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第三話 適性

 いろいろと魔術の実験(遊び)したり、本を読んだりして異世界人生を堪能してるうちに四歳にもなった。

 その甲斐あって本に載ってる下級魔術までの魔術は全部使えるようにし、魔術に関しても二つ判明したことがあった。


 ひとつは、無詠唱で魔術を行使した場合、途中から起動や位置を変えられるものがある。

 たとえば火属性下級の「ファイアーボール」は、本来発動後一直線に飛んでいくのだが、そこで曲がるようにイメージすると、イメージ通りに曲がる。

 ただ、自分と距離がどうしても離れてしまうため、命中させるにはコツが必要だ。


 ひとつは、魔法陣はすぐに消えるのではなく、ある程度残ることだ。

 ウォーターボールの場合は、魔法陣が現れ水弾が現れて魔術が発動する。

 そして、水弾が目標にあたると魔法陣が消え魔術が終了する。

 つまり、魔法陣は魔術が発動してから終了するまで残り続ける。

 

 一度魔法陣を途中で消したら、水弾はそのまま地面に落ちた。

 後片付けが大変だったのを今でも覚えてる。

 

 というように判明しが、今になっても判明しないことがある。

 それは……

 

 適性がわからない。


 そう、いまだに自分の適性が判明してないのだ。

 最初は魔術を使っていけば、そのうち得意不得意が現れると思っていた。

 それがどうだろう。

 永き(それでも一、二年ぐらい)にわたって実験(趣味)を繰り返してきたが、一向に現れる気配がしない。

 今まで覚えてきた魔術も全部 普通・・に使えて、特に不得意というほどのものはなかった。


 大丈夫かな?なんか変な体質じゃないよな?

 俺目立つのは得意じゃないんだけど。


 いいことのはずなのに、なぜかフラグっぽいことを思ってしまった。



 ===

 


 五歳になった。


 朝食をとっているとクレアが話しかけてきた。


 「ねえ、ユウ今ちょっといいかしら」

 「何、母さん」

 「じつは、そろそろ魔術とか文字を教えたいのだけれど……どお?」


 どうやら魔術を習うかどうかの質問らしい。


 さて、どうするか……

 一応本に載っていた魔術はあらかた使えるようになった。

 中級魔術は威力が高すぎるためさすがにぶっ放すわけにはいかない。

 そのためイメージトレーニングしたり、発動の一歩手前で中断したりしていた。

 さして必要じゃない気もするが……


 いや!よく考えたら、これは絶好のチャンスではないか!

 長年の疑問である、自分の適性を知るチャンスではないか!

 ならば答えはひとつしかない!


 「もちろん!ぜひ教えてほしいです、母さん!」

 「え、ええ。それじゃあすぐにでもはじめましょうか」

 「はい!」


 俺がここまでいい返事するとは思わなかったからか、クレアは若干ひ…驚いていた。

 やめてよねそういう反応するの、若干傷つくから。

 

 こうして俺はクレアから魔術を教わることになった。


 

 

 あっ。

 いまさらだが、適性とかは普通に親に聞けばよかったんじゃないか?



 ===



 場所は変わって、二階の書斎。

 

 俺とクレアはそこにいた。

 目的はもちろん魔術授業のためだ。


 「母さんは教師やってたの?」

 「教師はやってなかったけど、魔術の知識はそれなりにあるつもりよ」


 へー、すごいな

 

 「すごいです!母さん!」

 「あらユウったらお上手なんだから。でも無表情で言われるとちょっと困るわね」


 あ、やっぱり。

 生前はほとんどポーカーフェイスこと無表情だったからな。

 表情をあらわせないとか、感情の欠落があるわけでもない。

 面白ければ笑うし、悲しければ泣く。

 ただ単にほめたりする時にに笑ったりする癖がないのだ。

 意図的に笑うことはできるが……

 どうだろう、他人の前で意図的に笑ったことがないからな。

 大丈夫だろうか、なんかちょっと心配だなあ。

 気持ちわるいとか言われたら……


 「どうしたの?急に考え込んで?」

 「なんでもないです母さん。それよりこれから何するんですか?」

 「そうねぇ…、最初は文字を教えるつもりだけど、とりあえずユウの適性を調べましょう」


 来たー!ついに来たー!

