第1話――襲来
――長くて、広い暗闇の中にいる。
長くて、と考えたのは、どうしたわけか俺はここがトンネルのような場所だと知っていたからだ。もう一つ知っていることがあって、それは、振り返ってはいけないということだ。トンネルの中を前へと進んでいく。その逆はありえない。
「おい、起きろ」
前方の何処か――暗闇の向こうから、声が聞こえてきた。それは抑揚を押さえた男の声であった。
「さぁ、起きるんだ。そして、こっちに来るんだ」
声は俺に進むように促した上で、そのまま残響を伴って消えた。
「ねぇ、起きてよ」
俺はびくんと身体を痙攣させ、俺なんかを起こすのはいったい何者だ、とこれ以上開けないくらいに開いた目ん玉の先には、やはりというか姉ちゃんがいた。
15歳以上年の離れた姉は寝巻き代わりに使ってるよれよれのTシャツの襟元から、ぎりぎり乳首の見えない程度に乳房を覗かせていた。覚醒直後で当然のごとくテントを張っている思春期の男子高校生には大層難儀である。
いくら美人とは云え、血の繋がっている姉に寝起き早々欲情するのはあまり気分の良い物ではないため、ここ一年で最低の目覚めと云えた。そして何と返したらいいのか特に思いつきもしなかったから、
「なに?」
と自分でも驚くくらい不機嫌に、睡眠中に吸い込んだ淀んだ空気を音という振動付きで吐き出した。
「なに?」と姉は俺の言葉を繰り返した。「何で怒ってるの?」
「怒ってなんかないよ」
と、俺は弱々しく返事した。肺に残っていた空気がそれしかなかったのである。
「ううん、怒ってるでしょ」
俺は息を吸い込んだ。「……だから怒ってなんかないよ」
「いや、怒ってる。私が悪いなら謝るよ。ごめんなさい」
「だから怒ってないって!」
「ほら怒ってる!」姉はまるで鬼の首でも獲ったように騒ぎ立てた。
「……じゃあ怒ってるよ。なんだよ、朝っぱらから」
「じゃあって何よ、じゃあって」
無茶苦茶面倒臭い。俺は本当に怒りそうで、それは折角の気持ちのよい日曜の目覚めを邪魔されて、酷く面倒くさい感情であった。
しかし、そんな感情を露わにしたところで余計面倒くさくなることは容易に推測できるので、俺は状況を効率的に処理するため、ゆっくりと、言葉と態度を選んで云った。
「ところで、起こしてくれてありがとう」
「……どう致しまして」
俺は一呼吸置いた。
「それで、どうして起こしたの? 今日日曜でしょ」
「ああ、それはね……」
俺は今日の今日、今の今まで忘れていたことを知らされた。
今日は俺の誕生日なのだ。
それがどうして俺を起こした理由になるのかは最後まで明らかにされなかった。
欲を言えば余計な誕生日プレゼントは不要だから、惰眠を貪る権利と時間とをプレゼントして欲しかった。あと、そのまま布団の中にこもりたかった。
「さぁ、携帯ショップに行くよ」
「えええっ……」
姉はワンピースにベージュのカーディガンを羽織り、鏡の前で身支度を始めた。携帯ショップ? 俺を置いて動き始める状況に若干戸惑う。
「もしかしてさ、誕生日プレゼントって携帯? 携帯あるじゃん」
「だってそれいつの携帯よ? もう5年くらい?」
姉から譲ってもらった携帯電話なので、姉の所有も含めて7年くらいだろうか。パカっと開いてその粗い解像度の画面を眺めているともっとかもしれないと思った。
他人と会話をしてたまに感じることではあるが俺は物持ちがいいらしい。持っている携帯は日本独自に進化を遂げたガラパコス機能を詰め込んだガラケーですら無い(むしろ、俺の存在そのものがガラパゴス化している)。ほとんど無駄な機能を削ぎ落した――というか、当時はそれくらいしかなかった――電話とメールしか出来ない携帯電話である。別に今までそれで困ることは無かったし、何しろ俺は携帯はただの道具だと考えていたから、最近のアプリ云々のスマホ(すまない、ホモ以外は帰ってくれないか)には興味がわかなかった。ちなみに俺はノンケであることを強く自覚している。
「今買わないで、何時買うのよ」と姉は訊いた。「イマでしょ!」なんてカビの生えた流行語は言わない。
いやいや、そんなの壊れた時に決まっているじゃないか。この女は何をわかりきったことを訊くのだろう。
――なんて事を正直に話してしまった時には、一週間くらい口を聞いてくれなくなるばかりか、俺に供給される筈のありとあらゆるインフラをストップされてしまう恐れがある。
自分の気持ちに正直になろうが恐らく結果は変わらないだろうし、仮令どうにかなるにしても言い分が通るまで姉に抗い続ける気力と労力を投入する気にはなれない。
