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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第二章 公式機体コンペ
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第92話 ログイン禁止期間は……。


『で? 三日間ログイン禁止の沙汰が出たと?』

「……うん」

 電話口でしょんぼりした声を出すさゆに、蔵人は苦笑を漏らした。

 それを聞き咎め、さゆは「なに?」と険の有る声を出す。

 だが、蔵人は気にした様子もなく続けた。

『なんつーかよ、おじさんの娘だよなあって思うよ、お前。そののめり込みすぎて周りが見えなくなる辺り』

「……」

 事実過ぎてぐうの音も出ない。

 さゆの父もまた、熱中すると他の事が視界に入らなくなる質だ。

 さゆは娘としてその性質を正当に受け継いだと言って良いだろう。

 そんなふたりを相手に家庭を切り盛りしているさゆの母は偉大である。

『つーことは、コンペイベの進行はどうすんだ?』

「それを蔵人に頼もうと思って」

『いや、それは……』

 さゆの頼みに唸る蔵人。

 彼としてはあまり面倒なことは考えたくない質だ。

 蔵人自身、前線で切ったはったしている方が性に合っていると思っているし、事実それが正しいだろう。

 しかし。

「他に頼める人が居ないのよ。アレクくんとリリィちゃんはまだまだ無理だろうし、アヤメさんじゃリアノンを御しきれないでしょ?」

『俺だって無理だぞ?』

「それでもアヤメさんが丸め込まれるよりはずっとマシでしょ?」

『……』

 さゆの指摘にその場を想像してしまい、蔵人は声を失った。

 情報屋として腕利きで、スナイパーとして頼りになるリアノンだが、悪ふざけが過ぎることが多々ある問題児だ。

 今のところさゆ……リムが手綱を握ってなんとか御しているが、それが無くなるとなれば何が起こるか分からない。

 さゆはそのあたりを懸念しているのだ。

 その事は蔵人……アサクラも承知している。

 しているが、自身があのトラブルメーカーを制御できる自信は全く無い。

 それでも、新人二人やリアノンとの付き合いがまだまだ浅いアヤメに任せるよりはマシと言えばマシだろう。

『……OK分かった。なんとか被害を小さくする努力はする』

「被害が出る前提なのはどうかと思うけど、仕方ないわね……」

 どこか諦めたように請け負った蔵人の声に、さゆは小さく息を吐いた。




 さてログイン禁止令が出されてしまったさゆだが、だからといってなにもしない訳がない。

 もともと学校の成績も悪くないのだが、母親の手前勉強の方に力を入れはするものの合間合間で捻出した空き時間で、サンダーボルトゼクス用のオプション装備類を設計していた。

「単純な増加装甲じゃあんまり意味が無い。兵装の強化と機動力の補填も考えないと……」

 呟きながら端末にデータを打ち込む。

「増加装甲には例の新装甲を使用して……」

 元々重装甲の機体だ。

 いかに浮遊フィールドによって重量軽減効果を得ているとはいえ、これ以上は機動力とエネルギー効率の低下が酷くなりすぎる。

 そこで外付けで追加する増加装甲を肩、胸、腰、脛の一部に限定する。

 これらは熱エネルギー蒸散シートをサンドイッチしたものにして、エネルギー兵器に対抗する。

 これらには武装やスラスターは設けず、完全に装甲防御の強化のみに傾注させてある。

 そういった武器、推進装置は誘爆の危険性もあるため、ダメージを外へ逃がす機構をしっかり作らないと危険だからだ。

 これをガレージにデータ転送し、ファムとメイに作成させる。

 ドロイドの作業は所有者に準ずるため、さゆ……リム配下のドロイドたちも品質管理スキルの影響を受ける。

 装備、パーツ作成に関してドロイドたちも品質低下を起こすような致命的失敗を起こすことはない。

「この辺はこれで良いとして。バックパックと武装機動ユニット、手持ちの主兵装にシールドっと」

 ついで設計するのは兵装関連だ。

「……ザリガニの装甲に対して実弾は効果がかなり低い。エネルギービーム兵器を主軸にするべきかしら?」

 とはいえ、エネルギー兵器も熱エネルギー蒸散皮膜コーティングによって減衰させられてしまう。

 低出力のエネルギー兵器では、装甲を貫通できない可能性が高い。

 となれば高出力のエネルギー兵器を積むべきだろう。

 しかし。

「……出力的な余裕は無くはないけど、リニアシリンダーへの供給は減らしたくないよね」

 いかにサンダーボルトゼクスのGジェネレーター出力が同格機と比べて優越しているとはいえ、下半身間接のほとんどを構成するリニアシリンダーは、その特性上エネルギーをかなり消費する。

 そこへエネルギーを消費する熱光学兵器を搭載すれば、消費量はうなぎ登りに上がっていくだろう。

 高ランクの素材を使った高性能ジェネレーターならともかく、制限のある中では厳しいものがある。

「機体コンセプトを変えるわけにはいかないからリニアシリンダーは外せないわ。となれば必要なエネルギーは……」

 さゆは真剣な面持ちで呟きながらオプションパーツの設計を進めていった。




 そして三日後。


「解禁っ!」


 取り上げられていたVR用のヘッドギアを掲げ、さゆは満面の笑みを浮かべながらくるくる回っていた。

 その姿にさゆの母親は諦めたように大きく息を吐いた。

 別段、さゆはゲームにかまけて学校の成績を落とした訳でもないのだ。

 むしろ趣味が高じて理数系の成績は上がり続けている。

 年頃の娘の趣味が機械工学というのはいかがなものかと思わなくはないが、すでに小中学生の頃からそんな感じだったため、もはや諦めの境地に入っていた。

「……娘とおしゃれ談義したかったんだけどねえ」

 ぽつりと漏らしながらも、娘を見る母の瞳は優しげであった。

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