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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第二章 公式機体コンペ
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第56話 考え中……。


「う~ん……」

 目の前の機械をカチャカチャと弄りながら、作業用のツナギを上半身はだけたポニーテールの少女が思案げに唸る。

 スパナでボルトを締め、ケーブルを繋ぎカバーをする。

 スイッチをONにするとサーボモーターが駆動して、円筒状パーツを二つ繋げた機械が動作した。

 繋げた部位がゆっくり折れ曲がり、先端に五つの細い多関節円筒を備えた部位が持ち上がってきた。

「……動かしてみて?」

『イエス』

 リムの指示に答える電子音。

 そして、細い円筒がゆっくりと曲がった。

 これは、



  “手”



 だ。

 さほど大きくはない。

 せいぜいリムの手と変わらない大きさだ。

「うん良い調子だね。そのまま握ったり開いたり……」

 リムの指示に従い、人造の五指がゆっくり曲げ伸ばしを繰り返した。

「うまいうまい。指先の感圧センサーは問題無い?」

『ノープロブレム』

 電子音が応えてリムは満足げに頷いた。

「よしよし。ゆっくりとね? 調整がまだまだだから、力を入れすぎると壊れちゃうし」

『OK』

 あやすように、教え諭すようにしてリムが指示を出す。

 そして、逐一関節部をチェックし、スキルで問題がないことを確認してから次の作業へ。

「……これはいったい?」

 と思ったところで、背後から女性の声が聞こえた。

 ん? とばかりにリムが振り返れば、そこには艶やかな黒髪の女性が目を丸くして立っていた。

「アヤメさん?」

「あ、すまない。声を掛けたんだが返事が無かったのでな」

 リムに呼ばれ、アヤメはバツが悪そうに返した。

 とはいえ、リムが作業をしているのは店舗ガレージの片隅だ。

 リムとしてはガレージはお客さんが気楽に入ってこれるよう入り口を解放してある。

 だから別段問題はない。

 というスタンスだ。

 ガレージに並べてある武器やパーツは、トレード機能を用いるかオーナーのリムの許可が無ければ持ち出すことは出来ないようになっている。

 ガレージ内で手に取ることはできるが、オーナー以外が許可無く店舗範囲から持ち出そうとしても、範囲内にアイテムが落ちてしまうのだ。

 MetallicSoulは、システム的にモノを盗む行為はやりにくい。

 ミリタリー的な戦闘が主体だからだ。

 戦闘中に敵機から奪取、あるいは味方から借りる事は可能だ。

 敵機からの奪取には制限は無いので、盗むならこれがメインだ。

 味方からの貸与はクエスト期間中か、もしくはデフォルトで一時間。この時間は持ち主が事前に貸与期間を設定することもできる。

 この時間を過ぎれば貸与品は持ち主のアイテムボックスに待機状態で即座に返却される。

 また貸与期間中に売却、またはトレードしても、返却となり貸与品はその場から消え失せ、元の持ち主のアイテムボックスへ移動。売却者はお金を得られないし、トレード相手は貸与品を得られないようになっている。

 このアイテムボックスは他のVRMMOに比べて少々扱いづらい。

 アイテムボックス内のアイテムは、自身のガレージ、あるいはレンタルガレージ内でなければ中身を取り出せないようになっているのだ。

 これは、アイテムがGS用の武器やパーツのようにかなり大きい場合があるせいだ。

 そのくせ装備重量や所持可能重量は厳しく制限されている。

 そのためプレイヤーたちは即座に使うアイテムの取捨選択に、常に頭を悩ませている。

 レンタルガレージは企業国家所属ならタダで借りられる。

 それ以外に小規模な個人所有向けのマイガレージやギルド向けの大型ガレージを取得するクエストもあるが面倒には違いない。

 そんな仕様ゆえに、店舗持ちプレイヤーは他のプレイヤーの出入りに対し、意外と緩い設定にしていることが多い。

「いつもの店番ドロイドも見当たらんでな」

「あー、それならちょっとテスト手伝ってもらってるから」

 リムが返すとアヤメは、ふむと腕を組んだ。

「……いささか不用心ではないかな? 同じ国家所属なら攻撃されないとはいえ、私のような傭兵は場合によっては攻撃できる。リムをこのまま切り捨てることも可能だ」

 アヤメの言葉にリムは軽く息を飲んだ。

「……一応、警戒用ドロイドは配置してあるこど……そうだね。気を付ける」

 軽く思案してそう答えると、アヤメは満足気にうなずいた。そして、リムの背後にあるものへ目をやる。

「して、その面妖な物体は……?」

「これ?」

 アヤメの問いに、リムは先程までイジっていた機械を見やった。


 それはクレーンに吊るされた、滑らかな曲線で構成された縦に長い直方体の箱形機械だ。

 その左右上端から、真ん中に関節部のある円筒パーツが取り付けられていた。その円筒パーツの先にはまた別のパーツがあり、そこから複数の関節がある細い筒状パーツが五本伸びている。

 本体らしき箱形機械の下側からは剥き出しの機械フレームが二本、だらりと垂れ下がり、上側には概ね卵形の機械パーツが載っていた。


「ちょっと考え事していてね。わたし、機械弄りしてる方が落ち着くから……パワードメイルを分解したり組み立てたりしていたんだけど、パーツを見ていて出来そうかな? って」

 リムの言にアヤメは困惑した顔になった。

 どこから突っ込むべきだろうか?

「……なにがだ?」

 とりあえず訊ねる。

 と、リムは「あれ」と指差した。

 アヤメは何かと思ってそちらへ顔を巡らし、固まった。

 なぜなら、店舗事務所のドアを開けて、メイド服姿の人型機械アンドロイドが姿を表したからだ。

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