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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第45話 戦場のMechSmith


「……」

 目の前で起きている事を見て、アヤメは立ち尽くしていた。

 彼女の前で、ドロイド達がコンテナからパーツを運び、モスグリーンのGSに取り付いて作業をしている。

 機体を修復しているのだ。

 機体装甲の修復なら分かる。

 MetallicSoulの一般的な感覚として、戦場での機体修理と言えばアーマーリペアによる装甲の回復を指すからだ。

 しかし、彼女の目の前で行われているのは、単純な装甲回復ではない。

 装甲の一部を外し、フレームや関節を修理していくそれは、普通なら工場でやるべき作業だ。

 ドロイドもそうである。

 耐久力など皆無に等しいファクトリードロイドやメンテナンスドロイドを、戦場に持ち込むプレイヤーなど聞いたこともなかった。

 さらに驚くべきはその修復速度だ。見た目にも破損していると、アヤメにも分かるパーツが、みるみる内に直っていく。

 必要な部品は周りの残骸からひっぺがし、壊れた部品と交換。

 それが瞬きする間に行われる。

 リムは機体製作をメインに据えたメックスミスだが、スキルには[応急修理][インスタントリペア][作業効率化][高速給弾][クイックサプライ]などのスキルも備えている。

 これらは、リム自身がNPC機体などからジャンクパーツ素材を回収するため、戦場で戦闘を継続できるように取得したスキルだ。

 また、レベルアップによるステータスの振り分けもDEX(器用さ)、INT(賢さ)といったステータスへと割り振られている。

 キャラクターステータスの影響がゲームに出にくい仕様とはいえ、MetallicSoulのサービス開始からゲームを続けているリムのレベルは上限であるレベル99には届かないが、90を越えている。

 メックスミス系キャラクターは、メックライダー系キャラクターに比べて非常に上がりにくい。

 なにしろ戦闘をする方が経験値の入りは格段に良いのだから。しかしながらメックスミスを専業でやっていると製作に必要なスキルを取得するだけでほとんどのスキル枠を消費してしまう。

 メックスミスの取得できる戦闘系スキルもあるにはあるが、専業メックスミス達には手が出しにくい。

 必然的にスキルによる戦闘への補助効果を得ることができず、メックスミスの戦闘能力は同レベル帯のメックライダーの半分以下にしかならない。

 従って、リムのようなレベル90オーバーの専業メックスミスというのはサービス開始初期からメックスミスをしているような変わり者ばかりで非常に少ないのだ。

 そんなメックスミスの中でもリムはさらに異端だろう。

 なにしろ、戦場のど真ん中にドロイドを連れてきて機体を修理するなど普通はやらない。

 まずドロイドは、工場やガレージでメックスミスの手足となり生産行為を助ける為のアシスタント兼労働力だ。

 GSの武器どころか、キャラクター用のハンドガンにすら耐えられない。

 しかも一体当り10,000cblほどの値段がするものだ。

 使い捨てるようなものでもない。

 なので、ドロイドを戦場に連れてくるのは、ドロイドをペット扱いするような酔狂な人間くらいだ。それだって一体、二体が関の山だ。

 しかしリムは違う。

 アヤメから見える範囲でもドロイドが十体以上、機体と残骸を行き来しながら修復作業しているようだ。

 流れ弾一発で数体まとめて破壊されかねない場所に高価なドロイドが十体以上。

 普通やらない。

 そして、アーマーリペアによる装甲修復は速効性があるのだが、リムがやっているような応急とはいえ機体修理に属する行動は、機体を全く動かせないため、主戦場から離れた後方の安全地帯でやるべき行動だ。

 間違っても目の前で撃ち合っているのを見ながらやるものではない。

 だが、リムは時間が非常に掛かるはずの修理作業をほとんど最大効率、最高速度で行える。

 それが、戦場のど真ん中での機体修理という荒業を可能としているのだ。

「よし、パフォーマンス70%まで回復っと」

 修復状態を確認して、リムはうなずいた。

 機体能力が七割程度まで回復すれば、戦闘可能だ。

「みんなありがと♪ 危ないから隠れてなさい」

 モニターの向こうで見上げてくるドロイド達にそう指示して、リムはサンダーボルトを前進させた。

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