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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第50話 決着



    ☆mission complete!!☆



 小さなファンファーレと共に、そんな文字がアレクの視界に踊った。

 空中に投影されたプレートに、resultが表示され、アレクは目をしばたたかせる。

「え? あ……」

 それを見てやっと、彼はクエストが完了したことに気づいて、脱力するようにシートにもたれ掛かった。

「……ふ」

 少年の体が、小さく震える。

「……ふ、ふふ」

 口元から、小さく声が漏れる。

「……やった」

 歓喜が、体を支配する。

「やった! やったぞぉっ!!』

 アレクはコクピットの中で、思いきり拳を突き上げた。

 その歓喜の絶叫は、スピーカーを通して外にも響いていた。

『……もう、子供なんだから』

 それを聞いていたリリィが呆れたように、しかし嬉しそうに笑う。

 リアノンがひとつ、息を吐き、ランティーナがクスクス笑った。

 レオンは腕を組んで小さく笑みを浮かべ、アサクラがスッキリしたような顔でシートに体重を掛けた。

 そして。

『さあっ! 剥ぎ取りタイムよっ!』

 残骸《お宝》の山を前にしたリムは、全力で宣言した。

 ぶれない娘である。





「ふ、ふふふ……」

 十体のファクトリードロイドと、さらに同数のメンテナンスドロイドを引き連れて、残骸《お宝》の山を見上げるリムはちょっと近寄りがたいオーラを発していた。

 アレクは協力してくれたお礼をしようとしたのだが、その気配に気圧され近づけずにいた。

「ああなるとリムはダメだ。一通り終わるまでほっとくしかない」

「アサクラさん」

 不意に声を掛けられて、アレクはそちらを振り向いた。

 それを見たアサクラが、よお、とばかりに右手を挙げた。

「お疲れ」

「アサクラさんも、お疲れさまです」

 軽い調子で言うアサクラに、アレクは丁寧に頭を下げた。

 そんな真面目な少年の姿に、アサクラは苦笑いする。

「真面目だな?」

「そう……ですか?」

 顔をあげたアレクにアサクラが言うと、少年はキョトンとした顔になった。

 そしてリムの方を見る。

「早めにお礼を言いたかったんですけどね」

「ま、落ち着いたらだな。ああなるとリムは周りが見えなくなるから」

 邪魔をすると殴られるぜ? と告げたアサクラに、アレクはまさかと声を挙げ掛ける。

 が、嬉々として残骸ジャンクの山を漁るリムの姿に、言葉を飲み込まざる終えなかった。

「とりあえず、ベース制圧時にやっといた方が良いことを教えてやるよ。こっちだ」

 アサクラの言葉に、ハイと答えたアレクは、楽しそうに装甲板をひっぺがしているメックスミスの女性の後ろ姿に、すこし後ろ髪を引かれながら彼とベースの指令センターへと向かった。




 センターでは、すでにリアノンがデータの抜き出しに掛かっていた。

 「ハッキング」や「オペレーティング」などコンピュータを扱うスキルのアシストのおかげで、細々とした操作やパスワード看破など面倒な作業は一切無く、メインサーバに隠されていた機密情報を閲覧していく。

 となりで見学しているリリィは興味深げな顔で作業を見つめていた。

「どうだ? リアノン」

 そこへアレクを伴ったアサクラが現れた。

 リリィがそちらを向き、リアノンは片手を挙げてヒラヒラさせて応じる。

 その様子に問題は無いようだと感じて、アサクラは無遠慮にリアノンの背後に近づいて、肩口からモニターを覗き込んだ。

「~♪ Sランクの機密情報か。ボーナス期待できそうだな」

「そうだねい。まあ、このまま提出しても換金されるのと変わらないから、コピーとって自分でも解析するつもり」

 そう返したリアノンは楽しげだ。

 コンピュータ内の情報は、「コンピュータ」や「情報解析」が無い限りプレイヤーは内容を知ることが出来ない。

 これらのスキルが無ければ、支配企業の窓口に提出してお金をもらう換金アイテムに近い扱いになる。

 ジャンクパーツに対するリムの解析、鑑定と同じである。

 これらの情報は、きちんと内容を把握するためのスキルさえ揃っていれば、様々な情報を得ることが出きるし、それが未知のクエストのトリガーになっている事も多い。

 なのでこういった情報を専門に扱う解析屋、情報屋のようなプレイヤーも居るほどだ。

「……ベースの規模から言ってもSランクの大規模ベースだしねい。リザルトも中々だったでしょ?」

 モニターから目を離さずに告げるリアノンに、アサクラは確かにと頷いた。

「まあ、この基地を制圧した以上、パワーバランスに影響は出るだろうねい」

「そうなんですか?」

 呟くリアノンに、リリィが訊ねた。そこで初めてリアノンはモニターから目を放し、新人ライダーへ視線を向けた。

「そ。MetallicSoulは、企業が支配する国家同士のパワーバランスによってイベントのトリガーが解放されるようになっているからね。この規模のベースを制圧したのは決して小さくない」

「……国同士で何らかのやりとりが発生する……って事ですか?」

 アレクが興味深そうに話に参加し始めた。

 どうやら彼はこういう話が好きなようだ。

 アレクの問いに、リアノンは頷いた。

「そうね。基地の返還を条件に、有利な交渉を引き出すとか、後は合衆連邦の技術が一部解禁になる。彼らが有する資源帯の素材流通が共和国でもしやすくなるとかね。戦争イベントになる場合もあるけど……」

「戦争……」

 リアノンの説明に、アレクは神妙な顔つきになった。それを見てリアノンは苦笑する。

「ゲームよ、ゲーム。思い詰めないの」

「はい……」

 軽い調子で言うリアノンに、しかしアレクの表情は晴れない。

 そんな彼の腕に、細い腕が絡み付いた。

「アレク」

「リリィ?」

 リリィだ。

 幼馴染みが心配そうに見つめてくることに、アレクは軽く頭を振った。

「……大丈夫だよリリィ。うん、ゲームなんだし楽しまないとね」

 笑いながら言うアレクだが、リリィは不安そうな顔のままだった。

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