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Mermaid Blood   作者: 舞花
2/4

『起きた事件』


休日の日。私はリビングで沙羅と話していると携帯が鳴った。


(誰からだろう?)


携帯の画面を見ると魔法界の家からの電話だった。


「もしもし?」


「優奈様ですか?

 私セイラ様の召し使いのマリーです。

 突然で申し訳ないのですが至急零様達と魔法界にお戻り下さい。

 セイラ様から大事な話があるので……」



「そうなの。分かった、すぐに向かうわ。」


「お待ちしております。」


(突然呼び出したりして、何かあったのかな…)



「優奈、何かあった?」


私が考えこんでいるのに気づいて、沙羅が心配そうに私の顔をのぞきこんできた。


「よく分かんない。でも、今から魔法界に6人で来てほしいんだって。」


「それ本当!? 何かあったのかな…」


「とりあえず、行って直接聞くしかないよね」


「優奈の言うとおりね。 ちょっとみんなを呼んでくるね」


何があったのか気になったが、とりあえず魔法界へ向かうことにした。



―――――――――――――――――――――



魔法界の私の家(正確に言えば城だろうか。)に着くとマリーが玄関で待っていた。


「セイラ様がお待ちです。こちらにどうぞ。」


マリーに言われ、王宮に入るとお母さんが待っていた。


「優奈、それにみんなも久しぶりね。人間界は楽しいかしら?」


いつもと変わらない笑顔でお母さんは私達を迎えてくれた。


(大事な話っていうのは嘘だったのかな。)


そんな安心をしているのも束の間、


「俺達にしなきゃならない大事な話ってなんだ?」


一樹の一言でお母さんから笑顔が消えた。


すると、ため息を1つ溢して、



「私達の家に代々伝わる7つの魔法水晶の内の1つが盗まれたの。」



お母さんは今にも泣き出してしまいそうな辛い顔で言った。



「「「えっ!?」」」

「「「はぁ!?」」」



誰もが可笑しな声をあげてしまう。


だって、魔法水晶は私の家に代々伝わる家宝。


水晶といってもネックレス型になっていて小さいものだが、その魔力ははかりしれない。


だから、100匹の魔法界で最も強いとされる使い魔とセキュリティで守っている。


だから盗まれるなど有り得るはずがない。


実際に今まで盗まれたこともない。


魔法界の人々全員がそう思っている。


私だってそう信じたい。


みんなが動揺して、部屋が沈黙な空気に包まれると、


「そんなこと有り得ないわ!」


それを破るかのように沙羅が大声をあげて言う。


「そうだよ。きっと何かの間違い……」


私も沙羅に引き続き言おうとする。


「嘘なわけないでしょ!それに盗んだ犯人からの手紙もあるの。」


でも、1つの手紙を手にしたお母さんは、人前で涙など決して流さないのに目尻に涙をため、沙羅よりも大きな声で私の言葉を遮った。


「その手紙は何処で手に入れたんだ?」


悠真がいつもと変わらない口調でお母さんに聞く。


「この手紙は、水晶が祭られている祠の中に置いてあったわ。今から手紙の文章を読むわね。」


お母さんはいつの間にか泣き止んでいて、深刻な顔をして手紙を開き、文章を読み始める。





魔法水晶は頂戴した。


全部奪わなかっただけ、光栄に思うことだ。


返してほしくば我らを見つけてみるがいい。


だが、探していいのは人間界にいる月影優奈らの6人だけだ。


もし違うやつが探したら水晶はもう二度とかえってこないと思え。


それではまた近いうちに人間界でお会いしよう。


[Shadow Blood ]




