ささやかな一日の中に 三話
三話の投稿が遅くなってごめんなさい!
今回は片瀬一家の様子が分かるストーリーです。
ピピピピッ,ピピピピッ,ピピ。
設定していたアラームを止め,時間を確認する。
「いつも通り六時十五分か。シャワー浴びてから朝飯食べるか。」
欠伸をしながら階段を降りるとなぜか姉がいた。
「おぉ,遥。朝早くから起きてんだな。姉さんはびっくりだよ。」
「俺はいつもよりも早くおきてる紫穂姉にびっくりだよ。なんでこんなに早いんだ?」
「そんなの偉大な姉だからに決ってんだろ。なんてったって偉大だからな。」
「偉大な姉なら自分でそんな事言わねぇよ。で,なんで早いの?結構マジで気になるんだけど。」
「たまたま早く起きただけだよ。遥は今から何するのー。」
「寝汗かいたからシャワー浴びる。それじゃあ行ってくるわ。」
「行ってらー。姉さんもすぐに行くよ。」
「いや,来なくていいから。」
「遥は冷たいなぁ。姉さんと遥の仲じゃないか。」
「俺と紫穂姉の仲だから余計悪いんだよ。」
「ぷぅー。遥は酷いなぁ。一緒に入らせろー。」
「そんなに入りたいなら先に入るか?」
「もういいもん。姉さんとのコミュニケーションを大事にしないなんて可愛くない弟を持ってしまった。」
「シャワー浴び終わったら話したいことがあるから後で部屋に行ってもいいか?」
「ウェルカムだよ,遥。遂に偉大な姉を頼るようになったか。」
「じゃあ後で行くわ。」
自然な流れとまでは言えないが場を切り抜けられた。
「ふあぁ。」
なんか眠いな。さてと,シャワーを浴びるか。一階の踊り場から少し先に進むと風呂があるのでゆっくり行こうと思ったが姉がきそうだったので少し急いで向かった。
「かぁー。目覚めるわー。」
シャンプーとボディソープで体を洗い風呂場を出た。
約十分ぐらいの間でシャワーをすまし,さっと髪を整えてから制服を着る。あぁ,そういや姉さんの所に行くって言っちまってたな。デートするならどこがいいか参考程度に聞いとくか。
コンコンコン
「紫穂姉,入るよ。」
「さぁ,開けたまえ。」
いつもながら大袈裟だなと思いつつもドアを開ける。
「さっき言ってたことなんだけどさ…。」
「うんうん。何かな。」
なんか紫穂姉楽しそうだな。
「もしさ,紫穂姉がデートするならどこがいいかな?」
「えぇっ,い,いきなりどうしたの。遥,姉さんに惚れてたのか。」
「愉快な勘違いはやめて貰おうか。」
俺が紫穂姉に惚れるなんてある訳ないだろ,と思ったが言うとほぼ確実に面倒臭い事になりそうだったからやめた。
「え,姉さんに惚れてたんじゃなかったのか。じゃあ,一体どうしたんだ?」
紫穂姉って本当に自分に自信あるよな。普通,あんな思考に至らないしな。
「好きな子を遊びに誘う事に成功したから,どこなら喜ばれるかなーって考えてたんだ。紫穂姉はどこがいいと思う?」
「そこで恋愛マスターの姉という訳か。なるほど仕方がないな。私なら相手が一生懸命に考えてくれたならどこでもいいかな。」
「紫穂姉にしてはまともな意見だな。映画にしようかなって考えているんだが紫穂姉はどう思う?」
「いいんじゃないか。私を映画に誘ってくれた事はないのにな。」
なんで悲しそうにしてんだよ。
「相談に乗ってくれた御礼として今度一緒に映画いかないか?」
「そうだな。しれっと手を繋いでも姉さんは気にしないよ。」
「なんで繋ぐんだよ。」
「でも,好きな子とは繋ぎたいんだろ。それなら練習しないとな。」
なんて事を言ってるんだ。
「遥,顔が赤いぞ。照れてるのかや。可愛いな。」
「あぁ,もう。繋ぎたいに決ってるだろ。」
「やっぱり,エロい弟だな。悩むなら勢いで繋いでみな。」
その瞬間いきなり紫穂姉に手を繋いできた。
「いきなり何すんだよ。」
少し動揺してしまった。女の子の手ってこんなに柔らかいんだなって思ってしまった。紫穂姉相手になんて事を考えてんだ,俺は。
「こういうふうにさっと握ればバレないって。」
「絶対にバレるに決ってんだろ。実際に俺は気付いてるじゃん。」
「バレちまった時は,ごめん,映画に感動してたら握ってしまったよ。とか言ったらいけるさ。私なら許すけどな。」
「紫穂姉はガードが緩いからな。詩織ちゃんは多分ガード堅いだろーしな。」
「へぇ,詩織ちゃんって言うんだ。今度,遥の教室覗きに行こーっと。」
「や,やめろよ。どうせロクな事しないんだろ。」
「違うよ。詩織ちゃんってのが気になるから見に行くだけ。」
「本当か?何もするなよ。おおっと,そろそろ飯食べないと時間が無くなってしまうな。紫穂姉降りるよ。」
「はいはい。」
なぜか嬉しそうな紫穂姉を連れて一階まで降りると,
「二人とも来たのー?朝ご飯並べるから少し待ってて。」
「わかったよ,母さん。あんまり急がなくていいよ。」
そう言いながら,リビングのドアを開けると父がソファーに座っていた。
「お前達,姉弟なのに二人でくるなんて。ま,まさか昨日の夜に二人はもう…。」
「ちょっと待てよ。そんな訳ないだろ。相手が紫穂姉だぞ。」
朝から無駄にテンションが高くうざい事を言い出すのが俺の父親の月彦だ。
「そうなの,父さん。私たちは昨日,遂に一線を越えてしまった。遥が,嫌がる私を強引に抑えつけ無理矢理…。」
「おい,待て。マジで何言ってんだよ。そんな事する訳ないだろ。」
「や,やっぱりか。おい母さん,紫穂と遥が遂に一線を越えたらしいぞ。」
「あらあら。これからは険しい道だと思うけど,父さんと母さんはいつでも二人の味方だから。」
「んな事はねぇー。」
ついつい大声で叫んでしまった。
「遥,こんな朝から大声を出したら近所に迷惑だろ。」
「そうだよ,遥。昨日あんなにしたのにまだ元気なんてさすが男の子だねぇ。」
「大声を出させてる原因は父さんと紫穂姉だろ。あと昨日は何もしてないだろーが。」
父さんと紫穂姉が二人揃うとかなりうざくなるケースが多い。
「あなた達もその辺にして朝ご飯を食べたらー。」
「そうだな。遥も早く食べないと遅れるぞ。」
もし遅れたら父さんと紫穂姉のせいだろ,と思ったが口にはしなかった。
それからはニュースを見ながら朝ご飯を食べた。父さんと紫穂姉が痴漢のニュースが流れた時にこっちを見てきたのが少しうざかった。
「じゃあ行ってきます。」
そう母に告げると,
「ちょ,遥待ってよー。い,いってきまーす。」
と言いながら姉が出てきた。
「いってらっしゃい。」
母はそう言いながらドアを閉めた。
今日は詩織ちゃんに映画でいいか聞き,予定を確立する。今日も一日頑張るかと心の中で決意すると,
「遥,行くよ。」
紫穂姉が歩き始めたので一緒に学校へ向かう。
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