表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mermaid Blood   作者: 舞花
4/4

『授与式 Ⅱ』

ホールの扉の前に着くと、お母さんが私達の方に振り向いた。


「今からの儀式はとても重要だから真剣に取り組みなさい。分かったわね?」


あまりの真剣な表情に最初はたじろいたが、お遊びなどではないと念を押されているとわかり、私達6人は頷く。


お母さんはその動作を見て安心したかのように顔の表情を緩める。


「じゃあ気合いを入れていきましょう!」


その声を最後に扉が開かれた。



ホールの中に整列して入場すると、中では予想以上の人が待っており拍手をして私達を迎えてくれた。


(ヤバい……今さら緊張してきた)


手は汗を掻き始め、歩き方もぎこちなくなってくる。


普通に振る舞おうとしてもなかなか出来 ない。


零はそんな私に気づくと、


「優奈。いつも通りでいれば大丈夫だ。肩の力 を抜くといいぜ」


周りの人達にはばれないくらいの小さな声で耳 打ちをしてきた。


耳に息がかかってくすぐったかったが、その言葉で緊張がほぐれた。


(やっぱり零はなんでも できちゃうなぁ)


微笑を浮かべて私も零に耳打ちをする。


「ありがとう」


笑顔で零の顔を見ると少し顔が赤くなっている気がしたが気のせいだろう。


儀式の壇上の前に立つ。


お父さんは、壇上ですでに私たちを待っていた。


自信をもって受け取ろう。


そう覚悟を決める。


他のみんなも同じ気持ちなのかな?



「では、今から授与式を行う。」


お父さんが発した言葉で拍手は止み、辺りは静寂 に包まれる。


「実は、魔法水晶が 盗まれ、犯人達は今ここに立っている彼らに探 すよう命令してきたのです。

盗まれてしまったのは私達王の責任だ。

それは、本当に申し訳ないと 思っている。」


お父さんは歯を噛み締めて、下に俯いてしまう。


「でも、悔やんでいても魔法水晶は、戻ってきません。

だから犯人達に少しでも、対抗できるように今から彼らに魔法水晶を授けたいと思います。」


お母さんは俯いてしまったお父さんをフォローする かのように淡々と状況を説明する。


「私達の勝手な理由で今まで絶たれたことのなかったしきたりを崩すことなるのは、重々承知です。

でも、どうか皆様に許して頂きたいです。 」


王女たるセイラとは思えないほど、その場にいる人たちに深々と頭を下げる。


集まった人たちは、動揺してざわめきだす。


もともとここに集められた人たちは、今魔法水晶が盗まれたことを知らされた。


動揺するのも無理はない。


「魔法水晶が盗まれるなんて、どうしてくれるんだ!」


「そうよ! どう責任をとってぐたさるの!?」


「ここにいる一同、あなたがたを信じてここまでついてきたというのに……」


「いくら王子と優奈様だといっても、まだ半人前、渡してまた盗まれたらどうするんだ!」


「それに、沙羅と梨華はもともとは使用人、いくらマーメイドのなかでも魔力が強くて戦えるからといっても渡すのは間違っている。」


除々に、非難の声が私たちに浴びせられる。


確かに、これは私達の責任だ。

お母さんたちも俯くばかりで、黙ってしまった。


(どうしよう……)


私もさすがに言う言葉がない。


「じゃあ、他に方法があるんですか!!」


いきなり大きな声がした会場の奥の方を見ると、マリーが叫んだことがわかった。


マリーはまた話し始める。


「確かに、間違っているかも知れない。

でも、ここで彼らに託さなくては魔法水晶は、戻ってこないんです!

もう起きてしまったことを変えることはできないんです!

それに、今まであんなに国のために、みなさんの為に頑張ってきて下さった方を信じずに非難するなんて……

あなたたちに思いやりの心というものはないんですか!?

