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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第23話 黄金の巨神


 だだっ広い荒野の端に、山岳部から続く丘陵地帯がある。

 その一部は古い時代に運河であったが、今は干上がりちょっとした谷間を形成していた。

 その谷の奥に銀色や白で彩られた構造物群がある。

 US合衆連邦国のギルドベースだ。

 ギルドベースはプレイヤーギルドがその功績に応じて所有を認められる基地だ。

 ファンタジー系MMOならばギルドハウスに相当する。

 攻略目標になることも考えればギルドキャッスルと言うべきだろうか?

 ともあれ、プレイヤーグループの拠点として機能するのがギルドベースだ。

 ベースを構成するのは格納庫や整備工場、居住施設に司令部。

 滑走路、ヘリポートなどなど……。

 数々の防御設備やNPC防衛部隊も存在する。

 これらは功績値によって購入、設置すると考えればイメージしやすいだろうか?

 撤去すれば、ふたたび利用可能な功績値に戻るわけだ。

 このギルドベース自体がギルドの功績値の塊のようなものなのだ。

 当然、破壊されることはダイレクトに功績値を失うことに直結する。とは言ってもベースを守るための設備の数々も功績値を消費して設置しなければならない。そこにジレンマがある。

 攻略目標にもなるギルドベースを守るには、より多くの功績が必要となるのだ。



 そんなギルドベースを見つめる目があった。

「……ベースの規模はギルドの強さに比例するわけだけど、なかなか大規模ね」

 自らの機体に取り付けた超望遠カメラで基地の様子をうかがっていたリムはコクピットで嘆息した。

 遠距離砲戦向けのカメラだが精度は悪くなく、基地の様子がはっきり見えた。

 目立つのはふたつの巨大なトーチカと、谷間に突き出すように設置されたコンクリート製らしき防壁だ。

 防壁とトーチカがブラインドになっているため、その向こう側に有ると思われる施設は見えない。わざわざ限定してある侵攻ルート側に破壊しやすい設備が有るわけもない。

 トーチカはコンクリの土台に装甲砲台を設置したものだ。

 コンクリートと侮るなかれ数メートルの厚みの向こうに装甲板が隠されている要塞用の基礎土台だ。

 相応の貫徹力、破壊力がなければ貫くことは出来ないだろう。

 おまけに谷間に蓋をするように防御スクリーンが張られているため、曲射砲撃や航空爆撃のような重力落下加速を味方につけた攻撃は効果が薄い。

「……けど見た感じ対空防御設備は少なそうかな?」

 少なくとも見える範囲では高射砲台のようなものは見えない。

 功績値が高ければ企業国家に上申して支援航空爆撃の依頼ができるが、まずは防御スクリーンを無力化しなくては効果は臨めないだろう。

 とは言ってもクエストの主受諾者が初心者のアレクでは依頼するための功績値が足りないだろう。

 なので支援爆撃は最初から作戦の考慮に入っていない。

 リムは機体を振り向かせると味方の様子を確認した。

 見える数は三体。

 アサルトライフルとシールドを装備した青い機体は、リムが製作したアレクの機体だ。

 その出で立ちは青い鎧を纏った騎士に似ている。

 リム自身、機体名を“ブルーナイトX-1”と名付けている。


 ちなみにX-1は試作一号機を示すものなので省略しても良い。


 その青騎士の左隣には深紅と黒で塗り分けられた機体があった。

 各部は鋭角的なパーツで構成され、攻撃的な印象を受ける機体だ。

 武装は両手にコンバットナイフ付きの短機関銃《SMG》を二丁装備している。

 SMGは連射能力に優れた銃器で、手軽に弾幕を張れるのが特徴だ。

 欠点は低威力と精度の低さ、連射能力が高いゆえの弾薬消費の早さだ。

 これを補うためか、同じタイプのコンバットナイフを装着したSMGがバックウェポン装備部位に一丁ずつ、バックパックに二丁の計四丁の予備だろう。

 マガジン交換で済ませれば良いとも思うが、そこはライダーの好みもあるのかもしれない。

 この機体の名前は“ブラッドストーム”。パイロットはアサクラだ。

 彼はコクピット内でリラックスしたように鼻唄を歌いながら待機している。

 そんな二機の背後に立つのは重量級のとても目立つ機体だ。

 GSとしても大型のタイプで、アレクやアサクラの機体より頭ひとつ分以上大きい。

 だが、その機体が目立つ理由は別にある。

 晴れ上がった空から燦々と降り注ぐ陽光を反射して輝くその機体は、黄金の機体だ。

 装甲がすべて金色に輝く機体なのだ。

 目立たない訳が無い。

 しかも上半身前方に装備するフロントパーツが、“獅子の顔”をしていた。

 バックウェポン部には金色の翼のようなスタビライザープレートパーツ。

 緑に輝くツインアイが前方を睨むその姿は昔よくあったアニメのスーパーロボット然とした姿であった。

 そしてこの機体“ゴルディレオン”のパイロットはレオンだ。

 コクピット内での彼は、鏡を眺めながら身だしなみを整えていた。だれに見られるわけでもないのにだ。

『……絶対もう気づかれてますよね?』

 アレクからの通信に、リムは視線を逸らした。

 当然気づかれているだろう。

 なにせ二キロ離れた先からでもその輝きはしっかり確認できるのだ。

 囮には最適な機体だった。

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