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ロボゲー世界のMechSmith  作者: GAU
第一章 鈍色の魂持つ者の誇り
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第13話 アレクの新機体起動


「リムさん? 居ますか?」

 次の日の夕刻。

 リムから連絡をもらったアレクは、相変わらずジャンクの山に埋もれるように佇んでいる彼女の店を訪れていた。

 出迎えにメンテナンスドロイドが顔を出す。

「おっと。お邪魔します」

 足を止めたアレクが見れば、球体表面に『welcome!!』の表示が表れ、アレクは少しだけ楽しそうにして挨拶をした。

「君のご主人様はどこかな?」

 その問いに、メンテナンスドロイドが走り出した。

 アレクは一瞬あっけにとられるが、少し先で停止したメンテナンスドロイドを見て「……着いて来いってことかな?」などと呟きながら足を踏み出した。




 ドロイドの案内でアレクがやって来たのはショップの奥にある工廠部分だ。

 そこにリムは居た。

「リムさん」

「ん? アレク君か。待ってたよ。さっそくで悪いんだけど、機体を動かしてみてくれる?」

 アレクに呼ばれたリムは、何らかの作業を中断して笑みを浮かべながら返した。

 アレクはリムに示された方を見て目を見開いた。

 そこには、スリムで力強い姿のグラウンドスライダーが立っていたからだ。

「わぁ……」

 思わず感嘆の声を漏らすアレク。彼の想像ではもっとグリーンナイトの姿に近いものだったが、これはその想像を越えた機体だった。

 そのアレクの姿にリムは満足そうに笑いながら頷いた。

「ほ、ほんとにこれが僕の機体なんですか? な、なんだか立派すぎるような?」

 機体が思っていたより強そうなせいかアレクはリムに確認してしまう。

 リムはそんな彼に苦笑した。

「間違いなくあなたの機体よ? アレク。預かった資金や資材は全部使いきっちゃったけどね?」

 実際には少し足が出ている。だが、リムはその事を伝えるつもりはなかった。

 なにより、楽しい機体製作の時間を過ごせたのだ。

 機械とロボットが好きな彼女にとっては至福の時であったのだ。

「それより乗ってみてちょうだい。実際に動かしてもらって違和感があれば調整するから」

「は、はい!」

 リムにそう指示されてアレクは興奮に声を上擦らせながら頷いた。

 そのまま機体に走り寄り、彼はその全体を見上げる。

 近くから見てもそのスリムさ、力強さは変わらない。

 シャープなボディラインに軽鎧をまとった闘士。

 全体的な印象はそれに尽きるだろう。

 細目の腕や脚に対し肘や膝、手首足首に肩のアーマーが大きく、印象的だ。

 腰アーマーは小振りではあるが、スネに取り付けられているフットシールドのお陰で下半身は大きめに見え、とても安定感を感じる。

 胸部が前方に突き出し気味なのは、前面にフロントガードアーマーが取り付けられているからだ。これはバックパックのカウンターウェイトを兼ねており、前後の重量バランスをとっている。

 そうであるにも関わらず、上半身パーツはコンパクトにまとまっているため、トップヘビーということはなさそうだ。

 バックパックは小型のサブバッテリータイプで、エネルギー容量を補助している。また、バックパック両脇にあるバックウエポン用のラックには直方体のような装置が左右とも取り付けられていた。

 そして、ゴーグルを付けた頭部は、グリーンナイトのときの貧相さは無く、しっかりとしたクロスヘルムをかぶっているかのようだ。

 アレクはその雄姿に目を輝かせ、頬を紅潮させながら機体をセットしてある整備架台に近づいた。

 そこに据え付けられた、可動アーム式のゴンドラにあがり、そのままアレクは上半身部分まで持ち上げられていく。

 コクピットハッチはフロントガードアーマーに守られるように存在する。

 フロントガードアーマーの裏側にある開閉装置を操作すると、アーマーが前方にスライドし、三重になったコクピットハッチが次々に展開していく。

 グリーンナイトではハッチは一枚だったので、アーマー込みで四重の装甲に守られていることに、アレクは驚いてしまった。

 脇から滑り込むようにしてハッチを潜り、アレクはコクピットに収まった。

 レバーやスイッチ、モニターなどのレイアウトはグリーンナイトと同じだ。

「うん。これなら戸惑わないかな?」

 同じ感覚で動かせそうだと感じてか、アレクは安堵の息を吐き、ハッチを閉じた。

 機体システムを起動し、心臓部であるジェネレーターの出力をあげていく。

 そして、アレクの新機体が一歩、足を踏み出した。

 リムの指示を受け、そのままガレージ奥の巨大なスライドドアへ向かう。

 機体が近づくとドアがゆっくりと開いていき、光が鈍色のボディを照らした。

 ドアから出ると、それなりの広さのある広場だった。

 ジャンクの山の奥にあるとは思えないほどの、しっかりしたアリーナだ。

「……こんな設備まであるんですか」

 アレクは思わず漏らした。

 すると、無線からリムの苦笑が聞こえてくる。

『大したものじゃないよ。個人所有のアリーナとしては下の方だしね』

 個人所有と聞いてさらに驚くアレクだが、実はこのアリーナは数量限定クエストの報酬だ。

 クエストを制覇すればプレイヤーはアリーナ付き店舗を入手できるというもので、数量限定だけあって難易度も高く、リムもこの間やっと手に入れたばかりだ。

 立地の良い店舗はすでに抑えられていたが、グラウンドスライダー製作を主にしたいリムとしては、機体性能確認が出来るアリーナ付き店舗は喉から手が出るほど欲しい物件だったのだ。

『ま、いろいろ動かしてみて、気になったことを教えてよ』

「わかりました」

 リムに言われて、アレクは自らの新たな相棒を動かし始めた。

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