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8話 『奥手』

半年振りですね。お久しぶりです。ブックマークを解除せずに居てくれる兄貴達には感謝です。

*誤字直しました!ありがとうございます!


その日、吉田優は朝から憂鬱だった。

朝は弱かった。だが、今回のものは違う。


「行ってきます...。」

「もっとシャンとして!行ってらっしゃい!」


自宅を出た優はいつもの通学路をフラフラと歩いて行く。


「はぁ...。」


『私は今日の貴方を絶対に許さない。』


(ああ言われても、言い訳出来る立場なんてモンじゃないか。)


「い...おい!優!」

「あ?...なんだ、義人か。ん?てことは?」

「そゆこと。すたすたと通り過ぎてくから、行っちゃったと思って走って来た。」

「とんでもねぇ、待ってたんだ。」

「通り過ぎたんじゃんよ...今日はいつもよりぼーっとしてる?」

「あー...まあ、うん。」


今日は自分でも分かるぐらい腑抜けていると薄々気付いていたが、義人の指摘は優の心に突き刺さる。


「昨日...お前が大変な目に遭ってんのに俺、何もしてやれなかった。ごめん。義人が傷付くなんて...考えて無かった...。」

「...気にすんなよ。全部が全部、優のせいじゃないさ。」

「そうは言ってもよ...。」


気まずい空気の中通学路を歩いていると、 道路を走る車の後部座席の窓から莉々愛が顔を覗かせる。


「おはよう。義人君、吉田君。」

「あ、おはよう莉々愛さん。」

「...おはよう。」


優は少し視線を逸らしながら挨拶をする。


「あ、私ここから歩きます。ありがとうございました。」


莉々愛は運転手にそう告げて後部座席から降りる。


「義人君、もう大丈夫?」

「うん。もう大分良くなったよ。」

「良かった。でも無理しちゃダメよ。」

「ありがと。」


莉々愛は義人を心配しつつ、優を一瞥する。


「うっ。」

「? どうした?」

「あいや、何でもない。」

「優、今日はどうしちまったんだよ?」

「あ、朝は血圧低いからよ...。」


一瞬狼狽えたのを見逃さなかった義人に指摘され、適当な言い訳で返す。


「はぁん?お前基本テンション高い時無くない?」

「本当に、何でもねえよ...。」


目を逸らして否定するも、明らかな態度は義人も察する。


「...優、この前の事はもう...。」

「...すまん。少し放っておいてくれ...。」

「お、おい!優!...なんだよ。」


優は早歩きで先を行ってしまう。


「吉田君も思うところがあるんじゃないかな。そっとしてあげた方が良いんじゃない?」


これ見よがしに莉々愛は義人に言い寄る様に寄り添う。


「そう、かな。」

「さ、早く行きましょ。遅れちゃう。」

「あ、うん...。」


上の空な義人が誰の事を考えて頭をいっぱいにしてるか、莉々愛は分かっていた。


(吉田君のこと考えてるのね。)


複雑な思いが行き交う中、学校に到着する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁぁぁぁぁぁ...。俺は何をしてんだ...何を拗らせてるんだ...バカヤロォ。」


お昼休み、優は断りもなく侵入した理科室で一人寂しく昼食のパンを食べていた。


「おい、誰かいんのか?うおっ、吉田か!勝手に入んなよ!」

箕田(みた)先生え〜俺が悪いのかなあ??」


箕田京介(みた きょうすけ)、年齢35。科学の教師だが性格は適当のそれである。以前理科室奥の備品置き場にて、煙草を吸っていた所を侵入していた優に見つかり、言わない事を条件に優の避難場所として教室を使わせている。