信じようとは思わないんですか!?」


あまりにも大きな声で叫んだので、マリーは息をきらしてしまったようだが、その場にいた全員が黙り込んだ。


私はマリーが言ってくれたことが嬉しくて、自然と涙を流していた。


(でも、私が泣いている場合じゃないよね。)


私はお父さんとお母さんを押しのけて、マイクの前に立った。


「みなさん、私の話を聞いて下さい。」


辺りの視線が全て私に集まる。

零の方を向くと、少し微笑みかけて頷いてくれた。

私も頷き、勇気をだして話しだす。


「お父様とお母様をどうか攻めないで下さい。

これは、私が力不足だったせいです。

もちろん信じてくださいといきなり言うのは、間違っていると思いますし、みなさんもいきなり信じれるはずがないと思います。

ですが、必ずとり戻してみせます。

どうか私たちを信じてくださいませんか?

お願いします。」


言い終えたあと、私は最後の意思表明の言葉を言う。


「もし、取り返すことができなかったら、私は後継ぎの座を捨てます。

これが、私にできる意思表明です。」


話し終え、頭を下げると、お父さんとお母さんはとても驚いた顔をしていたが、私に続いて頭をさげた。


それに続いて零たちも頭をさげる。


また、ざわめきが会場を埋めつくしたが、だんだんと私たちを信じようというような声が聞こえだす。


「優奈様も、立派になられたものだ。圧倒されてしまったよ。」


「後継ぎの座を捨てると言いだすなんて、思ってもみなかったわ。でも、その強い意志が優奈様を信じてみようという気持ちにつながったのよね。」


「私たちは、こんなに素晴らしいかたたちを信じれなくなってしまっていたんだな。」


わたしの意思表明で、みんなの心が動いてくれたのだと思うと嬉しい。


すると、お母さんがマイクの前に立って話し始めた。


「私たちを信じてくださって、本当にありがとうございます。

優奈も、ありがとう。

おかげで、みなさんが私たちを信じてくださることができたわ。

では、今から授与式を行いたいと思いますがよろしいでしょうか?」


お母さんが問うと、全員が拍手をすることで返事をした。


「月影優奈、宝生沙羅、桐山梨華、玖珂零、更科一樹、如月悠真、こちらへ来なさい。」


お父さんの言葉で、壇上の魔法水晶が置かれている位置へと誘導される。


全員が並び終わると、お父さんは私たち一人ひとりに魔法水晶のネックレスを首にかけた。


「彼らには、大変な責任を追わせてしまうことになりました。

ですが、この魔法水晶が少しでも彼らの力になることを願いたいと思います。」


パチパチパチパチ


お父さんが話し終わると、会場の人々が拍手をして祝福してくれた。


「では、これで授与式を終わりたいと思います。

本日は本当にありがとうございました。」


お母さんが、締めくくりの言葉を言うともう一度会場は拍手の音につつまれ、授与式は終わりをつげた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



会場をあとにした私たちは、とりあえず自分の控え室に戻ることにした。


(ふぅー。緊張したぁ……)


ソファーに座るとついため息が出てしまう。


(でも、あれだけ多くの人たちを説得できて良かった。魔法水晶も無事授かることができたし…)


鏡の方を向くと、私の首には虹色の貝殻の形をした魔法水晶がかかっている。


そういえばお母さんが、この石は7つあるうちのなかでも1番魔力が強く特別なものだと言っていた。


(1番の魔法水晶を授かったからには、しっかりしなくちゃ。)



ここからは、私たちだけで戦わなくてはならない。


きっと、相手は私たちではすぐに太刀打ちはできないだろう。


でも、諦めていてはこの魔法水晶を授かった意味がない。


(まずは、相手と戦えるようにもっと魔法を鍛えて、剣も上手にならなくちゃ。)


パチン!

 

私は、自分の頬を叩いて気合を入れ直した。





ーーーーーーーーーーーーーーーー




「月影優奈らが、魔法水晶を受け取ったみたいですね。」


「そうみたいだな…………。 ククッ」


「何がそんなにおかしいんですか? カナデ。」


「いや。これからが楽しみだと思ってな。」


「まぁ、それは私もですね。」


「やっと会えるな、優奈。

 さぁ、楽しい楽しい時間の始まりだぁ!

 ハハハハハハ!」


男は、たからかに笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