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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第42話 浮遊戦車《チャリオット》



 拠点防衛型GS浮遊戦車。



 拠点防衛用、あるいは攻略用に配備可能な大型兵器だ。

 戦車とはいうが、通常の戦車など歯牙にもかけない大きさがある。

 なにせ目の前の浮遊戦車は全長が約百メートル、全幅約六十メートルあり、全高も四十メートル近くある。

 火力、防御力、耐久力も軒並み高く、ファンタジー系MMORPGの巨大レイドボスといった感じだ。

 そしてこの戦車には、GSごと乗り込める。

 そのため、この浮遊戦車を扱うことを好むプレイヤーを、中世の戦車チャリオットになぞらえて“チャリオット使い”と呼ぶのだ。

『ずいぶん派手にやってくれたじゃねーか。え?』

 浮遊戦車から拡声器を通して声が響いた。

 その声に、アヤメは浮遊戦車を仰ぎ見た。

「……シュベール殿」

『いよう傭兵ねーちゃん。その様子じゃ負けたみたいだな?』

 浮遊戦車の操縦者は、少し楽しげに問うた。

 対してアヤメは仏頂面で頭を下げる。

「面目無い」

『まあいいさ。これからそいつら“掃除”するからよ。巻き込まれたくなけりゃあ逃げとけよ?』

 言うが早いか、装甲コンテナが口を開け、ミサイルの群れを吐き出した。

「なっ?!」

 驚き声をあげるアヤメを後目に戦車の後ろの方からも天に向かって飛翔体が射出される。

 MetallicSoulは同じ所属の相手をPKは出来ない仕様だ。

 だが、味方撃ち《フレンドリーファイア》は起こりうる。

 ダメージは本来より小さいし、撃破判定を与えることは出来ないが、受ける衝撃などはそのままだ。

 さらに建物などの地形破損によって生じる副次攻撃判定は、GSなどに対しては大きなダメージになりにくいが、機体から降りたライダーがまともにそれを受ければ死亡は有りうる。

 ゲームシステム的な矛盾点を衝いたPK方法のひとつだ。

 アレクたち新人は知らないだろうが、リムたちのような古参プレイヤーなら誰もが知っている穴だ。

 普通なら味方の行動阻害となる味方撃ちや、脱出した仲間を死なせないために気を付けるべき注意事項のようなものだが、意図的にやればPKを可能とする。ある種まっとうなプレイヤーからタブー視されているそれを、このシュベールと言うライダーは躊躇なく実行したのだ。

「くっ!」

 アヤメはとっさに愛機へ駆け寄った。

 次の瞬間、救出クエストのGSに降り注ぐミサイルの雨。

 ミサイルの総数は数えるのも面倒なくらいだった。

 完全に面を制圧する飽和攻撃だ。

 アラクネアがデコイを射出しながらジグザグ移動しつつガトリングガンを乱射する。

 ブラッドストームも残った三丁のSMGを撃ちながら全力回避。

 ブルーナイトは盾を掲げてブーストしながらアサルトライフルを撃ちまくり、ボクサーは両腕を交差させながら滑走しつつガトリングガンを撃つ。

 重量級のゴルディレオンも必死で避ける。

 それらをすべて飲み込むように破壊の嵐が戦場を覆った。

 爆炎が晴れると、シュベールの浮遊戦車が、ズタボロになったGSたちを弊猊するかのように悠然と進んできた。

 その中枢装甲カバーに88ミリ徹甲弾が命中し、逢えなく弾かれた。

 唯一遠方に居たため破壊の嵐から逃れたリアノンの狙撃だ。

『ちっ、狙撃屋か』

 舌打ちしたシュベールが浮遊戦車をそちらへ向け、主砲を撃つ。

 狙撃の為に片膝を着いて関節をロックしていたリアノンの機体はそれを避けられず、砲弾をまともに受けて後ろに吹き飛んだ。


 圧倒的。


 そんな言葉がアレクの脳裏をよぎる。


 そんな中で、モスグリーンの機体だけが不可思議な行動をとっていた。

 膝を着いた姿勢のままだったミフネの背後に仁王立ちとなり、アヤメを守ったのだ。

「お前……なぜ?」

 死なないとはいえ、ひどいことになるのは明白だったアヤメが呆然と呟いた。

 モスグリーンの装甲がボロボロになったサンダーボルトは、ゆっくりと防御姿勢を解いて浮遊戦車を見上げた。

 そして、叫ぶ。

『何してくれてんのよっ! ショーグンの機体がこれ以上壊れたらどうすんのよっ!』



 リムは全力で平常運転中だった。

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