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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第38話 戦鎚と青騎士。そして……


『くそっまさ吉たちはやられちまったか!』

『観念しろっ!』

 吐き捨てるように言うウォーハンマーに、アレクが叫んだ。

 対する返答はグレネードの弾だ。

『うるせえよ。ビギナー!』

 ウォーハンマーは滑走しながらアレクのブルーナイトへ突進する。

 それをアサルトライフルで迎撃するが、ウォーハンマーは腰スラスタでサイドキックして右へ避けながら前進してくる。

 ブルーナイトはさらに射撃しようとするが。

『あっ?!』

 掲げたシールドが邪魔でアサルトライフルを射てない。

 アレクは慌てて機体をそちらへ向ける。

 だが、ベテランプレイヤーであるウォーハンマー乗りは、その隙を衝いてきた。

『遅いぜっ! ビギナーッ!』

 右肩と右腰のスラスタを一瞬噴かしてクイックターン。さらに左右腰のスラスターを噴射してブルーナイトへ突撃するウォーハンマー。重量級ながら近距離強襲機に恥じない機動性と突進力を発揮してブルーナイトとの間合いを侵略する。

『わっ?!』

 いきなりドアップになったウォーハンマーに、アレクは驚いて声をあげた。

 それを上回る甲高い金属音が響き渡った。

 ウォーハンマーが勢いに任せて体当たりを仕掛けてきたのだ。

 その名に恥じない戦鎚のごとき一撃は、ブルーナイトのシールドをひしゃげさせ、その左腕フレームを歪ませた。

『ぐあっ?!』

 重量級の衝撃が機体を貫いていく。それをまともに浴びて、アレクは自分の体が軋むのを感じた。

 無理もない。

 コクピットを守っていた装甲はすでに無いのだから。

 しかし、ブルーナイトは転倒しなかった。足部バランサーが展開してブレーキを掛けつつ機体の安定を保つ。

 コンクリートの地面を二本のレールのように削り砕きながらも、数メートル交替しただけで済んだ。

 だが、それだけの衝撃を受けたライダーは、さすがに状態異常を起こしてしまう。

 わずか一秒のスタン。

 しかし、その一秒が明暗を分ける。

 アレクが復帰した瞬間にはすでにグレネードガンが突きつけられていた。

『あ……』

『よく粘ったが、終わりだ』

 呆けるアレクにウォーハンマーが宣言して、グレネードガンのトリガーを……引こうとした瞬間。



『どっっせえええぇぇぇぇええいいっっ!!!!』



 掛け声と共に、ウォーハンマーの平っべったい頭部の横っ面に、鉄拳が叩き込まれた。

 頭部が半ばまで胴体に埋まっているようなウォーハンマーだが、それが首から破断して吹っ飛び、胴体も勢いに押されて横倒しになった。

「な、なにが……?」

 突然のことに、アレクはあっけにとられた。

 が、ウォーハンマーを殴り倒した機体を見て目を見開く。

「ボ、ボクサー……」


 GST-14G ボクサー。

「ゆ、由利ちゃん……?」

『ネトゲで実名呼びしないでって言ったでしょ? アレク』

 思わず呟いてしまった幼馴染みの本名に、ボクサーからはいつものセリフが返ってきた。

 それだけで、アレクは胸が詰まる思いだった。

『心配かけたわね? この通り、ボクサーと一緒に脱出してきたわよ』

「うん……うん……!」

 リアルでは毎日のように聞いていたはずなリリィの声だが、アレクはずいぶんと久しぶりに聞いたような気がした。

『もう、泣いてるの? アレク』

「うん……うん……」

 苦笑したらしいリリィの声に、アレクはうなずくことしか出来ない。

 ボクサーが上体を起こしてブルーナイトに体を向けた。

『ほら』

 ボクサーの格闘向けのゴツいマニュピレーターがブルーナイトに差し出された。

 アレクは機体を操作してその手を取ると、ボクサーに引っ張りあげられるようにして青騎士は立ち上がった。

 と。

『人を無視してラブコメってんじゃねーっ!』

 雄叫びと共に、頭と左腕の無いウォーハンマーがスラスタを噴かした。

 それに気付いて、アレクとリリィは機体を離れさせながら迎え撃つ。

 ウォーハンマーは突進しながらグレネードガンのトリガーを引き、榴弾を撃ち放った。

 それをブルーナイトが前に出ながらアサルトライフルの防護板で受け止めた。

 炸裂。

 爆炎が青い機体を包み込む。

 直後に爆炎がさらに破裂して、ボクサーが飛び出してきた。

『……にぃっ?!』

 驚くウォーハンマー。互いにスラスタを使用しているため、あっという間に二機は肉薄せんほどに接近し、ぶつかる。

 足の止まったウォーハンマーが慌てて後ろへ下がろうとするのと反対に、ボクサーが素早く踏み込んで左右の拳でワンツーをボディへ放つ。

 機体を二つの衝撃が揺らし、ウォーハンマーはバランスを崩してたたら踏んだ。

 そこへ掬い上げるような右フック。

 ウォーハンマーはフルスイングしたハンマーで殴られたように派手な金属音を響かせ、胴体装甲をひしゃげさせた。

 ボクサーの拳撃の威力に、ウォーハンマーは強制後退させられる。

 そこへブルーナイトが飛び込んできた。

 手にしたコンバットナイフをウォーハンマーに突き出し、突進する。

 ボクサーの打撃で一時スタンしていたライダーはまともに機体を動かせぬままそれを胴体に受けた。

 それが致命となって、ウォーハンマーはそのまま崩れ落ちた。

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