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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第二章 公式機体コンペ
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第91話 ザリガニ対策?

「うーむ」

 みずからの城《店舗ガレージ》にて、リムは背もたれに体重をかけながら腕を組み、唸った。

 ザリガニGSとの戦闘後、さんざんジャンク漁りをしてからダリルを伴いマリアたちと合流した。

 話し合ったのは緊急missionのこと。

 マリアの方に現れたのもザリガニGSだったらしい。

 なかなか苦労したようだが、マリアのコンペ登録機体は重量級の格闘戦機だ。

 近接格闘戦は、リスクが高い代わりに攻撃力が非常に高い。

 重量級機体ともなれば一撃で軽量級機体を撃破してしまうこともあるほどだ。

 マリアはそういった機体のエキスパートと言える。

 ザリガニGSの新素材合金製装甲には手こずったようだが、それでも機体中破レベルで勝ったらしい。

「……ちょっと悔しいわね」

 相性問題レベルではあるが、リムの作りあげたサンダーボルトゼクスがほぼ全損状態であったことを考えてか、リムは難しい顔で呟いた。

 たがいに情報を交換して別れたわけだが、話の内容に全く着いていけなかったダリルはご愁傷さまとしか言いようがない。


 サンダーボルトの武装は新素材合金の装甲に対して、特殊弾であるビームパイル弾以外はほぼ無力だった。

 遠距離実弾系武装ではかなり厳しいようだ。

 回収した新素材合金に関しては解析が終了しており、リム自身もまったく知らない配合比率の合金であることが確定している。

 この手の配合比率は運営側がまったく公開しておらず、攻略ページのデータベースでもいまだに確定情報の出ていない合金が多々ある。

 今回手に入れたその装甲は、靭性と硬度に優れた耐実体弾装甲の一種だ。

 エネルギービームに対する耐性が若干低いようだが、耐熱エネルギー蒸散皮膜を表面にコーティングすることによってエネルギービームを減衰させて対策している。

 解析難度は高かったが、メックスミスとして長いこと過ごしたリムには問題がなかった。

 配合比率がわかった以上、素材を用意すれば自分でも簡単に作れる。

 だが、この装甲をサンダーボルトゼクスに搭載しても、ザリガニに対して優位に立てるわけではない。

 そも、向こうの開発した装甲材だ。利点欠点は完全に把握していると思った方が良いだろう。

「……やっぱり機体の強化は必須ね」

 難易度が上がるとするなら、ザリガニGSと同等以上の敵機体が現れるだろう。

 そうなると、ザリガニとほぼ相打ち以下だったサンダーボルトゼクスには荷が重いかもしれない。すくなくとも、この装甲に対抗しうる武装の搭載は絶対に必要だろう。

「とはいえ使える素材のランクも金額も制限があるからねえ」

 リムは小さく息を吐いた。

 コンペに参加する機体である以上、そのレギュレーションから逸脱する訳にはいかない。

 現在でも割りと限界ギリギリで作り上げている。

「……ベースデザインはそのままで、武装類をなんとかってところ……かな?」

 言いながら空間投影ウインドウを開く。

 ザリガニとの戦闘で全損したサンダーボルトゼクスだが、予備パーツは各部パッケージングされたものが機体3機分ほどある。

 このパッケージされたパーツの左右腕と頭部、胴体、下半身のパーツを接続して武装を施し、簡単な調整をすれば機体は再建される。

 修復自体はそれで完了だ。

 しかし、ただ単に修復しただけでは、あのザリガニGS以上の敵機が現れたら負けるのが確定するだろう。

 そのときに敗北によってコンペイベント継続不可能のフラグが建つ状況だったら、あらゆるいみで敗けだ。

 リムとしてはそれは避けたい。

「機体本体のカスタマイズは、素材ランクが上げられない以上大して出来ない。追加装備、追加武装の方を見直すのが良いわね」

 考えを纏めるように口に出しながら画面を操作し、サンダーボルトゼクスのオプションパーツリストを呼び出すリム。

 ズラッと並んだオプションパーツはそれなりに多い。

 サンダーボルトゼクスは、ジェネレータ出力に余裕のある機体だ。

 リムが試行錯誤して組み上げたジェネレーターは、生半可なメックスミスのものより数段高い性能を有している。

 この辺りは、無数に存在するパーツの組み合わせや、パーツ間の相性をしっかり把握していなければ作り上げられない。

 なにしろ、隣り合うパーツがわずかにずれるだけで影響を受けるのだ。

 これをほぼ最大効率で行えるメックスミスが、ゲーム内に何人いるか。

 リムの作るジェネレーターはそのくらい高い性能を誇る。

 とはいえ、コンペイベントのレギュレーションによって高位素材は全く使えない縛りがあるためサンダーボルトゼクスのジェネレーターは大人しめの性能に落ち着いている。

 それでも、コンペ参加者中最高性能と言って良いジェネレーターを作れるというのは大きなアドバンテージである。

 そのジェネレーター出力を背景に様々なオプションパーツを作った訳だが、これらを一旦脇に置いておき、リムは新たなオプションパーツ作成に入ろうとしているのだ。

「……重視するべきは対装甲貫徹力に優れた武装。それからあのキャノンに対抗しうる防御力」

 ザリガニのキャノンはかなり性能が高かった。実物は回収できなかったが、重防御型であるサンダーボルトゼクスに痛打を与えられるほどの武装だ。

 生半可な性能ではないであろう事は容易に想像がつく。

「……外付けの追加装甲にあの新装甲を使おうかしら? リアクティブアーマーでも良いのだけど」

 本体を弄りすぎれば生産コストが跳ね上がってしまう。それではコンペの制限に引っ掛かりかねない。

 なので後付け外装パーツ類や武装類でパワーアップさせるしかない。

「……リニアシリンダーのエネルギー消費分を考慮してエネルギー火器を排除していたけど、そうも言っていられないわね」

 呟きながら新たな武器の設計を始めるリム。

 その表情はとても楽しげで、どんなものを作ろうかと瞳を輝かせながら線を引いていく。

 コンペイベントで優勝するのが今回の目的ではあるが、それ以上に自分の機体を制限された中で、さらに改修強化するのが楽しくてしょうがないといった風だ。

 機械類を作り上げるのが大好きなリムであるがゆえに、すでに目的と手段が逆転しかねないところまで来ていた。

 こうしてリムは、ログイン制限時間を知らせるアラームで我に返ることになるまで寝食を忘れて作業に没頭していた。


 余談だが、いつまでも夕食を摂りに来ない娘に、リム……さゆの母の怒りに火が着き、小一時間ほど説教されたのはある意味当然の既決であったのだろう。


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