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ルナの羽根の耳飾り

作者: 凪海ゆずき

 ルナは美しい羽根を持った天使でした。天の神様のお側で恵まれて暮らしていましたが、人間にずっと憧れていました。何者にもとらわれず、自由気ままに歌い踊る人間の姿はルナの目には、生きることを謳歌しているように輝いて、見えたのです。人間界に住むものたちはみんなルナの暮らしを羨みましたが、ルナにとっては不自由で窮屈な、鳥かごの中の暮らしと同じように思えました。ある日ルナは、思い切って神様にお願いをしました。

「私を人間界に降ろしてください。私は私の力で生きてみたいのです」

 すると、神様は優しい声で言いました。

「あなたがその金色の羽根をここに置いてゆくというのならば、私はそれを許しましょう」

 ルナの身体を覆う美しい羽根は、神様がルナに与えてくれたものでした。でも、人間になれる––、そう思うと、美しい羽根など必要のないものでした。地上に向かえる分だけを残して、金の羽根をすべて神様にお返ししました。ルナは、自由になったのです。

 雲の下では強い風が吹いていました。ルナは風に歯向かうように地上を目指しました。だけれど、ほとんどの羽根を失ったルナにとって、その風はまるで身体を引き裂くナイフのようでした。しばらくすると、冷たい雨が襲いかかりました。その雨は、まるで降り注ぐ矢のようでした。突き刺すような、滲みるような痛みが身体中に響きます。やっと雨が上がったかと思うと、今度は陽の光が肌を焼くように身体をなじりました。地上に降り立った時にはもう、ルナはただのみすぼらしい人間の娘でした。これまでルナを羨んでいたものたちは、そんなルナには目もくれず、また違うものを羨んでいました。

 人間の世界は確かに自由でした。だけれどそれゆえに醜い心や、無秩序に苦しむ人たちがたくさんいました。天界から見えていたのは、そんな中でも前を向いて、生きることを楽しむ極わずかな人の姿でした。彼らの強くて美しい心が光を放ち、天界にまで届いていたのでした。ルナは、少しだけ泣きました。

 そんな時、天から微かな光が射しました。ルナが光に向かって手を差し出すと、手のひらの上に四つの小さな緑の石が現れました。

「人間に与えたように、夢と希望、勇気と叡智をお前にも与えます」

 それは神様からの最後のプレゼントでした。自由の中で、生きる喜びを自ら勝ち取りなさい、そう言われているようでした。

 ルナは前を向きました。もう後悔はしていません。少しだけ残っていた金色の羽根と神様から頂いた四つの石を、身につけられるように耳飾りにしました。そしていつの日か、自分の心が放つ光が天界に届きますように、と耳飾りに願いを込めました。

 新しい世界で、これからたくさんの困難が襲いかかるでしょう。でも、自分の信じる道を歩むだけです。きっと、どんな時もこの耳飾りが助けてくれる。ルナは、そう思いました。

この作品のモチーフとなったアクセサリーはこちらからご覧になれます。http://www.creema.jp/exhibits/show/id/2045106

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