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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第二章 公式機体コンペ
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第80話 突発クエスト


「……F&Nのセキュリティ?」

 告げられた黒服の所属に、リムは眉根を寄せた。

 F&N社は、共和国支配企業のひとつだ。

 支配企業は、国毎に三~八社ほど設定されており、それらにも様々な繋がりが設定されている。

 共和国は五社設定されているが、F&Nは三番手であったとメックスミス娘は記憶している。

 そのセキュリティ関係者が出張ってくるとなれば、ただ事ではないはずのは明白だ。

 だが。

「……この子、何をやらかしたのかしら?」

 リムはイベント中であることも踏まえ、なんらかのクエストに引っ掛かったと判断し、情報を引き出そうと試みた。

 証明カードを手にした黒服の一人が前へと出る。

「……わが社のデータバンクに不正アクセスし、情報を盗み出した者がいる。その少年には事情を聴こうと……」

 男の言葉にリムはますます眉間のシワを深くした。


 ちらと少年を見下ろせば、彼は青ざめ、怯えていた。

 リムはそっと彼の肩を抱き寄せた。

 驚き、見上げてくる少年に小さく笑う。

 そして黒服を見やる。

「……人違いなんじゃないかしら。そんなことをするような子には見えないけど?」

「それを確認するための事情聴取です」

 男はリムの言を一蹴する。

 と、リムと少年の前に影が立ちはだかった。

 翻るポニーテール。

 ファムだ。

 その体が三度の衝撃に揺れる。


 前の黒服をブラインドにした後ろの黒服が発砲したのだ。

「ひいっ?!」

 メイド服が引き裂かれ、鮮血が舞うのを想像してか、少年が引きつったような悲鳴を挙げた。

 そして、黒服が笑みを浮かべた。


 直後に言葉を失う。

 メイドは傷ひとつ無くたたずんでいた。

「バ、バカなっ?! 確実に当たったはずだっ!?」

「くそっ!」

 発砲した黒服がおののくように叫んだ前で、身分証を投げ捨てたもうひとりも素早く銃を懐から抜いて素早く発砲した。

 サイレンサー付きのそれは、銃声を響かせること無く三発の鉛弾を吐き出す。

 それが再びファムに命中する。


 だがそれは、メイド姿のドロイドを貫くどころかその衣装に穴をあけることすら出来ず、ただ彼女のポニーテールを揺らす程度の衝撃にしかならなかった。

 黒服や少年は知らないことだが、そもそもこのメイドロイドの駆体は、コンバットメイルと呼ばれる個人用パワーアシスト付き装甲外骨格甲冑と、パワードメイルという戦闘用重動力甲冑パワードスーツを元にしている。

 駆体表面そのものがコンバットメイルの装甲をある程度、加工流用しており、その防御力は防弾ボディアーマーなど足元にも及ばない。

 さらに着ているメイド服は防弾防刃繊維シートなどを、カーボンナノファイバー製の糸などで縫ったという、訳の分からないレベルの防弾防刃メイド服である。

 これらの組み合わさった防御耐久性は、軽パワードメイルとほぼ同等であり、拳銃弾程度でどうにかなるような代物ではない。

「……」

 そんなことを知らない黒服たちはおろか、少年もあっけにとられた。

 その隙を衝いてツインテールをなびかせた影が、ファムの右脇を低い軌道で駆け抜けた。

 もうひとりのメイドロイド、メイリィだ。

「!」

 手前の黒服が素早く反応して銃をそちらへ向けて発砲。

 しかし、左腕で素早く顔をかばったドロイドに弾丸は空しく弾かれてしまう。

 メイリィの右腕が振り回され、掌底が黒服の脇腹に叩き込まれた。


 直後に鋭い閃光が溢れて乾いた破裂音が響き、黒服が崩れ落ちた。

 メイリィの手首から覗くのは、二本の電極。

 腕の空きスペースに仕込んだスタンガンだ。

「なっ?! くそっ!」

 もう一人は驚きつつも拳銃を構え……顔面に衝撃を受けて仰向けに吹っ飛んでいた。

 彼のサングラスを砕いて昏倒させたそれは、ロングスパナだった。

「……スットラーイク」

 路地裏に小さく響いたのはリムのそんな言葉。

 見れば彼女はパワーグローブを着けた右腕を振り抜いた姿勢であった。

 ファムとメイリィの作ってくれた隙に、アイテムボックスから愛用のパワーグローブとロングスパナを呼び出したリムが、これを投てきしたのだった。




「ふう……」

 愛用のロングスパナを回収したリムは、黒服二人をアイテムボックスから引っ張り出したワイヤーで縛り上げ、ひと息ついた。

「まあすぐに移動しないとまずいでしょうけど……ファム、メイ、被害は?」

『駆体の装甲にわずかなへこみが出来ました。後はノープロブレムです』

『手足のアクチュエーターにふかがかかってそんもーしてまーす』

 ふたりの被害報告を聞いて頷く。

 元が元だけに体内は空間だらけで軽いメイドロイドだが、激しい機動をしたメイリィの方は関節にダメージがあるようだった。

「まあ、死亡判定受けずに済んだし、由としましょうか。それにしてもリトさんのプログラムは優秀ね」

 駆体の挙動プログラムは知り合いのプログラマープレイヤーに頼んだものだ。

 中身を完全に把握しているわけではないが、ファムとメイリィの動きはなかなかにスムーズかつスピーディーで頼りになるものだった。

「後続が来ないうちに移動しましょうか?」

「は、はい」

 リムはNPCの少年を促して、自分の城へと移動し始めた。

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