10話『水着と浴衣が世界で一番似合うのは君だと思う』1-4
29000PV行っていました。ありがございます。
さて、少し強引だと思う方もいらっしゃると思いますが、この回にてひとまずの完結(?)となります。よろしくお願いします。
※30000に届いていました。本当にありがとうございます。
「優...?」
「義人...。」
目線を交わす2人、時間が止まったように見つめ合う。
ハッとしたような顔で先に動いたのは優だった。
「義人、そのままだと迷惑だから。ほら。」
「...あっ、うん。」
ぶつかってしまわない様人混みを避け、脇道に退く。
「義人、来てたんだな。その、連絡しても反応無かったから。てっきり...。」
「あ、ごめん...スマホ家に置いてきてさ...。」
「そっか...。」
「うん...。」
会話が途切れてしまい、気まずい空気になる。そんな中でも、優は義人の浴衣姿を横目で見ている。
普段とは違った髪型と浴衣姿。夕方とは言えまだ夏、うなじにはうっすらと汗が浮かんでいた。更に際立つ美しさにしばし見とれてしまう。
(色っぽい...。)
そんな視線に気付いた義人。
「どうした?」
「あ、いや!その...浴衣、似合ってる。綺麗だ。」
「!...そっか。ありがと。」
驚いた様な表情の後、頬を赤くして俯きながらそう呟く。再び会話は途切れるが、今度は義人から切り出す。
「そういや優はなんで1人で?俺は莉々愛さんと来たけどはぐれちゃって...。」
「俺も緋桜と来たんだけど、あれよあれよとはぐれて今さっきまで探してたんだ...。」
「はは...同じだ。」
「ふふ...全くだな。」
互いの状況が全く同じだった事に、呆れながらも笑い合う。
「あー、取り敢えず色々見て回るか。ここに居ても見つかるか分からねえし。」
「だね。時間も勿体ないし。」
ひとしきり笑った後、それぞれ見失った者を探す為に人混みの中に2人で飛び込む。
だが誘惑は多く、気付けば普通に夏祭りを楽しんでいた。
「あ、焼き鳥こんな所にあった!ほら、早く行こうぜ!」
「おい待てよ。そんなに急がなくても...よっと。ちゃんと前見ないとダメだろ。」
「ご、ごめん。ありがと...。」
後ろを歩く優に話しかけていた義人は案の定前から来る人とぶつかりそうになるも、優に手を引き寄せられ無事だった。
一度人混みを避けて脇まで離れる。
「転んだり転ばせちまったら危ないだろ。男の時とは色々違うんだ。...おい。聞いてんのか?」
「き、聞いてるよ。でもその...。」
「ん?どうかしたのか?」
「その、手...。」
「...あっ。」
優はずっと掴んでいた義人の手を慌てて離す。何度目かの沈黙。優は焦りながらも会話を切り出す。
「ほ、ほら...探そうぜ。待たせちゃ悪いし...。」
「優。」
歩き出そうとしたところで、義人に甚平の裾を掴まれる。掴んでいる義人の手は緊張で震えているように感じた。
「手、握ったままじゃ、ダメ?」
「......お前が良いなら...。」
ギクシャクと変に緊張して互いに変に気を使ったせいか、普通に手を繋ぐつもりが明後日恋人繋ぎで落ち着いてしまう。
((恥ずかしいけど...。))
どちらも気付いてはいたが、当然言い出す勇気など無い。
(離したらもう二度と無い気がする...!)
(離す理由も無いし嫌じゃないし...!)
