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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第29話 唸る鉄拳、吠える銃口


 甲高い音を響かせて、黄金の鉄拳が飛翔する。

 まごう事なきロケットパンチである。

 その拳が、グレネードキャノンの砲座に激突した。

 固い岩盤をハンマーで打ち付けたような音が広がる。

 しかし、GSより巨大な砲座に対して小さな拳が命中したところでダメージになるとは、アレクには思えなかった。

 だが。

 砲座の外壁はあっさりとひび割れて砕けてしまう。

 先んじてリムが放ったバンカーバスターのシャワーが効いているのだ。

 バンカーバスターは地中目標や、強固な天蓋を破砕するための爆弾だ。

 高重量の弾頭を重力加速と推進剤加速の併用で貫通力に変換し、構造物深くで炸裂させることにより、数メートルから十数メートルの厚さのある鉄筋コンクリート防壁を破砕する能力を持つ。

 リムが使用したものは小型のものだが、数により広範囲を破砕できる。

 巨大なグレネードキャノン砲座とその土台を一気に破砕するには至らなかったが、その構造はすでにぐずぐずになっており、まるで豆腐のように脆くなっていた。

 そうなれば、GSの下腕を弾体としたロケット砲弾であっても撃ち抜くのは容易だ。

 そして、ゴルディレオンの鉄拳は易々とグレネードキャノンを破壊した。

「す、すごい……」

 アレクは思わず感嘆した。

 パッと見には、アニメのスーパーロボットのようなゴルディレオンが、巨大な砲台をたった一撃の拳で破壊したように見えたからだ。

 このアレクの呟きに、レオンが気を良くする。

『ふふん♪ そーだろそーだろ?』

 浮遊滑走しながらゴルディレオンが胸を張った。

『はあ……』

 そんなレオンに、アサクラは深い息を吐く。

 と、アレクは、おや? となる。

「戻ってきませんね? 腕」

『うん? 戻らないよ?』

 アレクの問いに、レオンはあっけらかんと答えた。

 それを聞いて少年は固まる。「え?」

『無線回収は技術的に難しいらしくてねえ。いまのところ自動では戻ってこない』

「ええぇぇえっ?! ど、どうするんですかっ?!」

『ふむ。あの瓦礫の山から掘り出すのは手間だしねえ。戦闘後に回収するよ』

「いやそーじゃなくて!」

 のんびり答えたレオンに、アレクはあわてふためく。

 飛ばした右腕が戻らないということは、片腕で戦わなければならないということだ。

 そんな状態でまともに戦えるとはとても思えない。

 だがレオンは涼しい声で続けた。

『安心したまえ。ちゃんと予備がある』

 そう言ってゴルディレオンの左腕が腰の後ろに回された。

 そこには、ふたつの金色の腕がセットしてある。

 飛ばしてしまった後に使う予備だ。

 それを取り外し、右肘にセットすると、ロック音がした。具合を確かめるように右手を閉じたり開いたりする。

『うむ。問題ない! さあゆこうかっ!』

 ゴルディレオンが浮遊滑走しながら仁王立ちとなり、交換したばかりの右手で敵陣を指差した。

 その指先で、もう一基のグレネードキャノンが動き出す。

『ッ!』

 アサクラは鋭く舌打ちしながらフルブーストトリガーを引いた。

 ブラッドストームの肩、腰、膝下装甲がわずかに開いて吸気。

 直後に肩裏、腰アーマー、ふくらはぎ部のスラスタが爆発したかのように炎を吐き出した。

『ぐぅ……』

 一瞬で、愛機に音速に等しいトップスピードを得させて、アサクラはシートに押し付けられた。

 加速Gが体を押し潰さんとし、アサクラ本人のHPがじわじわと減っていく。

 それを代償として、強大な加速を得た機体が砲台へと一気に接近し、跳躍した。

 その時点でフルブーストを解除する。

 ジェネレーターにプールされていたはずのエネルギーはすでに四割を切っていた。

 わずかに三秒の使用でだ。

 フルブーストはジェネレーターにプールしたエネルギーをスラスターに過剰供給することで一時的に本来の推力を大きく越える大推力を得る方法だ。

 凄まじいまでの加速を得られるのだが、代償として凄まじい勢いでエネルギーを消費する。そのため、どんな機体でも連続使用時間は数秒から十数秒というレベルでしか使えない。

 おまけにエネルギーを使い尽くしてしまうと、ジェネレーターに高負荷が掛かってオーバーヒート状態となる。この状態になったジェネレーターは内部ダメージを受けてしまうため、ライダー達はエネルギーを使いきらないように細心の注意を払う。

 そんな切り札によって砲台へと接近したアサクラのブラッドストームは、自由落下しながら二丁のSMGを砲台へ向けた。

 そして予備SMGを引っ掛けてあるバックウェポンラックが稼動し、折り畳まれていたアームが展開して、SMGを保持したまま両脇の下をくぐった。

 さらにバックパック部の予備SMGも持ち上がる。

 こちらも折り畳みアームに保持されており、そのまま頭部の両側へとSMGを配した。

 合計六丁。

 そのすべてが正面へと銃口を向け、グレネードキャノンを睨んだ。

『いくぜっ!』

 笑みを浮かべたアサクラは、SMGの連動射撃トリガーを引いた。

 六つの顎が牙を剥き、弾丸の嵐が砲座を襲う。

 六丁集中とはいえ所詮はSMG。

 本来ならばこの規模の砲台を破壊するのは不可能に等しい。

 しかし、強固な台座も、装甲された砲座も、巨大な榴弾砲もリムのバンカーバスターの洗礼を受けていた。

 その構造は崩壊寸前までダメージを受け、豆腐より柔らかくなっていた。

 当然、そんなものがGS用SMG六丁の集中砲火に耐えられようはずもない。

 あっという間に防壁を砕かれて、グレネードキャノンは炎に包まれた。

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