「Shadow Blood って聞いたことないな。」


「でも、我らって書いてあるってことは人数は複数ってことよね。」


「ていうか、何も手がかりなしでどうやって見つけるんだよ。」


お母さんが手紙を読み終わった途端にみんながそれぞれの意見をいい始める。


私もそんな人達聞いたことがない。


「実は私、少しだけなら犯人の姿を見たかもしれないんです。」


どうしようかと困りはてているところで、マリーの口からとんでもない言葉が繰り出された。


さすがに、その場にいた全員が銅像のように固まった。


「何処で見て、どんな姿をしていたの?」


私は早まる鼓動を必死に押さえつけて問いただす。


「水晶が盗まれた日、私ちょうど祠の周辺の掃 除当番だったんです。

 でも、セキュリティのサイレンの音が聞こえ てすぐに祠の近くに行ったら6人組の男達が

 いて、顔までは暗くてよく見えなかったので すが、その場から静かに消えていったんで  す。それに……」


マリーは気まずそうな顔で、口をつぐんでしまった。


「マリー、教えて。 今はどんな情報でも欲しいの。」


お母さんが、マリーに真剣な目つきで言う。


すると、マリーは意を決したように言葉を紡ぎだす。


「私に気づいて微笑んできたんです。しかも歯がヴァンパイアのように鋭く尖っていました!でも、

その周辺にいた人は誰一人見ていなくて……

あれは幻だったんだって思うようにしていたんです。

だってヴァンパイアですよ?

あんな恐ろしい化け物がこの城に侵入したかと思うと恐ろしくて………。」


マリーは、その場に座りこんで、泣き出してしまった。



ヴァンパイア…………


彼らは魔法界とは反対の世界、【冥界】に住まうもの達で確か【冥界】を統べているのもヴァンパイアの一族だったはずだ。


そんな魔物が、自分にむかって微笑んできたら誰だって、恐いに決まっている。


お母さんは泣いているマリーのそばへ行き、なだめ始める。


「恐かったわよね。 教えてくれてありがとう」


「セイラ様………。 いえ、私が早く言わなかったのが悪いんです。」


「いいのよ、そんなこと。気にしないで」


「私には、もったいないお言葉です。」



マリーが泣き止むと、みんなは口々に思いや不安を口走りだす。


「ヴァンパイアとか、マジかよ……。」


「冥界まで行かないと見つけられないの?」


「一人前の魔法使いでもない俺達に何ができるっていうんだよ。」


私も正直いってみんなと同じ気持ちだ。


犯人達はあれだけ強い使い魔を100体も倒している。


もし見つけられても、私達の魔法では水晶を取り返す以前に相手に対抗すら出来ないはず。


そんな中、

「盗まれていない残りの6つの魔法水晶を優奈達に渡して、魔力を少しでも上げるのはどうかしら。」


お母さんが小さな声で呟く。


「・・・・・。」


全員が一瞬黙りこんでしまうが、


「それはいいかも!」


「そうしようぜ!」


「向こうは脅しで1つしか盗まなかったかもしんないけど、裏目にでたな。」


みんなその考えに賛成した。


本来なら、魔法水晶は人間界で修行して一人前になった魔法使い、つまり未来の私達が受け取るというのが代々受け継がれてきたしきたりなのだが、盗まれてしまってはそうもいかないのだろう。


絶望のふちに立たされていたが、微かに希望の光が見えた気がする。


「そうと決まれば、授与式を行わないといけませんね。」


マリーからは、先程の青ざめた顔は見られず、むしろ喜びに満ち溢れたとびきりの笑顔で私達に笑いかける。


その影響でかみんなの顔から徐々に緊張感が消える。


「どんなドレスを着ようかなぁ。」


「沙羅ならなんでも可愛いよ!」


「うるさい!一樹はすぐにそうやってからかうんだから。」


「理由はアレだけど、私達もとうとう魔法水晶を授かれるのね。」


「ていうか、梨華。授与式って何日頃にやるんだ?」


「うーん。悠真は何日位がいいと思う?」


「そうだなぁ」


話題は、事件のことから授与式の話へと変わっていく。


(ひとまずは、安心してもいいのかな。)


思わず安堵のため息をつく。


「授与式のこととか一緒にあっちでみんなと話さないか?」


椅子に腰かけていると、いつものような口調で零が話しかけてきた。


「うん。そうだね。ありがとう。」


いきなり話しかけられたせいでか、顔が火照るが、何事もなかったように返事をする。


「じゃあ、あっちに行こうぜ。」


零は、私の顔が赤いのなんか気にもせすに、私に手をさしのべてくれる。


こういう時は零の恋愛関係の勘の鈍さに感謝したいものだ。


(恋愛以外ならすごく勘が鋭いんだけどなぁ……)


少し残念な気持ちと照れ臭さが混じった感情を心に秘めながら、零の手をとって沙羅達が楽しそうに話している方へ歩いていく。


(それにしても、何故急に魔法水晶を盗んだんだろう。 

わざわざ私たちだけ探していいなんていうのもおかしな話だし……。)



Shadow Blood、ヴァンパイア、

彼らについて何も知らないはずなのに、ひどく胸が痛んだ。



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