「キモイよ。何の話だよ。」

「それがですねぇ...」


優は机に頭を置き、横を向きながら顛末を語り始める。


「童貞かよお前。何やってんの。」

「ですよねー。俺もそう思いましたー。はぁぁぁぁぁ...。」

「ごめんなさいで済んだろ。」

「それは分かってんですけどぉ。なんつか、俺のせいみたいなもんで、なのに前と同じように仲良く...ってのは筋が通らないっつうか。」


ぶつくさと言う優を見て箕田は特大の溜息をする。


「んで、お前は和田の事好きなの?」

「え、好きですけど。」


優は「何言ってんだこいつ」とでも言いたげな表情をする。


「ぶっ飛ばすぞ。...なら仲直りしろ。ぎこちなくてもいい。多少無理矢理でだって良い。分かったな?絶対だぞ?」


飄々とした態度から打って変わって、強く言い切る箕田を見た優は驚いて少し固まってしまう。


「ありがとう、ございます...。なんで...そこまでアドバイスを。」

「あ?なんというか...お前、若い時の俺に似てんのよ。意地を張りたいんだか、筋通したいんだかって感じな。あーやだやだ!高校生でも、大人に近付いてるだけでガキだよ!」

「ガキってなあ!」


箕田は手をわざとらしく振りながらそうぼやく。


「いいか、優。脱皮に失敗したら飛べなくなるかも、しれないぜ。...だから、躊躇うなよ。」

「あ...はい。」

「面倒なアドバイス終わり。おら、昼休み終わるぜ。戻った戻った。次の組来るから。」


時計を見ると、時間は休憩の終わる5分前に迫っていた。早めに来た別の組の生徒が教室に入ってくる。


「じゃ、先生ありがと!」

「おう。二度と来んな。」


箕田はひらひらと手を振って見送る。


(俺ももしかしたら蛹のまま、なのかもな。)


「先生ぇ吉田先輩と何話してたのー?」

「あ?あー、あれだ。投資信託。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


下校時刻になり、帰りのホームルームも終わった放課後の教室。優と義人の目が合う。


「あ...。」


義人は気まずそうに目を逸らしてしまう。

一瞬その可愛らしさに見蕩れてしまうが、意を決して先手を掛ける。


「い、一緒に...帰りま、せんか。」


義人は途端に驚いた表情を見せたが、直ぐに笑顔に変わる。


「ふふっ、なんで敬語なんだよ。...いいよ。俺もそうしたい。」

「良かった...。」


(やっぱり笑顔が可愛いな。そうだよな。)


「義人、俺変に考え過ぎてた。俺、お前の事守るから。約束する!」

「ちょっ、おい...!」

「大好きな人を守りたい。今度こそ、約束守らせてくれ!」


義人の両手を握り、熱い視線を送る。義人も何が何だかといった表情でしばし見つめ合う。


「.........おい。教室、閉めていいか。」

「「先生!?いつからそこに!」」

「帰りのHR終わってから何分経ってると思ってんだ!部活やって無いだろ!はよ出てけ!」

「すいません!」

「すぐ出ます!」


荒馬の注意を受けて我に返った二人は仲良く教室から走って出て行く。


(手を繋ぎながら、ね。青春だ。)


「ハッハ、荒馬先生、お疲れ様です。」

「箕田せんぱ、あはは。箕田先生、お疲れ様です!」


通りがかった箕田が荒馬に声を掛ける。


「今日ね、優の奴が相談しに来たんです。雪でも降りますねこれは。」

「吉田が、ですか?珍しいというか、そんな事初めてですね。ところでなんの相談を?」


箕田は一度ニヤリと笑う。


「投資信託。」

「絶対嘘だ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ...はぁ...急に走ったからつ、疲れた。」

「いやあ驚いたな。まさか先生が居るとは思わなかった。」


校門まで走った後、義人は息を切らしていたが、優は基礎が出来ているからか余裕な表情だった。


「あっ...。」

「ん?...あ、はは...。」


義人の視線で察した優はしっかりと握った手をようやく離す。


「それじゃ...帰りますか。」

「うん...。そうだね。」


互いに笑いながら家路に着く。二人の顔にはもう明るい表情が戻っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それぞれの家に着き、夕食と風呂も済ませ、ベッドに寝転がり今日を振り返る。


(やっぱり笑顔が可愛いかったな...。)

(やっぱりあいつには笑顔が似合うな。)

また書いていきますので宜しくオネシャス!感想レビュー待ってるぜ!

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