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10話『水着と浴衣が世界で一番似合うのは君だと思う』1-3

28000PV行ってました!ありがとうございます!


夏休みもあっという間に過ぎ、残すところ数日となったある日。


「夏祭り?そっか、近くの神社公園でやるもんね。忘れてた。」

『そう!だから一緒に行けないかな?浴衣着ようよ!』

「ゆ、浴衣か...。」

『義人君、普通の服で来るつもりだったの?』

「あはは、まさかそんなとこ...。」


電話の相手は莉々愛である。近くの神社公園では毎年恒例の夏祭りがあり、その誘いを受けていた。


「浴衣ならあったと思うから、大丈夫かな。」

『分かった。お祭りの日、楽しみにしてるね!』

「うん。りょーかい。」


電話を切り、早速自分の浴衣を着た姿を思い浮かべてみる。義人自身、浴衣の似合う女性に一種の憧れがあった。


(浴衣かぁ...憧れてはいたけど、いざ着るとなると今からでも緊張して来るなぁ。...ん?そう言えば、通話してる時何か気になる事があった気がするんだよな...。何だっけ...)


何か、自分が一番気にしていた事を忘れている気がする。義人が浴衣を着る上で緊張する原因(・・・・・・)を。


「あっ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そうだったな。もう夏休みも終わりが近いな。」

『俺、去年行ってなかったから、今年は行きたいんだよな。優は?』

「俺も去年行ってない。今年は晴れると良いけど。」

『だな。俺さ、甚平着たい。』

「良いな!俺も着てみるか!」


優の方でも緋桜と夏祭りの話で盛り上がっていた。


『まっ、優は夏祭りに行くのは確定って分かってたけどよ。』

「へぇ、そりゃまた何で?」


どうやら、緋桜は優が夏祭りに必ず行く理由は知っている様だった。その自信の理由に優は興味を引かれる。


『は?何でって...あぁ。まあ、聞くのは野暮って事か。ったく、隅に...なんだ。あれだ。』

「置けない?」

『そうそれ。まあ当日は焼きそばでも食って、後はお楽しみ、だな?それじゃ!』

「おいちょっと待て!お楽しみってなんの事だ!?...切りやがった。緋桜の奴、何を言ってたんだ...?」


結局勢いで押し切られ、理由も聞けず電話を切られてしまう。


「緋桜の奴、何をあんな楽しそうに。うーむ、お楽しみ、隅に置けない...?」


少しばかり考えた後、一つの考えに辿り着く。


辿り着いたは良いが、その考えに何故早く気が付かなかったのかと自分で自分を問い詰めたくなった。


「義人、来んのかな?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「浴衣?あー!夏祭り?」

「うん。おばあちゃんに貰ったのがあったよね?」

「何〜?優君と行くの〜?」

「莉々愛さんと行くんだ。優は...わかんない。」


てっきり優と行くのかと思っていた真奈は驚いていた。


「あ、そうなの。私はてっきり...まあいいわ、祭りの日は着付けやったげる。」

「うん、お願いします。」


とは言いつつ、義人も浴衣を着る以上は優が『見たい!』と絶対に言ってくるのは想像出来ていた。

だが、誘いは一向に来くる気配は無い。


(てか、それって考えてみれば凄い自惚れなのではー!?普通に考えれば引く手あまただろうに!!)


あわあわと想像しながら部屋に戻る。


ほっとけばあちらから、と考えていた義人は羞恥心で自滅していた。恥ずかしさのあまりベッドに倒れ込み、枕に顔を押し付けゴロゴロと転げ回る。


「今頃、学校の...いや、色んな人から誘われてんだろうなあ。俺は...」


優はの隣には自分が居て当然と、そう考えていた自分が居た事に気付く。そして、想像したその先を考えると胸が息苦しい感じがする。

恥ずかしいが、優に自分の浴衣を見て欲しい、似合う髪型も妹と母に相談して決めてある。香水も付けてみようと自分なりに考えていただけにダメージが大きい。


(勝手に振り回してるのは俺も同じ、か。当日に偶然会えたら...なんてな。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、吉田宅では


(どうしよおおお!?誘いたい!けど!)


