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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第14話 試験走行

 店舗付属のアリーナを、一機のグラウンドスライダーが歩く。

 フローティングムーブが基本となるグラウンドスライダーではあるが、人型らしく足で歩く事も可能だ。

 設定上の開発史においては、脚部はランディングギアの一種であった。

 重量軽減と浮遊効果を発揮するフィールドのお陰で、高速移動が可能なグラウンドスライダーが、このフィールドを停止した場合の着陸脚としての役目しかなかったのだ。

 腕部も同様にウエポンラックとしての意味合いしかなく、初期のグラウンドスライダーは変わった形状をした兵器ではあった。

 このランディングギアにブレーキングの為の可動機構を持たせた辺りが、人型脚部へ推移の第一歩であったのだろう。

 足裏から地面までの高度を調整し、場合によってはフィールドから脚を出すことによってブレーキングする行為は、脚部に大きな負担とはなるものの、機体の運動性向上に貢献したのだ。

 それから負担に耐えうる脚部の開発が盛んになり、ただのランディングギアであった部位は、人型の脚部へと変化していったのだ。

 腕部にしても似たような経緯で人型の腕に変化していき、グラウンドスライダーは完全な人型へとその姿を変えていったらしい。

 もっとも、現状でも二脚人型から他の下半身パターンへの試行錯誤は続いている。

 四本の脚を代表とした多脚型。

 鳥の脚のような逆関節型。

 元陸戦の王であった戦車へと技術をフィードバックするための、車両型といった派生種がそれだ。

 うち、多脚型は制御に難があるが、安定性の面で成功しているし、逆関節型は衝撃吸収、跳躍能力で結果が出ている。

 だが車両型だけはフローティングムーバーの特性上うまくいっていない部分が多く、苦戦中のようだ。

 これら派生種型下半身もアレクの機体に検討したリムではあったが、アレクのパイロット特性を鑑みた場合、やはりオーソドックスな二脚型が向いていると言えた為、二脚で製作している。

 特殊脚部と比較しても二脚型はグラウンドスライダーの脚部として優秀だ。

『どうかしら?』

「……グリーンナイトより滑らかに歩きますね。反応速度は変わらないくらいなんですけど、振動が少ないです」

 リムの問いにアレクが答える。

 今はフットペダルを軽く踏んで歩いているだけだ。とりたてて他に操作は要らないため、アレクは視界内の機体の情報を吟味していく。

 レイアウトは変わらず、歩いている分には操作感はあまり変わりがないようだった。

『オッケー。それじゃ走ってみて』

「はい!」

 返事をして、アレクはペダルをゆっくり踏み込んでいった。

 脚の動きが早くなり、前進速度が上がる。

 さらに機体が軽く前傾姿勢へと移行して、速度は上昇していった。

「……あまり揺れないな」

 にも関わらず、上下動をあまり感じない。

 走ることによって上下に揺さぶられるのはグリーンナイトで経験していたが、それより体感での上下動は小さく感じられた。

 実際にはかなり揺れているはずだが、衝撃の吸収性が良いのかガツンガツンと突き上げてくるような振動が無かったため、そう感じるのだ。

 外から見ると、機体の上半身は一定の高さを保ったままで、上下のブレはあまり無い。関節部の自由度で、ショックアブソーバーの働きを補っているからだ。

 そのままアリーナ端までたどり着きそうであったため、アレクはフットペダルを操作してブレーキをかける。

 機体が腰を振るようにして右足を前方の地面へと突き出し、急制動を掛けた。

「うわっとっ?!」

 ガックンと、車が急ブレーキを掛けたかのように、アレクの体が前方へと投げ出されそうになった。

 それでも機体は転倒せずにバランスを保って停止した。

『アレク君大丈夫?』

「ぶ、ブレーキの性能良いんですね……」

『効きすぎかしらね? ヴァリアブルバランサーがうまく作動し過ぎたみたい』

 アレクの言葉に、リムが考え込むようにしながら答えた。

「ヴァリアブルバランサー?」

 聞いたことの無い単語に、アレクは首をかしげて呟いた。

『ええ、うまく動きすぎたみたいね』

 アレクに答え、リムは苦笑した。

『機体の足元を見てみて?』

「機体の脚ですか?」

 リムに促されて、アレクは頭部を操作して機体の足元をモニターに映した。

 カメラがズームした足先は扇状に展開していた。

「これは?」

『人間の足を参考にして、接地面や用途に合わせて変形するシステムを私が考案、設計して実製作したのよ。けど、実測可動データが少ないから、プログラミングしづらいのよね。データを参考にして修正するわ』

 ぼやくようなリムの言葉にアレクは目を丸くした。

 そんな新規のシステムをプレイヤーが作成できるとは思わなかったのだ。

 無論、簡単なことでは無く、さまざまなパーツを駆使したり、本来の用途とは異なる使い方をした部品もある。そうやって新たな機構を作り出すのは、メックスミスたちのやり込み要素と言えるかもしれない。

『現状では弄れないから次いきましょうか。フローター移動を試してみて?』

「は、はい」

 リムの指示に、アレクは目をぱちくりさせながら頷いた。

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