第30話 砲台排除。そして……
火柱をあげて爆発した砲台を背に、ブラッドストームが着地した。
ついでゴルディレオンとブルーナイトも砲台の脇を抜けて合流する。
と、建物の影から装甲車が姿を表し、機関砲を乱射してきた。
これをアレクのブルーナイトがアサルトライフルの一連射で黙らせた。
『おし、奥に進んでランランと合流するぞ』
『わかった』
『え? けどリムさんが……』
前進を促すアサクラにレオンが肯定を返すが、アレクは戸惑ったような声を出した。
『リムなら大丈夫だ。それより先を急がねーと幼馴染みを助けらんねーぞ?』
そんなアレクにアサクラは軽い調子で返しながら、背中から伸びるアームが保持するSMGを一連射した。
近づこうとしていた人型機が足を止める。
その挙動に人形じみたものを感じて、アサクラは顔をしかめた。
『……チッ、ドローンGSか』
ドローンGS。
AI制御の無人型GSだ。
機体性能はレディメイドGSと遜色無いが、AIの挙動にある程度制限があるため、行動の柔軟性に欠けるため、個人で用いる人間は少ない。
それが三体。
顔を覗かせる。
『さすがに功績値荒稼ぎしてるだけあるギルドだぜ。無人機が三機出てくるとはねえ』
アサクラは気持ちを切り替えたのか無人機達を見て笑みを浮かべた。
『レオン! アレク! ここは俺に任せて先に行け! 奥のランランひとりじゃやばいかもわからん!』
『了解だ!』
『は、はい!』
アサクラの指示にレオンはゴルディレオンを走らせ、アレクが続いた。
二機の無人機がそちらを向こうとするが、ブラッドストームの牽制射撃に足を止めた。
『おまえらの相手は俺だよ人形共』
AIが反応するわけもないと思いながら、アサクラは外部スピーカーでがなった。
三機の無機質な瞳がブラッドストームに集中する。
『いくぜっ!』
アサクラは勢い込んでコントロールスティックを押し込んだ。
一方、ベース奥ではランティーナのアラクネアが暴れていた。
無防備な敵施設の破壊と撹乱が彼女の仕事だ。
ベース正面の方に見える巨大な砲台が破壊されたのが見えると、ランティーナはアラクネアを少しずつそちらへと移動させ始めた。
こちらにも無人機が三体出てきているが、すでに一体は仕留めている。
しかしながら、いかに左バックウェポンラックにガトリングガンの予備弾倉を積んでいるとはいえ、アラクネア一機でこのベースの敵を殲滅できる訳がない。
突入してきたはずのアサクラ達と合流するのが優先事項だ。
と、ロックオンアラートが鳴り響く。
接近するミサイルを目の端でレーダーチェックし、ランティーナはアラクネアの平べったい胴体の上面両端からデコイポッドを射出しながら機体をサイドステップさせた。
飛来した三発のミサイルは、狙った獲物を見失い、新たな目標へと食らい付いた。
三つの爆発音を聞きながら、ランティーナは五機の有人タイプGS。すなわちこのベースを領有する敵国ギルドのプレイヤーGSの姿を確認した。
アーチャーにウォーハンマー。
ブラッドサイス、アイアンキャンサーといったUS合衆連邦国の主力型レディメイド機ベースの機体が確認できた。
先ほどのミサイルは小型だったのでウォーハンマーが放ったものだろう。
ブラッドサイスは、細身の手足に細い胴体という特徴の軽量機だ。
その身の軽さから接近戦能力に優れており、大型の白兵武器を持っていることが多い。
目の前のやつはレーザーバズソードというチェーンソーの親玉のような大剣を装備している。高速回転するレーザー刃の群れが敵の装甲を抉り断つというエグい武器だ。
ブラッドサイスはフルチューン仕様でもなければ装甲防御力が低いが、瞬発力が高く厄介だ。
アイアンキャンサーは特徴的な機体で、本体はGSとしてはもっとも小さく、専用の大型バックパックの運用に特化している。
また、横移動能力に優れているという変わった特徴も併せ持っている。
この場にいるのは巨大な装甲バックパックから大型のウェポンアームが左右に伸びている標準タイプのアイアンキャンサーだ。
二人羽織りしているかのように四本の腕がある特徴的な姿だ。
大型バックパックを扱うことから安定性に優れており、バランサー機能はMetallicSoulでもトップクラスだ。
また、装甲バックパックは装甲防御と耐久性を補っていて、頑健でも知られる。
と、敵機体をチェックしていたランティーナは、五機目の機体を見て眉を跳ねさせた。
五機目はこの辺りでは見ないタイプの機体だったからだ。
直線と曲線がうまく組み合った優美な装甲に、両肩のバインダータイプシールド。
腰には優雅な曲線を持つ剣を二本差している。
オリエンタルな意匠をしたその機体は、秋津諸島連合国家の機体だ。
日本の鎧武者のような外観のパーツや、刀をはじめとする和風武器を運用できる国で、固定ファンが多い。
とはいってもかなり遠方の国で、ゲーム内でも日数を掛けなければたどり着けない国だ。
「珍しいですね。リムが喜びそうです」
ランティーナは笑みを浮かべながらも、固い表情で敵GS部隊を睨んだ。




