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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第19話 ミーティング開始


 アレクの機体の最終的な調整が終わり、六人は救出ミッションに向けてのミーティングを始めた。

「……それで? 敵拠点情報は?」

「軽く偵察してきたけどねい。なかなかのものだったわよん」

 リムに問われたリアノンが答えた。

 フットワークの軽い情報屋らしくすでに下見を敢行したらしい。

 それを聞いてアレクが目を丸くした。

「だ、だいじょうぶだったんですかっ?!」

 そんな彼にリムは疲れたような顔で口を開いた。

「大丈夫じゃなくてもなんとかするのがリアの特技だから気にしなくて良いわよ」

「リムが薄情な件」

 アレクが反応するより早くリアノンはケラケラ笑いながら返した。

 他のメンツも気にした様子も無く、アレクは戸惑いを隠せなかった。

 そんな彼にリムは嘆息した。

「……リアノンは斥候スカウトのメックライダーだからね。偵察はお手のものよ」

 より正確にはディープゲイザーという電子戦系斥候クラスだ。

 電子欺瞞を得意とし、通常機を遥かに越えるレーダーレンジを備え、ECMやECCMを駆使する特殊な機体の運用に長けたクラスだ。

「まあ今回はGSグラウンドスライダーじゃなくてアーマードメイルでこっそり近づいて、ステルスドローンでチェックしたからねい。よほどの事がない限りは気づかれないわよん♪」

 心配そうなアレクに、リアノンはウインクして見せた。

 アレクは目をしばたたかせた。

「アーマードメイルですか?」

 興味が沸いたのはそちらの単語らしい。

 リアノンは少し傷ついたような顔になった。

「……うむん。メイル系装備は知ってるよねい?」

「はい、キャラクターが装備する白兵戦用の防具ですよね? 確か……コンバットメイル《戦闘外装甲冑》……パワードメイル《強化外装甲冑》……」

「そしてアーマードメイル《武装外装甲冑》ね」

 アレクに続けてリムが挙げた。

 これらは白兵戦用の強化外装だ。

 全身用プロテクターのようなコンバットメイル。

 パワードスーツ然としたパワードメイル。

 そして最小の機動兵器と言われるアーマードメイルだ。

 MetallicSoulは基本的には人型機動兵器を操って戦うゲームだ。

 だが、戦場は必ずしも機動兵器が動き回れるスペースを保持していない。

 基地内に潜入する際や屋内での活動に対応するため、キャラクター用の武器や防具もある。

 変わった遊び方としてGSに搭乗せずに戦う猟兵プレイに興じる物好きもいるくらいだ。

 コンバットメイルは個人火器に対する防弾効果と気密性、衝撃吸収、軽いパワーアシスト機能を備えた防具だ。

 甲冑とは言っても動きを妨げない事に重きを置いており、かさ張らないためパイロットスーツがわりにこれを着込んでGSに乗り込むプレイヤーもいる。

 現にリムなどはその口だ。

 パワードメイルはコンバットメイルをゴツくしたような防具で、一般的なパワードスーツだ。

 GSに比べれば防御力、機動力は劣るが、装甲車を相手取るくらいは可能だし、慣れた人間なら戦車やGSを撃破する事も不可能ではない。

 武装も対戦車ミサイルや大口径ライフル、ミニガンなどを軽々運用でき火力的には侮れないのも事実だ。

 さすがにこれを纏ったままGSのコクピットに収まることは出来ないが、閉所での対人戦闘に備えてGSのトランクルームにこれを積んでいるプレイヤーもいる。

 そしてアームドメイル。

 これは変形するパワードメイルと言えば話が早い。

 より詳しく言えば軽小型車両がパワードメイルに変形するのだ。パワードメイルは長距離移動に不向きで、移動に足が必要になるのだが、車両に変形することで長距離移動しやすくなっている。

