ホームレス
大阪が舞台
4月1日
昨日、パチンコで勝った金で2000円も買い物したら福引き券をもらった。1ぱちの甘は良いですな。
バイト帰りに地元の商店街のガラガラをして帰った。1等は3万円分の商品券である。これも当たるんじゃないか。当たったら転売やな。
ガラガラガラッ!
「はい、白は残念賞~。コーヒーどうぞ~」
ガラガラ親父が嬉しそうなのにイラッとしながらも受け取った。ってかこれめっちゃマズいコーヒーやん。
炭酸入りコーヒーってスーパーでも30円で叩き売りされてるやつだ。
友達と怖いもの見たさで買って飲んだら悶絶した品だ。当時100円で買ったから70円損してる。
長居公園の草むらにジャーって捨てよう。そう考え公園に寄った。良い天気で桜も咲いて春モード全開。お母さんと子供やジョギングしてる人が大勢いた。そんな中、ボロボロの服を着た丸坊主のおっさんがゴミ箱を漁っていた。小田無道に似てる。ホームレスだろうか。
ホームレスの様子を見ていると、拾ったスポーツ新聞片手にどこかへ戻って行く。石で固定された銀のマットの上にチョコンと座って新聞を読み始めた。
銀のマット、自分が大学の陸上部時代のストレッチで使ってた物と一緒なのが切ない。
『お金を恵んで下さい』と書かれた小さなダンボール箱もある。全く金が入っていない・・・
捨てようとした炭酸入りコーヒー恵もうか悩んだ。変な奴やったイヤやしなぁ・・・
でも、ネタになるかもと恵む事にした。おっさんもホームレス仲間に
「金くれ言うたらコーヒー入れて来た若造おってん。ガハハッ」
ってコップ酒片手にネタに出来るだろう。
お金入れる箱に激マズの炭酸入りコーヒーを入れた。
「金じゃないけど良ければどうぞ」
若干声を震わせながら入れた。ビビってた。
「・・・地球も捨てたもんじゃないな」
おっさんはボソッと言った。
入れた事を後悔した。地球って表現が変だ。
「・・・地球1か月後に壊れるぞ」
無視して逃げよう。僕はダッシュで逃げた。陸上やってて良かった。えっ!
おっさんは目の前にいた。いつの間に?
「最初に金入れた奴に託そうと思ったんだ。君に地球は託された」
「警察呼びますよ」
「まぁ、待て建山義人君」
「なんで名前が分かるんだ!」
「人のいない所に移動しよか」
ブルーシートの中に連れて行かれた。あれっ?さっき無かったぞ。
「僕は頭の中で想像した物を一瞬で出せる。ただし30分で消える」
「じゃあ、銀マットも恵んでくれの箱もそれで?」
「そうだよ」
「30分誰も恵まなかったら?」
「地球は終わってた」
「・・・」
「地球はこうなってた」
おっさんは両手の人差し指を地面に向けて呪文を唱えた。何言ってるかは分からない。
地面に映像が出てきた。隕石が地球に当たり一瞬で火の海と化した。
「面白い手品だな」
「・・・兄ちゃん彼女いた事ないだろ?」
俺はビックリした。痛い所つかれた。
「正社員にもなった事ないだろ?」
苦しい。コンプレックスをえぐられる。んっ?
「なんで俺の名前やコンプレックスが分かるんだ?」
「・・・こっちで言う神様みたいなモンだからかな」
「はぁ・・・」
「1か月以内に彼女を作りなさい。そうすれば地球は助かるよ。隕石の軌道をズラしてやろう」
「最初からズラしてや」
「あっちの世界。君らで言うあの世のエライ人達は地球に怒ってる。人間のエゴは酷いねと。自分達を豊かにするために環境破壊を続けた。まるで自分達が一番エライかのように」
「おっさん、手塚治虫好きだろ?」
「これは真面目な話だ。けど、私は人間の優しさを信じた。30分と言う短時間でホームレスに物を恵む奴はいるはずだと。そして、君が僕にコーヒーを恵んだ」
最近、就活も上手く行ってないし、予想通り金持ちと美人が結婚するし地球壊れてもいいんやけどなぁ・・・面接で「最近彼女が出来まして」って言ってもなぁ・・・
「地球、ぶっ壊して下さい」
「せっかく1か月のチャンスがあるんだ。頑張りなさい」
「オレに託したのが間違い」
「・・・分からない事があればここに電話しなさい」
電話番号を渡された。4桁―6桁―7桁の変な番号だな。
「5月1日に壊れない事を期待するよ」
おっさんは消えた。
えっ!瞬間移動か。どこ行ったんや。キョロキョロしても見当たらない。銀マットも箱もブルーシートも消え、僕は1人で木々の間に立っていた。
ラスト3分前に恵んでくれたコーヒーか。神様は感慨深げにプシュッとプルタブを開けた。
「マズッ!!!」
マズいのは俺のせいじゃない。業者のせいだ。