緋桜の言葉の意味に今更ながら気付いた優は、自室で義人と同じ様に悶えていた。

普通だったら誘っていただろう。浴衣姿を見たい。出来ればあの長い髪を結って、うなじが見える様な...。


だが、誘えない理由があった。理由としては『負い目』と言えるものだが。


(海に結構強引に誘っちゃったし...。それに...柔らかかった...!)


義人達と海に行った際、彼女を少し強引に抱き寄せた事を彼なりに悔やんでいた。義人を怖がらせる男達と同じ手段を取ったのではと、自己嫌悪に陥っていた。


手には義人の細い腰や臀部を触った感触が残っていた。直接触れてはいないが、胸の感触も。


(結構、強引にやっちゃったしな。誘いたいけど難しいだろうな...。)


ベッドから起き上がり、ハンガーに掛けてある甚平を眺めながらそんな事を考えてみる。

そんな事を考えていても、夏祭りはもう明日に迫っていた。


「あぁ...でも、浴衣見てえなあ...!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


迎えた夏祭り当日。


天気に恵まれ、綺麗な夕焼けを背景に理想の夏祭りとなった。

そして、神社公園に義人と莉々愛は浴衣姿で訪れた。


「やってるやってる。」

「この公園の夏祭り、本当に久しぶり。まだ賑わってるようで良かった。」

「俺も久しぶりだなあ。」


歩いていると、やたらと屋台のおじさんと目が合う気がする。浴衣を着た美少女が2人も居るのだ。気のせいだろう。


「んふふ。」

「?莉々愛さん?」

「いやー?浴衣、すっごく可愛いなって。ちょっと悔しいなーなんて。」


義人は白の生地に青いアサガオの柄がプリントされた浴衣を着て来た。

金髪に浴衣という姿は暗くなって来た場所では目立つ白の生地と相まって、どこか浮世離れした儚い美しさを放っていた。


「莉々愛さんも凄い可愛いよ!オーラが違うね。お淑やかな大和撫子って感じ、俺は好きだな。」


莉々愛は紺色の生地に白色で藤が描かれた反物の浴衣だった。美しい黒髪をなびかせて歩く姿には、得も言われぬ艶やかさがあった。


「そ、そうかな...ありがとう。」

「綺麗だよ。可愛いってよりは、美人!かな?」

「も、もう!私の方が恥ずかしくなって来ちゃった!褒めるのが上手なんだから...。」

「褒める所が多いからね!よし、早速回ろうか!」

「うん!」


莉々愛の手を引き、いざ夏祭りの屋台に繰り出す。


「義人君、金魚!アレやって見てもいい!?」

「もしかして初めて?」

「うん。小さい頃はボディーガードさん達に囲まれてちょっと歩くだけで...こういうのさせて貰えなかったの。」

「じゃあ一緒にやろうか!俺、結構得意なんだよね。」


一番最初は2人で金魚すくいに挑戦する事になった。店番の青年に小銭を渡し、椀と紙ポイを受け取る。


「てりゃっ!あっ、暴れないで〜!う、嘘!もう破れちゃった...。」

「分かる。最初は難しいよね。でも〜...ほっ、よっと!」

「凄いわ!ど、どうやってやったの!?」


義人は手早く器用に、ポイで水面近くに上がってきた金魚をすくって椀に入れて行く。


「はい、俺のあげるからまたやってみて。出来るだけお椀との距離が近い、水面辺りに居るのを狙うんだ...。」

「ん〜!こうかしら!...やった!」

「おめでとう!初めてで1匹でも取れたら上出来だよ!」


莉々愛はポイを犠牲に小さい金魚を1匹すくう事に成功した。その場で手早くそれぞれ取った金魚を袋に入れてもらう。


「わ〜可愛いなあ...。小さいけど、綺麗な鱗...。」

「大切に飼ってあげようね。捨てるのは絶対にダメだから...もしダメなら俺のとこで一緒に飼うよ。」

「うん。その時はお願い。」


2人で金魚の入った袋をぶら下げ、人混みの中を歩く。


「あれ、飴...かな?見てみたいな!」

「うん、行こうか。...っと!莉々愛さん、大丈夫?」

