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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第二章 公式機体コンペ
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第82話 調査開始。

「……リムさん」

「台無しですよ……」

 そんなベテラン四人を見やってリリィが半眼になり、アレクが肩を落とした。

 それを聞いてリムとアヤメはバツが悪そうにする。

「あや、ゴメン」

「ム、スマン」

 新人二人にとっては初めての大型イベント、初めてのイベント限定ミッションだ。

 もともと彼らに楽しんでもらうつもりだったのに、メタ会話で雰囲気を損ねては本末転倒である。

「んじゃリムはアレク達と聞き込みな。俺とリアノンも別口で調べてく」

「んにゃ?!」

 不意に放たれたアサクラの言葉に、リムが慌ててそちらを見た。リアル幼馴染みのアバターが、人の悪そうな笑みを浮かべていた。

「二人にイベントの醍醐味を味わってもらいたいんだろ? まあ頑張れよ」

「ぅぐう……」

 思っていたことを言い当てられ、リムは悔しそうに唸る。

 こういうときに腐るほど縁深い幼馴染みと言うのは厄介である。

 リムがそっと新人二人を見れば、ふたりとも期待に満ちた目で見つめてきていた。

 リム自身は機械イジリが出来れば人付き合いは最低限で良いと思っている口だが、生来の人の良さと面倒見の良さをもった少女だ。

 こんな二人を前に、断るという選択肢はなかった。

「……わかった。じゃあ、アレク君達と私はフレッドと一緒に情報を集めに行きましょ。アヤメはどうする?」

 頷いてからリムがアヤメに水を向けると、彼女は形の良い顎に手を当てながら軽く思案した。

「ふむそうだな……私も別口で調べてみよう。傭兵の知り合いやギルドで話が聞けるかもしれないしな」

 傭兵にも独自の組合がある。

 他プレイヤーが依頼を出したり、公式依頼を受注するのに使うのだが、公的な力はかなり小さく、支配企業に所属するプレイヤーとは提供されるサービスに雲泥の差がある。

 しかし、傭兵ギルドには独自のネットワークがあるため、企業所属プレイヤーが手に入れられない情報が得られる。

 アヤメはそちらを調べると言ってくれているのだ。

 しかしリムは眉を寄せた。

「良いの? わりとお金が掛かるって聞いてるけど……」

「なに、機体の修理費に比べれば微々たるものだ。それに愛刀の修復に力を尽くしてくれた恩に比べればどうというものではないよ」

 だから気にするなというアヤメ。

 だが、リムは首を振った。

「いいえ、今はチームでミッションを受けているんだから、調査費用はきちんと計上しましょ。じゃないと、私もアレク君達も素直に楽しめないわ」

「……それも道理だな。分かった」

 リムの言い分に素直にうなずいて、アヤメは小さく笑った。




 情報収集のため、リムたちは三手に別れた。

 チーム分けは、

 フレッドと共にメインクエストへ挑戦するリムとアレク、リリィにファムとメイのメイドロイドコンビを加えたチーム。


 そしてアサクラ、リアノンのプレイヤーキャラ聞き込みチーム。


 最後にアヤメが単独で傭兵ギルドへと聞き込みに向かう。


 リムのチームが大所帯だが、メインクエスト進行という重要な役割を当てられており、かつメイドロイド達による護衛付きだ。

 重要NPCであるフレッドの安全を考えても、この編成が最適であろう。

 そしてリムたちは今、フレッドに話を聞きながらトライリバー社のオフィスへと向かっていた。

「……まあ、これですんなりいくとは思えないけど」


 聞けばフレッドの父は外国へ行っているのだとか。

 支配企業同士の外交、そして商談があるらしい。

 公式コンペへの次期主力機出場だけではなく、別の手も打っているのだろう。

 とはいえ、MetallicSoul世界の政治は簡単なものではない。

 政治中枢であると同時に企業でもある支配企業同士の話し合いなど、リムには到底想像もつかない。

 なにしろ後ろ手にナイフを持ちながら右手で握手し、腹の内を探りながらもフェイクに駆けるなど、狸と狐の化かし合いどころか、魑魅魍魎百鬼夜行が絡み合いながら蛇行しているようなものである。

 リムにしてみれば、正直手を出したくはない世界だ。

 そんな丁々発止真っ最中な状態のフレッドの父親に、そうそう連絡も着くはずもない。

 仮に連絡が着いても他国の支配企業に弱味を握られかねない。

 それは支配企業側としては悪手だ。

 だが、事は急を要する。

 そこでリムたちは直接トライリバー社に事情説明しようとやってきたのだ。




 結論から言えば失敗だった。

 取り次いでもらえもせず、けんもほろろに追い返されてしまった。

 リリィは憤懣やる方なしといった風に柳眉を逆立てているが、リムは当然だろうと内心思っていた。

 なにしろ物証が全く無い。

 あるのは子供の証言だけだ。

 それも、下位企業CEOの息子だ。

 内容を信じてもらえず、リムたちはすぐさま警備員につまみ出されてしまったのだ。

 予想通りの展開に、リムは頭を掻きながら嘆息した。

「……やっぱり、フレッドのお父さん、トーマス氏に直接話すのが良いのかもね」


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