 とうとう自分の適性を知ることができるぞ!

 

 「それで、どうやって調べるんですか?」

 

 高ぶる気持ちをポーカーフェイス(無表情)でごまかした。

 

 「じゃあ最初にこの水晶に手を置いてみて」

 

 そういいながら、クレアは水晶を持ってきた。

 すごく綺麗な水晶だ。

 透き通っていて、向こう側がはっきり見える。

 

 「なんですかこれ?」

 「『ヒトミ』という魔道具で、魔術の適性を調べる物よ」

 

 あ、やっぱり。

 こういうのって大体予想着くからな。

 

 「じゃあ最初はあたしがお手本を見せるわ。まずは水晶に手を置く、そして水晶に魔力を込める」


 すると、水晶が赤く光った。

 真っ赤な、燃えるような赤。

 ただ燃やすような炎ではなく、どこか優しく、心地よい炎だ。


 「と、こんな感じね。じゃあとりあえず同じようにやってみて」

 

 クレアに促されるまま水晶に手を置き、魔力を込める。

 魔力が水晶に流れていき……

 

 「なにも起こりませんよ?」

 「え?」


 念のためにもう一回やってみるがやはり何も起こらない。

 質問しようとクレアの方を見てみると。

 クレアが困惑と驚愕が入り混じった表情をしていた。

 あれ?なんかいやな予感がするんだが。


 「どうしたんですか母さん?」

 「えっ、いえ、なんでもわ」

 

 そういうとクレアは俺に背中を向けて考え込んだ。

 ああ、これ大丈夫じゃないな。


 しばらくするとクレアが何かを決断したように振り返った。

 

 

 俺の前に来るととクレアが俺の肩をつかんで、真剣な顔をしながら話した

 

 「ねえユウ、これから大事な話をするからしっかり聞いてね」

 「は、はい」

 「あなたはね、その……適性を持ってないの」

 「母さん、それどういうこと?」

 「適性を持たないと魔術をうまく扱えないし、人によっては馬鹿にして来たりすることがあるの、だからその……」

 

 クレアはそのまま黙り込んでしまった。

 まあ、自分の子供が誰でもできることをできないなんて、そりゃ黙り込んでしまうだろう。

 こういう時はどお声をかけたらいいんだろう。

 ぼっちやってたからこういうのはよく分からないんだよな。

 ううん、とりあえず本音を言ってみるか。


 「大丈夫ですよ母さん」

 「え?」


 俺が話しかけるとクレアは顔お上げた。

 

 「俺は自分に才能がなくても気にしないし、才能がなくても頑張っていくつもりです」

 「ユウ……」


 実際俺はそのつもりだ。

 才能がなかろうと、なんだろうと、俺には関係ない。

 俺はこの世界を見て回りたい。

 この世界の本をもっと見たい。

 俺の好奇心を満たしたい。

 楽しいこと、面白いことおしたい。

 そのためにはどんな障害も砕く。

 どんな手段を使っても成し遂げる。

 

 前世では嘘でもこんなこと言えなかった。

 思うことことはできても、言うことはできなかった。

 

 でも今は違う。

 今の俺には『生きたい理由』がある。

 だから頑張れる。

 だから今なら言える。

 堂々と言える。

 俺は『死に』たくない。

 俺は生きたい。

 この世界で『生きて』いたい。

 生きて楽しみたい。

 

 俺がそういうとクレアは俺を抱きしめた。


 「そうよね。才能がなくても、普通のことができなくても、頑張れるもんのね」

 「はい」

 

 そういうクレアの目にはかすかに涙が浮かんでいた。

 

 

 

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