5話 『yellow tulip』 1-2
半年以上振りです...。お久しぶりです。
仕事忙しすぎて気が付けば最後の更新から半年以上過ぎてるって凄いですね...。
「~~~♪」
晴れの日の下、神田緋桜は通学路を口笛を吹きつつ歩いていた。
(あ、和田だ。)
視線の先、自分より前を髪をたなびかせて和田義人が歩いている。
「よ、おはよ。」
「あっ、緋桜。おはよう。」
「優は?」
「俺が行った時に起きたから先行ってろって。」
「ああ...。いつものって感じね。」
緋桜はやれやれと言った表情をする。
「いつもの?」
「ん?あ、優は朝に弱いんだよ。中学から変わらないんだよね。」
「...。優って、中学の時ってどんな感じの奴だったの?」
「やっぱり話してないよな。アイツはなんでも出来たよ。まあ、勉強スポーツってとこ。しかもイケメンだから、人気はあったよ。今とあんまり変わらない。」
「あ、やっぱり?」
「でも、最初に会った時は全然違ったけどな。」
「それって、入学した時ってこと?」
緋桜はんーといった表情で回想する。
「そそ。ふわふわした奴だったなあ。ポーっとしてて何考えてるか分かんない奴だった。でも入学式の時とかからハーフかクォーターなんじゃないの?って噂はされてた。」
「あれ、地毛なの?凄いな。てっきり染めてるのかと思ったけど。」
「お前がそれ言う?」
「うっさい。忘れとっただけじゃい。」
「ブロンドって感じで羨ましいよ。」
「適当な事言ってくれちゃって...。デメリットの方が大きいよ...。」
義人はちょっと困った様な表情で俯き気味に笑う。
「義人はさ、優の事どう思う?」
「え?」
「凄いアプローチされてんじゃん。どう応えるつもり?」
「え、それは...。」
「迷ってんの?」
義人はもう一度困った表情になる。
「元男の俺なんかよりちゃんとした女子で可愛い子は居るだろうしさ?」
「優がそれ言って納得する奴だと思う?」
「しないと思います。」
「だよな。俺もそう思う。」
「あっぶねえ...。なんとか間に合った。」
考えが合致した所で優が小走りで義人の隣にさり気なく着く。
「義人、おはよ。」
「おは...だああ!顔を近づけるな!」
「緋桜もおはよ。」
「ん。おはよ。夜何してたんだ?」
「え!?夜!?」
「なんだその驚きようは...。義人の事でも考えてたら寝れなくなったとか?」
小さく笑いながら優の方を向く。優は一瞬ハッとした表情を浮かべ、前髪を弄る。
「や、やめろよ。緋桜、そんなんじゃないんだって。」
「俺で遊ぶんじゃねー!」
「分かってるって冗談だよ。」
(優、お前って知られたくないような事とか当てられるとそんな顔するよな。じゃあ、そうなんだろうな...冗談だったのに、な。)
校門を通る時、無意識に二人より歩幅を小さくしてそんな事を考えてしまう。
(そっか、今日、金曜日だ。デートにでも誘うんだろうな。)
「緋桜、どうした?」
「...あぁ、ごめん。ぼーっとしてた。」
「元気無いの?低血圧?」
「朝に強い訳じゃないからな。そんなとこ。」
(あ~虚しい。)
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「ただいま。あ、姉ちゃん。」
「ひおりんお帰り~。」
「ひおりんはやめろって。」
「小学生の頃の事をまーだ引きずってんの~?悪かったよ~。」
「酒臭いよ。抱き付くなって。」
神田蒼蘭は緋桜にとって四つ上の姉であり、神田家の長女である。
「緋桜さあ。」
「なんだよ。怖いな。」
「好きな人居るよね?」
「はあぁ!?な、なんだよいきなり!気持ち悪いな!」
「女の子に気持ち悪い言うなや!で、居るんでしょ!?」
蒼蘭はソファーに寝転がりながら緋桜を見つめる。収穫を得るまで詰めるつもりの目の姉を見て緋桜はため息を吐く。
「...だったらなんなんだよ。」
「その恋は叶いそうなの?」
「...。風呂、先に入るよ。」
「緋桜!」
「うるさい!やめろよ!叶うんだったらこんな顔して無いだろ!姉だったらそんぐらい...!」
立ち上がった蒼蘭と見つめ合う形で固まる。涙がいつの間にか目に溜まっている。
「ごめんね、緋桜。お姉ちゃんあんまり頭、良くないから変な事聞いちゃったね。」
「...頭悪い奴が大学行かないだろ。俺も、ごめん。もうどうすればいいのか分からなくて...俺、間違ってるのかなって。嫉妬したりしても虚しいだけだし、こうだったらなんて考えても無駄で、もう、どうすれば元に戻れるのかわかんないだ...。」
「緋桜はさ...。」
「...?」
「その人が自分の気持ちに応えてくれなくても、その人が幸せなら納得出来る?」
蒼蘭はソファーで頬杖を付いて優しく微笑む。
「え...。」
「正直になればいいんだよ。笑顔を見てるだけで幸せってのもあるし、逆に俺がこいつを幸せにしてやる!ってのも、ある訳じゃない?」
「俺は...、好き...なんだろうな。正直勝ち目が無い戦いだし、見守る方がいいけど...。」
「けど?」
「一度は伝えないと、後悔はする...と思う。」
安心したような顔で蒼蘭はニシシと笑う。
「ならそれがアンタの本心って事じゃないの?まあ、勝てない戦いってはあるものよ。それでいて引けない戦いもね。」
「それっぽいな...。」
「んふふ、伊達に経験積んでないの。ほら、お風呂入っちゃっていいよ。」
「色々と...ありがとな。なんかスっとしたような感じする。」
緋桜はそう言って風呂場へ行く。それを見届けた蒼蘭は胸を撫で下ろす思いでため息を付く。
(女の子は気持ちだけでも伝えれば結構喜ぶって事、伝わったかな?)
少し時間を作れそうなので頑張って更新して行きまーす...。