表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深紅の竜血  作者: 江渡由太郎
第五章 嘆きの壁
49/67

3

 ウィリアムが意識を失っている間に、黒衣の魔女はディヴィナを連れ去ったことを、若い騎士ピーターから知らされた。


 ウィリアムは黒衣の魔女を信用してしまったことを、幾ら後悔してもしきれなかった。


 自責の念にいまにも押し潰されそうであった。


 これで、ディヴィナを救うために残された時間は過ぎ去ってしまったのだ。


 黒衣の魔女は何故、ディヴィナを連れ去ったのかは、幾ら考えても理由は解らなかった。


 封印の効力は失われ、古竜”抱擁するもの”が解放されたのかもしれない。


 少女は”聖杯”として古竜ファーヴニルを封じていたが、その封印は解けていると考えた方がいいかもしれないのだ。


 この大地に古竜ファーヴニルが復活したとなれば、人間たちにとって最大の脅威に他ならなかった。


 突然、木製の扉が勢いよく開けられた。

 考え込んでいたウィリアムは何事かと思い、怪訝そうな表情を扉の方へ向けた。


 すると、老魔術師のイーサンが己の身長ほどの大きさの巨大な鏡を持ってきた。


 ウィリアムたちが居る部屋にそれを運び込むと、石の壁へと立て掛けたのだった。


「これは”真実の鏡”です。高名な付与魔術師であるマーク・オーウェン作の国宝です」

 元宮廷魔術師であったイーサンは、この鏡がいかに貴重な品かということを説明した。


「この”真実の鏡”とはどのような物なのですか?」

 ウィリアムは聞きなれない魔法の鏡の名前とそれを造った魔術師の名前について訊ねた。


「ウィリアム殿下、これは古竜が大陸から持ってきたと言われる秘法の中の一つなのです。古竜を退治した後は、竜の紋章の王国がこの秘法を所有しました。この魔法の鏡にはあらゆる問いに答える魔力を付与されているのです」

「この鏡が問いに答える!?」

「そうです。鏡には魂が宿っており、どんなことでも真実を語ることからその名の由来とされています」

 老魔術師はそう言った。


 元宮廷魔術師のイーサンはこの魔法学院に張った結界を先程、開放したことこの部屋に居る全員に伝えた。


 そのため、結界内では魔術師が使う魔法だけが使えない結界を張られた状況を無効にしたのだ。


 老魔術師は歪な樫の木の杖を高らかに掲げて、上位古代語魔法の詠唱を始めた。


 真実の鏡と呼ばれる魔法の鏡の鏡面は湖面のように波紋を波立たせた。


 水銀のように液体となった鏡面はそのまま床の上へと流れ出した。


 水溜りのように銀色の液体はその場に溜まると、今度は人間の形を成すように膨れ上がったのだった。


「何なのよ。この悪趣味な嗜好品は!?」

 エルフ族の娘ユーリアは、古エルフ語で悪態をついてから警戒心から二歩ほど後ろへ下がった。


「鏡は真実しか言わず、決して嘘もお世辞も言わない」

 無機質な銀色の液体はそう告げた。


 ウィリアムは、その銀色の鏡の魂に詰め寄った。


「ディヴィナは! ディヴィナはどこに連れ去られたんだ?」

 若者は得体の知れぬ存在に少女の事を聞いた。


「おまえの求める少女は北部の黒衣の魔女の館にいる」

「北部に……」

 ウィリアムはディヴィナが北部に居ることに驚いた。


「生きているのか?」

 恐るおそる訊ねた。


「生きているとも死んでいるとも言える」

「どういうことなんだ!?」

「それ以上の答えは求めることは叶わず」


「北部に行けば、ディヴィナを助けることが出来るんだな?」

「冥界と現世の狭間。黄泉比良坂に彷徨っている」

 ウィリアムは謎かけのような鏡の霊の答えに頭を悩ませていた。


「ウィリアム、どうするの?」

 考え込んでいる若者にエルフ族の娘が声を掛けた。


「わたしたちも行こう……北部へ」

 ウィリアムは決意を込めて言った。


 魔法学院の地下部屋の中に居る全員が、ウィリアムの言葉に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