 車両形態は基本的には一人乗りの二輪車、もしくは四輪車で、専用のコンバットメイルが必要になる。

 むろんGSを相手取るには力不足だが、単独行動時の不測の事態に備えた武装として、足として重宝されている装備だ。

 リアノンはミッション受領後にすぐさまこれで公開情報となったギルドベースへと偵察に繰り出したわけだ。

「で、敵の情報だけどねい。地形は谷底に設置されたベースで規模はAランク。対GS砲やミサイルランチャー、対空銃座なんかが山ほど設置してあったよん」

 リアノンの言葉にリムが鼻を鳴らした。

「……功績値荒稼ぎしてるんだから当然ちゃ当然ね」

 吐き捨てるように言う。

「まあそうだねい。典型的な防衛型のベースって事になるわけだけど、厄介なのは防空スクリーンと大型グレネードキャノンが設置されてる点だねい」

 リアノンの言葉にリムは天を仰いだ。

 防空スクリーンは上空からの攻撃を遮断する防御装備だ。

 接触した弾をエネルギーシールドで焼き尽くす。エネルギー兵器に関しても遮断効果が発生し、グラウンドスライダーで強引に突破しようとしても電子機器と装甲、内部機構に甚大な被害を受ける。

 消費電力が極大であるため、ベースの発電力が無ければ運用できないが、運用できた場合の効果は絶大だ。

 発生システムを破壊できれば良いのだが、基本的にシステムはベース内にある。

 強大な防御の内側に弱点を内包しているわけだ。

 そしてグレネードキャノン。

 対GS榴弾砲とも言われ、着弾点で大爆発する砲弾を撃ち出す砲台だ。

 その威力は絶大で、防御偏重の重量級機体でも一撃で深刻な打撃を受ける。また発生する爆風は確実に機体を張り倒す。

 唯一弾速の低さが欠点だが、谷間の基地に設置されているとなると着弾点に回避スペースが無いことが多い。GSの高機動力を生かせない地形でのグレネードは悪夢の一言だ。

 また、大型の砲台である点も問題だ。

 大型の砲台は長大な射程を誇り、GS用狙撃砲の射程すら上回る。

 そして砲が収められるトーチカは防御力、耐久力ともにGSを越える。

「……なんともまあ、テンプレな難攻不落の要塞ね」

 リムは大きく肩を落とした。


 攻略の難易度が解ったからだ。

 その難易度はかなり高い。

 NPC要塞と遜色無いレベルだ。

 谷底と言う進軍経路を限定する地形に加え、その経路を完全にカバーする砲台群。航空攻撃や曲射砲撃を防ぐ防御スクリーンによる防御能力。これらにより、攻略側のとれる手は限られる。

 もし仮に正面突破に成功したとしても、ボロボロになった機体で基地防衛に当たるGSと対決しなければならない。

 リアノンが解説しながらホログラフマップを展開していくのを見てアレクは息を飲んだ。

 まともな方法では攻略不能であることは彼の目にも明らかだとわかったからだ。

「……こんな……攻略できるんですか? こんなの……」

「ま、なんとかなんだろ」

 軽い調子で答えたのはアサクラだ。

 アレクはえ? とばかりに彼を見た。だが、アサクラの方はすでにリムへと水を向けていた。

「リム、お前の“サンダーボルト”で正面から行けるか?」

「……グレネードの直撃でも“本体”なら四発はしのげると思うな。だけど装備がやられちゃうから……」

 答えながらリムは難しい顔をする。

 既存中量級機体なら二発も貰えば擱座しかねない威力のグレネード攻撃に、四発耐えられるという辺りにリムの機体傾向が現れているわけだが、それでも手持ちや外付けの武装類や装備類まではそうはいかない。

 MetallicSoulでは、これらの武装や装備にも耐久力が設定されており、爆風や衝撃などで破損する。

 機体ですら大破しかねない威力のグレネードの爆炎を受ければ、そういった防御効果の受けづらい装備は一発でおしゃかだ。

 さすがに機体が耐えきれても武器が無くなってしまっては基地攻略などは不可能だ。

「つーと、絡め手でいくしかねーか」

 リムの答えに軽く思案したアサクラは、人の悪そうな笑みを浮かべた。

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