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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第二章 公式機体コンペ
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第83話 兄妹再会

 トライリバーのビルを眺めていたリムはひとつ息を吐き出した。

「んじゃ、妹さん……イザベルのところに行きましょうか?」

 そのまま音頭をとって歩き始めた。

 残りの面々もその後に続いた。

 フレッドの妹であるイザベルは、逃げる途中ではぐれたらしい。しかし、彼がリムたちに説明している際に連絡があったらようだ。

「ほかのプレイヤーに助けてもらったんでしたっけ?」

「……みたいね」

 あごに人差し指を当てながら訊ねてきたリリィにリムは頷いた。

 その顔は少々苦いものになっている。

 その理由は……。



『やっときたわねっ!!』



「……はあ」

 “MECHSHOPタイタン”の店先で仁王立ちになったワンピース姿の少女、マリアがあげた声に、リムは深く息を吐いた。

「待ちくたびれたわよ! リ……」

「にいさん!」

 胸を張って声をあげるマリアを遮るように、麻色の髪の女の子が店内から飛び出してきた。

 そのまま勢い良くフレッドに抱きつく。

「イザベル! 無事でよかった」

 妹を受け止めてたたら踏んだ兄は安堵の笑みを浮かべた。

 それを見てアレクとリリィが微笑む。

「……まさかあんたが保護してるなんてね? マリア」

「まあ成り行きでね。でも、今回のお邪魔イベントはなかなか大変そうよ?」

 マリアの言にうなずくリム。

 このユニークミッションは、公式コンペのみの限定ミッションだ。

 国ごとに異なるミッションが用意されているが、どれも難易度はかなり高い。

 第一回、二回ともに、ミッション達成に失敗してコンペ自体が中止になった国もあるくらいだ。

 なので、リムのようにコンペを最後まで開催させたいプレイヤーからは、“お邪魔イベント”の通称で厭がられている。

「……とにかく、持ってる情報の擦り合わせをしましょ。コンペを中止させないためにもね」

「わかったわ。これに関しては利害が一致するからね」

 リムの言葉にマリアが応じた。

 マリアとしても、リムと決着を着けてその上でマイスターの称号を得たいのだ。

 そんなふたりに声が掛かる。

「お嬢、機体の整備が終わりましたぜよ」

「……問題無い」

 店から顔を出したのはひょろりとしたのっぽの男と、小柄ながらがっしりした体躯の小男のコンビだ。

 そのふたりの言葉に、にマリアが満足げに頷いた。

「うむご苦労。んじゃ、ミーティングの準備しておいてちょうだい」

「ほいほい」

「……うむ」

 のっぽは飄々と、小男はむっつりした調子でうなずき、店内に戻っていった。

 二人を見送って、リムは小さく息を吐いた。

「……あの二人も、よくあなたに着いてくわよね」

「まあ人徳ってやつよ!」

 胸を張って答えるマリアに、リムは苦笑した。そこへアレク達がやって来る。

「リムさん、今の人たちは?」

「のっぽの方は高木、小柄な方はゴンさん。まあマリアの愛弟子って奴かしら?」

 ふたりとも正式サービス開始直後からのプレイヤーだが、なにを思ったのかマリアにくっついて回っている。いわば取り巻きだ。

 マリアは性格に癖があるため、長く付き合いのあるプレイヤーは少ないのだが、高木とゴンさんは懲りた様子もなくマリアに付き従っている。

 と、マリアが顔を赤らめた。

「なっ?! なに言ってんのよリム! あいつらは下僕よっ! パシリよっ!」

 慌てたように否定するマリアに、リムは呆れたように肩をすくめながらアレク達を見た。

「……まあ、こんな関係?」

『あー……』

 納得したようにうなずく新人二人に、マリアがさらにテンパる。

「な、なに納得してんのよリムの弟子! あいつらはそんなんじゃ……」

「なに騒いでんスか? お嬢。準備が……「ぎゃぁぁあ~~~~~~~~っ?!?!」ぶげらっ?!」

 突然顔を出した高木の顔面に、マリアの渾身のストレートが炸裂した。




 オフィス街の舗装路を、黒髪ポニーテールの女性が颯爽と歩く。

 道行くはビジネスマン風のNPCが多い中、彼女の纏う抜き身の刃のような気配は異質だった。

 ふと、足を止めて建物を見上げる。

「……ここか」

 黒髪の女性、アヤメは呟いてその建物へと足を向けた。

 向かうのはPMSC《民間軍事会社》として設定されている傭兵ギルドのオフィスである。

 正面玄関両脇には、武装した警備員が立哨しており、ものものしく感じられる。

 アヤメが玄関を潜ると、そこは清潔そうなホールであった。

 テーブルやソファーもいくつか用意されており、一応は企業体であるため、そのあたりは普通の企業ビルと変わらない。

 ホールにはNPC傭兵や、モブキャラ、プレイヤー傭兵がおり、アヤメは軽く見回してそれぞれの人数を確認してからカウンターへ向かった。

「……すまないが、最近入った依頼のリストを見せてもらえないか?」

「かしこまりました」

 アヤメにそう返したNPC受付嬢が機器を操作すると、カウンターに投影パネルが展開し、依頼のリストが表示された。

 その中で初見のミッションをチェックし、内容を確認しながら質問をしていく。

 MetallicSoulで傭兵に提示される依頼は、自動生成のものとプレイヤーによる依頼のもの、そして受注ミッションに関連付けされてポップアップしてくる依頼がある。

 アヤメはそのポップアップ依頼をチェックしていた。

「……これとこれ、それからこの依頼の詳細と情報を頼む」

「わかりました」

 アヤメは依頼を三つピックアップし、それを指定した。

 依頼を受けるかを判断するために、得られる触りの情報でしかないが、それでも情報には違いない。

 リストアップされた三つが記された投影パネルを手に、アヤメは空いているソファーへと足を向けた。

「……ふむ」

 チェックした三つの依頼は、初めて見るF&Nからの依頼とハーキュリーズからの依頼。そして、NPCグループからの依頼だ。

「……F&Nは潜入破壊工作任務、ハーキュリーズは護衛任務、NPCは攻略支援任務か」

 アヤメはあごに手をやりながら思案する。

 フレッドの話からF&Nとハーキュリーズの初見依頼をピックアップしたのだが、NPCの攻略支援依頼というのも初めて眼にしたためチェックした。

 攻略支援は拠点などの攻略を行うチームの戦力水増し策だ。

 しかし、プレイヤーからの依頼ならともかく、NPCからの依頼というのはアヤメでも初耳だ。

「攻略目標が提示されていないが、三人ほど受けているな。さて……」

 アヤメは眼を細め、受注しているPC名を確認した。

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