよな。」
「あざっす。で、わざわざ公園に来たのはなんで?」
「人がいるとこで話したくなかった...。その、結論から言うとさ、俺はお前が男の時でも好きなれたかなとは思うよ。今だからこそ言えるって感じだけど。」
「ホントかよ。」
「本当だって。俺、初めてなんだよ。自分から誰かに好きって言うの。今まで言われた事しか無かったから、その、こういうのわかんなかったって言うかさ。」
優は少し恥ずかしそうにしながら義人から顔を背けながら話す。
「お前ホントズルいよな...。」
「えっ!...俺何か気に障る事言った?」
「そういう意味じゃねえけど!そのまんまの意味だよ。」
「???」
(コイツイケメンのクセにたまに可愛いとこあんの卑怯だろ~...。)
優は少しの間頭の上に疑問符を浮かべていたが、ハッとしたように再び喋り出す。
「俺はお前だから好きなんだよ。その姿だからお前をもっと好きになるし、お前だからもっと可愛く見える。」
「お前、普通じゃないよ。」
「ああ。俺もお前も、普通じゃないな!」
「ったく...。おら、どっか行こうぜ!こんな公園でやる事なんて無えよ!」
義人は立ち上がり、優の手を取る。
「カラオケでも行く?」
「ああ~いいねえ!今なら歌えなかったのも歌えるじゃん!カラオケ行くか!」
(ハッ!とゆうことはデュエットも出来る...!?案外、悪い事ばかりでも無いなァ~!)
テンションの上がったまま、二人で近くのカラオケに行く。
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店を出ると、外はもう暗くなっており夜が訪れようとしていた。
「いや~久々に歌ったなあ...。」
「カラオケはやっぱ仲いいヤツとか2、3人くらいの数で行くもんだよなあ。」
「あー、お前は付き合いとか大変そうだよな。」
「ホントだよ。しかも、流行りの歌を歌わなきゃいけないしさ。」
「仕方ない事だからな...ご苦労様。」
喋りながら駅まで歩いて電車に乗り、降りた頃にはもうすっかり日も沈み外気もひんやりとしていた。
「なあ。」
「ん?」
「今日はさ、その、言いにくい事言わせちゃって悪かった。なんだろう、お前を疑うっていうかさ...。」
「なんで謝んだよ。俺が一方的にアプローチしてるだけなんだから、謝る必要なんて無いよ。でも...」
「なんだよ。」
「ちょっとぐらいデレてくれても良いじゃない?」
「はぁ...。」
はにかみながらそう言う優に義人は呆れと諦めの混ざったため息で返事をする。
「...なに?」
「...ん。」
義人は口を尖らせてそっぽを向きながら優の手をツンツンとつつく。
「なんだよ、俺の手になんか付いてる?」
「うおあー!なんっでお前は変なところで鈍いんだァー!!」
きょとんした様子で見つめる優に義人が声を荒らげる。
「どうどう。何をいきなり怒り出してんだ。」
「...お前って奴はよぉ...。だからさ...ほら、手!」
「手?...お?」
義人は優の手を強く握る。
「...手、くらいは繋いでもいいよ...。今日は色々奢らせちゃったから...。でも腕組みはダメ!付き合ってるとかそんな関係じゃないからな!」
「...うおお~!!義人ぉ~やっとデレたなこのぉ~!!可愛いぞ~!」
「やっ、やめろ!」
「...ありがとな、義人。」
「お前が喜ぶことなんてこれぐらいしか思い付かなかったからさ...。」
「手ぇすべすべ!やわらけー。」
「セクハラやぞ!やめろー!」
結局、家までは手を繋いで帰った。家に着くなり義人は自分の部屋に籠る。
「義人、なにかあったのかしら?」
「優くんと進展でもあったのか...な?」
(俺は何をしたんだぁ~!死ぬ程恥ずかしい!なんであんなことを...!)
義人は枕に顔を埋めてベッドをひたすら右に左に転げ回る。
そして悔しそうな表情を作り枕から顔を上げると
「アイツが悪い!...でも...。」
一方優は
「あ~可愛かったなあ~。デレるもんだなあ...。」
自分の部屋のベッドで仰向けに寝転びながら緩んだ表情で自分の左手を見つめていた。
(絶対俺のモノにしたい...!...義人が他のやつのモノになるなんて考えられ無いなあ......にしても...。)
「悔しいけどかっこいいよなあ...。」
(やっぱり一番可愛いよなあ...。)
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