9話『おバイト』1-1
お疲れ様です。銀玉です。1週間と経たずに更新したのは久しぶりです。
PV23000超えてました!ありがとうございます!!!遅筆過ぎる作者にはこれ以上無いモチベーションです。感謝!
財団B...?秘密結社か何かでしょうね。
「か、金が...無い。」
義人の悩んでいる原因、それは深刻な財政難だった。財団Bからの買い物のせいであっという間に貯金は消えた。
「バ、バイトしないと...。」
義人達の通う高校はバイトには寛容であり、申請書等は特に必要が無かった。だが、バイトによる怪我やトラブルに対して学校側は一切責任を取らないと明言している。
つまり、危険なバイトに引っかかって何かあっても自己責任なのだ。
「どうしたものか。ぐぬぬ...。」
色々あって人間不信に陥りかけていた時期もあったが、優や周りの人に支えられ持ち直していた。
(何かあったら優に助けてもらうか...。そうだ!バイト代でスタンガンとか買おう!)
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「バイトか...。」
「うん。優は何やってたんだっけ?」
「俺は親戚の店でバーテンもどき...かな?雑用してたまに接客したり...酒飲む事は無いけど。」
「んー...どうしようか。」
学校での昼休み、義人は優と教室で相談していた。
「別に、俺が奢ったり出来るし...義人が働かなくちゃいけない事も無いんじゃないか...?」
「俺の買いたい物は自分で稼いで買いたいんだ。それに、今後役に立ちそうだからさ。安い買い物ではないし...それに、何でも優にして貰うのは嫌だから。」
「頼ってくれないのか?」
義人の決意を聞いた優は残念そうな表情を見せる。
(なんか犬みたいだな...。)
「いや、自分である程度自己防衛出来るまでは優に頼りたいと、思ってる...。ダメかな?」
本人は気付いていない上目遣い、元々義人の言う事を聞くつもりだった優は瞬殺だった。
「き、気にすんなって!どんどん頼ってくれ!」
「良かった!助かるよ。」
聞き耳を立てていたクラスの男子達もついでに陥落し、女子は義人の自然な美少女っぷりに『なるほど』といった表情でしきりに頷いていた。
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相談した結果...
「お、お帰りなさいませ、ご主人様〜!」
何かあっても駆け付けることが出来るようにと、優のバイト先の近くの喫茶店『サウスクラウド』でのバイトになった。なってしまった。
(おわー!死ぬほど恥ずい...!でも時給はいい...。)
以前にもバイトはやっていたがその時はファミレス、それもキッチンなので接客自体ははじめてだった。
「クソぉ優の奴めぇ〜ゆ゛る゛さ゛ん゛!」
「よっちゃん笑顔笑顔!ほら!にゃ〜ん(๑•̀ω•́ฅ)」
「美咲さぁ〜ん難しいですよこれぇ〜!」
先輩であり新人の義人の教育係でもある、園原美咲(そのはら みさき)は笑顔を促すと共に猫のポーズをする。黒髪ショートに黒いネコミミが似合ってとても可愛いらしい。
「よっちゃん折角お人形さんみたいなんだから!...あっ、ネコミミ付けたい〜??持って来る!」
「ヴェ!?そんな事言ってな...」
「ほ〜ら〜!ネコミミ!」
「はわぁっ!」
裏から戻って来た美咲は義人に勢いよくネコミミを付ける。
「かーわーいー!」
「あぅぅ...。」
金髪ネコミミ、そしてメイド服。赤面して恥ずかしがるのもダメ押しである。店内は湧き上がる。
「写真はやめてねー!猫に戻っちゃうから...にゃん!」
「にゃ...にゃん。」
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初めてのアルバイトから早くも数時間が経った。面接自体は前日にあったのだが、それも優の紹介という事で即採用になっていた。
そして今日、研修等があると思っていた義人だが、来てみれば『接客業は実践した方が早いよ!』との事でメイド服を着せられての初実戦になった。
「あぅ...疲れましたよ〜美咲さぁ〜ん。」