「あっ!...ごめんなさい。ちょっとはしゃぎすぎちゃった...。」


りんご飴の屋台に駆け寄った莉々愛は、同じく並ぼうとした客とぶつかりそうになるも、すんでのところで、義人に肩を抱き寄せられ事なきを得た。


「ごめんね...。」

「何も無かったなら大丈夫だよ。ほら、りんご飴食べよ?」

「...うん!」


買ったりんご飴を莉々愛に1本渡し、再び屋台通りを見て回る。

りんご飴の感想を言いながら色々な屋台を回るが、莉々愛は時折義人の顔を見つめては少し俯くのを繰り返していた。顔は少し赤くなっている。


(やっぱりさっきぶつかりそうだったの気にしてるよな...莉々愛さん良い子だし。せっかく夏祭りを普通に楽しめるんだから、楽しませてあげたい。...ていうか、女の子とお祭りじゃん!おいおいビッグイベントじゃん!?)


義人は莉々愛の心配をしつつも、自分の状況がかなり美味しい事に気付き一人で脳内会議を開いていた。


(義人君カッコよかったなあ〜!『大丈夫?』って、抱き寄せられちゃった!やっぱり中身は義人君だよな〜。可愛いしカッコいいなんて反則だよ〜!)


その莉々愛はと言うと、さっき助けられたのを脳内でループ再生して一人でにやけていた。


「莉々愛さん、もしかして気分とか悪い?人酔いしちゃった?」

「え?あ、ああ!いや、大丈夫!何でもない!本当に何でもないの!」

「??...なら良いんだけど。気分悪くなったら言ってね。」

「う、うん。ありがと...ごめんね?変に気を使わせちゃって。」

「いいのいいの。気分悪いのなんて人それぞれなんだし、ヤバいと思ったら休も。」

「うん、そうする...。」


再び莉々愛は顔を赤く染め、俯き気味に返事をする。


(やっぱり中身は優しい義人君なんだなあ。今だって私を普通に扱ってくれる。私の好きな義人君。変わらないんだなあ...。)


莉々愛はチラチラと横目で義人を見るが、たまに目が合うと頬を染めながら俯くと言うのを繰り返していた。

義人は頭にハテナを浮かべながらもニコニコと手を振ったりしていたが、当然人混みの中で注意を疎かにしていると...。


「あ、あれ?義人君?よしとくーん!...ま、まさか...はぐれちゃった...!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「しまった...はぐれてしまった...。」


莉々愛のおかしな雰囲気に気を取られ、いつの間にか彼女とはぐれてしまっていた。


(大丈夫だろうけどな...。)


義人は彼女が危険な目に遭うことは恐らく無いと踏んでいた。その理由は、祭りの中で感じた視線である。その視線達(・・・)は、義人を『悪い虫』と認識しているように感じた。

つまり、莉々愛の父である三条家通泰が密かに依頼したボディーガード達が、屋台を切り盛りしつつ莉々愛を守っていたのだった。


(多分一般客にも紛れてるよな...。ボディーガードさん達は大変だなあ。)


仕事をしっかりとこなしているボディーガード達の努力を心の中で労いつつ、祭りの人混みの中を歩く。


「取り敢えず、歩いて探すしか無いか。何でスマホ置いてきてしまったんだ...。俺のバカっ。」


念の為と、スリを警戒してスマホと財布は家に置き、小銭入れのみで夏祭りに来たのが失敗だった。


悔やんでも仕方ないと莉々愛を探していると、一人の人物に興味を引かれる。もしやと思いつつも、少しの間見詰める形になる。


相手は振り返り、同じ様に義人に視線を向ける。目が合い、予想は確信に変わった。


「優...?」


「義人...。」


屋台の風鈴の鳴らす音だけが、喧騒の中2人の間を駆けていった。

更新少し遅れてしまいました...次はもう少し早めに更新します!

面白ければ評価点や感想、レビュー等お願いします!

Twitter→@silverbollmask

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