表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
27/98

第26話 紅蓮の巨弾、射抜く一弾

 爆炎が収まり、風が吹くと、 表面がドロドロになり灼熱化した盾を構えたモスグリーンのGSが姿を表した。

 盾越しとはいえグレネードの直撃を受けてなお、リムの愛機サンダーボルトは健在だった。

 手にした盾の裏側に内蔵された放熱器と冷却装置が稼働し、オレンジ色に染まっていた大盾から膨大な熱気が排熱され、急速に冷却された。

 有名ロボットアニメの核バズーカ装備機が持っていた耐爆シールドを参考にした盾だったが、うまく機能したようだ。

「……なんとか持ったわね」

 リムはコクピット内で大きく息を吐いた。

 着弾の衝撃はかなりのものだったが、コンバットメイルをパイロットスーツがわりにしていたリムは状態異常を起こさなかった。

 この状況でライダーが動けなくなる事は即敗北に繋がるだろう。 ましてやサンダーボルトの後ろには仲間の機体が三機居るのだ。

 リムはすばやくダメージチェックを始めた。


 シールド損耗率43%


 シールド機能正常。


 機体装甲損耗率4%


 機体内部損傷率7%


 機体関節負荷131%


 足部バランサーに異常


 機体機能3%低下


 パフォーマンス正常


 受けたダメージに対してダメージコントロールを行い、機能低下を防ぐ。

「盾の損耗率が想定以上だわ。うまく使っても、後二撃ももたないかも……。あと関節部の負荷が大きすぎるわね……各部関節ロック解除。衝撃吸収拡散モードへ」

 着弾の衝撃で機体が弾き飛ばされないよう各関節部をロックしていたのだが、それが災いしたようだった。

 このまま負荷が掛かり続ければ関節がイカれてしまい、戦闘能力が失われてしまう。

 それを防ぐために、リムは関節部の自由解放をした。

 四肢の関節部への衝撃を吸収、拡散するためのモードである。

 これである程度の負荷は減衰される。しかしこれとてその場しのぎに過ぎないことをリムは理解していた。

 と、ふたたび盾に大型グレネード弾が着弾した。

「くぅっ?!」

 機体が揺さぶられ、リムは呻いた。

 第二撃までの間隔が短い。

 二基存在するグレネードキャノンを交互に使用することで隙を小さくしているのだ。

 リム達は完全にこの場に縫い止められてしまった。

 一気に大量のレッドランプが点ったコクピットで、リムは必死にダメコンを試みた。

 少しでも延命をしなければ作戦はご破算になる。

「……リア、ランラン頼むわよ?」

 素早くコンソールを操作しながらリムは呟いた。




 一方その頃、リムが頼みの綱としたふたりは、防御スクリーンの傘の端にたどり着いていた。

 ランティーナのアラクネアの機体のステルス性が高いことを利用し、ベースの近くまでやって来たのだ。

 ただし、ここまで近いと基地の索敵システムに感知されかねないため、アラクネアは離れた場所で待機している。

 したがって、スクリーンの至近までやって来たのはパワードメイル形態のアームドメイルを纏ったリアノンだ。

 彼女はほぼ垂直に等しい斜面に取り付き、慎重に得物を構えていた。

 手にしているのはスナイパーライフル。それも装甲目標を狙うための対物ライフルという銃だ。

 しかも口径二十ミリという個人携帯火器の中では最大級の銃器だ。その威力は推して知るべし。である。

 センサーと望遠光学スコープを組み合わせた照準システムを取り付けたアームドメイルでリアノンが狙うのは防御スクリーンの発生システムだ。

 特徴的なアンテナを持つ四本の柱だが、このベースの正面側からはほとんど見えない位置にある。これを三本、できれば四本すべてを破壊するのがリアノンの仕事だ。

 しかしスクリーンのギリギリから射とうにも一番近いアンテナまででも一キロ近い距離がある。

 また、あまりGSで近づきすぎれば敵に気づかれ迎撃されるだろう。それでは時間が掛かりすぎ、正面に立つ味方が全滅しかねない。

 味方が気を引いている間に、気づかれないようにステルスカモフラージュで身を隠したライダーが直接狙撃する。

 これがリム達の考えた作戦だ。

 防御スクリーンが無くなれば曲射砲撃などで基地設備に大打撃を与えられる。


 特に正面に設置された大型グレネードキャノンの破壊には、大火力が必要となるだろう。

 それを成すためにも防御スクリーンの排除は必要だ。

 リム達、囮部隊が全滅しない内にこれを達成できるかが作戦成功の鍵だ。

「…………」

 リアノンは瞬きすらせずにベース内のアンテナ位置を見つめる。呼吸は最初に浅く。そして徐々に深く長くしていく。

 心臓の鼓動が耳に聞こえるほどに集中。

 ヴァーチャルリアリティの体には心臓はないはずだが、リアノンには自らの鼓動がしっかりと感じられた。

 鼓動と呼吸のわずかな揺れに照準がブレる。

 それは、リアノンの集中力に呼応するかのように安定していった。


 呼吸と鼓動と照準。


 リズムの違う三重奏。


 呼吸の継ぎ目。


 鼓動の刹那。


 照準の安定。


 それらが一致する瞬間。


 リアノンの瞳孔が拡がり……。


 羽毛より軽い引き金が引かれ。


 銃口が火を噴いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