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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第25話 救出クエスト開始!

 谷間のギルドベースに警報が鳴り響いた。

 谷の入り口にGSが四機、姿を表したのだ。

 ギルドベースを所持するUS合衆連邦国のギルド、“ブラッドファング”の迎撃メンバーはすぐさま自分達の機体に取り付いた。


『ほんとに来やがった』

『初心者君は腕が上がったかねえ』

『一週間も経ってねーんだし、知れてんだろ?』

『お姫様を助けに来た軟弱王子さまってか?』

『ギャハハハハハッ』


 そんなやり取りを聞いて、連中から離れた場所でハッチを開放したまま自分の機体を起ち上げていた女性ライダーが深く息を吐いた。

「やれやれ、金欠だからと傭兵募集に応じたが、こんな低俗な連中だったとはね……」

 長い黒髪を束ねたポニーテールを、慣れた様子でまとめた女性はヘルメットをかぶりコクピットハッチを閉めた。

 と、コールが入る。個人ボイスチャット通信だ。

『すまんね。用心棒の先生』

 不意に入った通信を入れてきたあごひげの厳つい親父に、女性……アヤメ・ハヅキは鼻を鳴らした。

「ふん、ギルマスならしっかり手綱を握ってほしいものだな、シュベール殿」

『真面目だねえ。たかがゲーム。肩の力を抜いちゃあどうだい?』

「性分だ。そう簡単には変わらん」

『ま、こっちとしちゃあ仕事さえきっちりやってくれりゃあ構わねえけどな』

 そう言ってシュベールは通信を切った。

 アヤメはため息を吐いた。

「……言われずとも解っているさ。今の私は一傭兵にすぎんのだからな」

 諦めたようにぼやいて、アヤメは鎧武者のような愛機“ミフネ”を前進させた。




「……始まった!」

 宛がわれた部屋でリリィは警報の音を聞いた。

 アレクからの連絡で脱出のタイミングを合わせる事に応じたリリィだったが、まだ胸の奥にモヤモヤしたものがあって気分は良くなかった。

 それでも、自分を助けるためにアレクを始め六人のプレイヤーが動いてくれていることを考えると、リリィは救出チームの作戦を無には出来なかった。

「……とにかく、脱出だね」

 リリィは気合いを入れるように力強くうなずいて部屋のドアに近づいた。

 普段ならNPC兵士が見張りに立っていて理由を説明しないと部屋から出られないのだが、緊急事態のせいか見張りは居なかった。

「……やっぱり連動してるのかな?」

 脱獄クエストは率先して受けるプレイヤーが少ないため、いまいち攻略情報が蓄積されていないクエストだ。

 だが、怒りに任せてNPCから情報を集めまくったリリィは、ひとりのスパイから救出作戦が進行中だという情報を得ていた。

 その事をアレクに告げると、彼は一度電話を切った。

 そしてふたたび掛かってきた電話でクエストが連動している可能性を語られた。

 そしてアレクを介してだが、チームのまとめ役らしい女性と話を詰め、今回の作戦に臨んだ。

「……見つからないように格納庫へ行かないと」

 リリィは共和国スパイからの情報で、サブハンガーに自身の機体が運び込まれていると聞いていた。

 捕虜の格納庫への立ち入りは禁止されているため、動かせる状態なのかまでは解らなかったものの、使えそうなら大きな力となる。

 この情報は攻略Wikiにも出ていなかったため、実際に確認しなければならないが、動かなくともサブハンガーに乗り物があることも聞いているので、格納庫に向かうことは損にはならない。

「……よし」

 リリィは周囲を念入りに確認してから静かに廊下へ出た。




 リリィが行動を開始する少し前。

 ベース正面に展開する囮部隊はリムの乗機を先頭に渓谷の入り口に突入していた。

 フローティングムーブで滑走しながらベースへ向かうが、距離は十キロ以上ある。

 いかに高速移動可能な機動兵器とはいえ到達まで一分以上はかかる。

 半分も行かない内にベースのグレネードキャノンが火を噴いた。

 なにしろ金ぴかで目立つゴルディレオンが同行しているのだ。

 気づかれない訳は無い。

「停止!」


 リムが通信機に叫びながら愛機サンダーボルトに逆制動をかけさせて急停止し、手にしている盾の先端を地面に突き刺しながら両腕で構えさせた。

 同時に盾の裏面に装備された二本の杭打ちパイルバンカーが作動し、盾を固定。

 さらに機体が腰を落とし、両足の先端が展開。

 そして脛の横とふくらはぎの装甲がバシャリと展開して地面に爪を食い込ませ、アウトリガーとなる。

 ついでにかかとの両脇に取り付けられている小型の杭打ち機も作動した。

 これでサンダーボルトの機体はその地点に完全固定された事になる。

 その直後。

 口径300ミリを越える大型のグレネード弾が、サンダーボルトの保持する大盾に直撃した。

 轟音と共に火球が生まれ、サンダーボルトの機体が爆炎に包まれ見えなくなった。

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