「うんうん。よく頑張ったよっちゃん!よしゃよしゃよしゃ...。」
「あふあふあふ...ありがとうございます...あ、まだ終わりでは無いですよね。」
「あと1時間かな。頑張ろー!」
美咲は机に突っ伏す義人の頭を猫を撫でるようにわしゃわしゃと撫でる。
「そう言えば、なんでホールが二人なんですか?さっきまで結構お客さん居ましたけど...。」
「ああ、ここ元々メイド喫茶じゃないんだ。マスターと私と他にも居たんだけど、色々重なって辞めちゃってて。」
美咲の話によると、店員が減り対応が難しくなった結果、客も減ってしまい困ったところのこの週一メイド喫茶だったらしい。
マスターは渋っていたが、美咲の熱意『お客さん呼び込めるし1人でもメイドさんなら許してくれるでしょ!』に押され許可したとの事だった。
「でも何でお...私のメイド服まで...?」
「それはねー、優君が来た時に写真見せてもらってね、それでビビっと来たの!『最高級』だって!その時私の分と合わせて発注しちゃった☆」
「な、なるほど...。」
美咲と話していると、入口のドアに付いてベルの音が鳴る。
「ほらほら、多分本日最後のお客様だよ!笑顔!」
「は、はいっ!いらっしゃいまー......せ...。」
「よ、来た...ぜ!?」
「おっす来たぞ...おいおい!ノリノリっぽいなあ。」
「義人く〜ん...あら〜!やだ、すっっっごい似合ってる!可愛い〜!!」
バイトの終わり際にやって来た客は優達だった。緋桜はニヤニヤし莉々愛は手を組んでしきりに「可愛い」を連呼している。優は...固まっていた。
「な、なんで来たんだよぉ。」
「あ、いや、制服は着ると思ったけど...メイド服すっげぇ似合ってる。可愛い。うん。可愛い。凄く。」
「これは美咲さんが...あっこら!優!写真撮るな!猫!猫に戻っちゃう!」
「やぁん義人くん可愛い〜!んーっ!私もにゃんにゃんした〜い!」
「莉々愛さん、やめてっ、あふあふ...。」
スマホを取り出し無言で連写ボタンを押す優を止めようとしたところ、興奮した莉々愛に思い切り抱き締められ撫でられる。
「あ、俺アイスコーヒー。ほら、優も莉々愛も座れって。」
「かしこまりました...ってブレないな。助かる。」
「まあね、俺はメイドさんよりコーヒー目当てって感じ?」
「そっか。はいこれ、アイスコーヒー。」
「サンキュ。んー、いい匂い。」
頼まれていたアイスコーヒーを緋桜に渡す。
「ていうか、何で来たんだよ。...だから、写真はやめろって!恥ずかしい!」
「いやー、紹介した手前、ちゃんとやれてるか見に来たんだよ。もし無理そうだったら辞めないとだろ?」
「本当は?」
「給仕服...あるかなって...。」
「正直なやつめ...。」
優は直前までスマホカメラで連写していた指を止め、来た目的を白状する。
「ねね、義人君!にゃーんってやってみて!」
「良いなそれ!頼むよ!」
「絶ッッッ対やだ!はよ帰れ!もうすぐ終わるんだから!」
はしゃぐ義人達をカウンター席から店主である北空 学 と美咲が眺めている。
「よっちゃん楽しそうだなあ。」
「何よりだよ。彼女が居ればお客様ももっと来てくれるだろうね。」
「私も多少サボれますね!」
「いんや、彼女をサポートして欲しいからシフトは変わらないよ。負担は増えるけど。頑張って。」
「うぇぇぇ...まだ大学生なのにぃ...社畜だあ...。」
美咲は気だるそうにカウンターに突っ伏す。視線の先は義人達の団らん、それも優に向かっていた。
「...嫉妬かい?美咲ちゃんらしくない。」
「バカ言わないで下さい。そんなんじゃないですよ誓って。でも、アレのあんな顔初めて見ましたよ...。」
「吉田君もあんな顔するんだねぇ...。」
「ですねぇ...。ちょっと嬉しいかも。」
北空と美咲は楽しそうにはしゃぐ義人達を感慨深そうに見つめるのだった。
「ほ、ほら!ネコミミ!これで満足か!?」
「うん!すげぇ良い!」
ネコミミを恥ずかしそうに付ける義人を見る優の目には年相応の輝きがあった。
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