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人混みの流れに身を任せながら探していると、アナウンスの案内が流れる。
『間もなく花火の打ち上げ時刻となります。観賞される場合、必ず人混みを避け、落ち着ける場所でご観賞下さい。間もなく...』
「花火か...。」
「もうそんな時間か...。」
気が付けば2人は神社の前まで来ていた。境内には誰も居らず、静かな空間だった。
「あっ、神社で座って花火見ようぜ。ほら!」
「おい待て!引っ張るなって!」
義人に手を引っ張られる形で境内に入り、本殿に腰掛ける。
「莉々愛探さなくていいのか...?」
「うん、莉々愛さんなら多分、というか絶対に大丈夫だと思う。それよりさ、花火始まるぞ。」
「あぁ...。」
莉々愛を探す提案を却下された事が、優にとっては少し嬉しかった。
(俺はスマホ持ってるから何かあれば緋桜と連絡は取れるし、まぁ大丈夫なんだよな。)
多少責任を感じつつも、今は義人と花火を楽しもうと夜空を見上げるのだった。
少しして、夏の夜空に花火が打ち上がる。
「綺麗だなぁ...。」
「うん...そうだな...。」
花火をぼんやりと見ている時、優は自分の手に何かが触れたのを感じた。触れていたのは義人の小指だった。彼女自身は優の手に触れている事に気付いていない。
(少し、ちょっかい出してやろうかな。)
今度は優の方から、少し大胆に義人の手を握ってみる。一度驚いた様な反応の後、応えるように指を絡ませてくる。
(なんだよ...。)
軽い火遊びのつもりだったのだが、親友の方が一枚上手だったようだ。火傷を負ったのは優の方だった。
心臓の音が聞こえるのではないかと思える程の緊張。花火の音などあって無い様なくらいの時間が流れる。
「優...。」
「っ...!」
「あっ...。」
潤んだ瞳で見詰めてくる義人を我慢出来ずに押し倒す。
「襲っちゃうのか...?」
「俺の気持ちを知ってて...!あんまりからかうなよ!」
「じゃあ...さっきのは、何なんだよ...。」
「あれは...。」
押し倒しておきながら、義人の雰囲気に逆に押されてしまう。
「じゃ、じゃあ...!...んっ!」
次の言葉を遮るように、優は義人にキスする。数秒後、義人は優を跳ね除ける様に起き上がる。
「これが、答えだよ。気持ちは...少しも変わってないつもりだ。だから...っ!?」
仕返しとばかりに義人は優を押し倒し、慣れていないからか一瞬固まるが、躊躇いなくキスをする。
「俺も...多分同じだと思う。けど、今のはその...勢い。」
「そ、そうかよ...おわっ。」
押し倒された優を見下ろしていた義人は、力が抜けた様に彼の胸にもたれ掛かる。
「少し、このままでいい?」
「...ああ。好きにしろよ。」
その姿勢のまま思い出した様に夜空を見上げる。その時、一番大きく締めの花火が打ち上がり、華を咲かせる。
「すげぇな...。」
「...。」
それを2人で噛み締めるように見つめる。目の裏に焼き付く光、遠くから聞こえるまばらな拍手は強烈な夏の余韻を感じさせる。
「...戻ろっか。」
「そうだな。」
立ち上がり先に行こうとした時、義人に手を握られる。
「...分かったよ。少しは落ち着く時間が欲しいってのに。」
「俺も落ち着いてねえよ。握らないともっと落ち着かないだけ...。」
優はため息を吐きつつ、義人の手をしっかりと握る。2人の顔からは翳り等とっくに消えていた。
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「義人君、どこに行ったのかな...?」
「まさか優も居なくなってるとは。俺たちみたいにあっちも会ってそうだな。」
「確かに...あっ!神社の方!」
「おっ!おーい優ー!」
共に迷ったもの同士で合流してしまった緋桜と莉々愛は、視線の先、神社境内から出てくる2人を発見する。
「義人くーん...あ...。」
義人と優は手を繋いで出て来た。何か話している。雰囲気から察するに、何があったかは一目見れば分かる。
莉々愛の誰かに対して呟いた恨み言も、緋桜の寂しさの混じった微笑みも、帰る人混みに掻き消される。
夏が終わる。
元々、取り敢えず書きたいところまで書く!を目標にしており、半年放置してしまったりしつつも、ブックマークして頂いたり感想頂けて嬉しかったです。本当にありがとうございました!
異世界系も勿論書きたいですし、サイバーパンク、クライムなども書きたい!アイデアいっぱい出て来てしまってるので、まだまだ書くので機会あればよろしくお願いします!ではまた!
(書きたいところまで書いて清々しいですが、少し物悲しいとも思います笑)