「はぁ……」
……などと考えていると姉が溜め息をついた。「どうしたの溜め息なんかついて。幸せが逃げるよ?」
「いっそのこと幸せと一緒に逃げたくなるわよ! それは置いておいてシンスケってさ、欲しいものとか無いの?」
「ない」
「あ、断言するのね」
そう、俺は無欲な人間である。
食パンにもバターかマーガリンは塗るがそれ以上――たとえばジャムなんかをのせる行為――なんかは不要だと考えているし、将来金銭に余裕が出来たとしてもステータスとしてのクルマや一戸建てには興味が無い。更に云えば金銭にもそこまで頓着はない。衣食住が確保出来て、ネット回線でアマゾンからの宅配が届く環境があれば仮令山中奥深くであろうと離島であろうと全く十分であると考えている。
また4月から通っている高校の部活動も無欲そのものであった。
たとえば俺の所属している、犬儒派倶楽部という一風どころか三風くらい変わった名称をした部員三名のまさに廃部寸前の部活動は、特にこれと云った校外に自慢できるような功績や大会での成績などは一切無い。ただ昼間の屋上にダンボールを敷いて、日がな一日ひなたぼっこしているという、世間一般の常識に照らしあわせれば無駄としか云いようのない救い難い部活動である。名誉も部費もいらない、まったく無駄のない無駄な部活動。
以上の具体例からわかるように、俺は無欲を体現する存在なわけなのだ。
しかし犬儒派倶楽部の部長に言わせれば、まだまだだという。彼曰く、
「いいか、俺達の目指すところは無欲であって、禁欲ではない。欲や、世間の悪習、因習から解き放たれて自由になることを、俺達は目指すんだ」
そう言い放った部長の姿は、ドラクエでのちに勇者になる村の少年が最初に着ている布の服をジーンズみたいにダメージ加工したような防御力皆無のぼろを纏っており――率直にいえばほぼ全裸であった。
己の息子を左右に揺らしながら近づく彼を見て、俺はすぐに振り子の等時性の法則を思い出したが、あと一歩のところで「逃げろ!」と本能が叫び目が醒めると自宅にいた。まだまだ俺は自分の本能から自由になれていない――などと思いつつも、素直に「辞めたい」と思った。
「よし、買いに行こうか」
そんなこんなで我々は携帯ショップへと出かけた。
携帯ショップに着くと、日曜ということもあってか長蛇の列が出来ていた。
この時点で俺は三週間くらいの疲れが津波のように押し寄せてきてうんざりしていたのだが、姉は「二階にいきましょ」と云ってずんずんと登っていった。
やれやれ、と首を振ると、その途端に見覚えのある人物の姿が視界に入った。
長い、やや栗毛色の混じった天然パーマの髪の毛が特徴的な女性だった。「持田先輩?」と俺は声を掛ける。
「渡辺くんじゃん」と彼女は艶やかな――俺の主観だと、少なくともそう聴こえる――声で云った。
「奇遇ですねェ」と俺は柄にもなく大きな声で云った。「それにしても……今日はどうしたんですか」
「どうした」と持田先輩はしばらく俺の言葉を噛み砕いていたが、あきらめたのか「うむ、どうした?」と吐き出した。これが彼女の特徴的な喋り方なのだ。無駄なことは一切云わない。たとえ云ってしまっても、気にしない。
「や、らしくないなと思ったんです」
彼女は清潔で小奇麗な服装をしていた、とだけ云えば普通のように思われるがこの先輩に限りそれはおかしな話なのだ。
持田先輩は俺が犬儒派倶楽部に入る直接のきっかけになった先輩である。現在の形骸化した犬儒派倶楽部の部員達とは異なり、既に卒業した先輩たちの代は犬儒派倶楽部の黄金期であった。常にぼろを身にまとい、人の目を気にせず、学校や社会の皮肉を云うのが常であった。そういうと今の部員もあまり変わらないような気がするが、なんと云うか、もっとぶっ飛んでいたのだ。
そんな持田先輩が普通の格好をして、さらに携帯ショップにいるのは不自然としか言い様がない。(尤も、現代社会に於いてはボロを身に纏う集団のほうが不自然であるのだが)
「渡辺くん。私はね、犬儒派倶楽部を卒業した人間なんだよ」
「なぜ……なぜですか! 俺はあなたのことを尊敬して、だいぶ我慢してあの部活に入ったんです!」
好きであんな部活に入る人間など、気が触れているとしか思えない。
「そう云ってくれると嬉しい。だが私には私の事情があるのだ。君は君の事情があるだろう。精神の鍛錬を怠るなかれ。勉強ばっかしてないで徳を積むんだ。さらばだ!」
そう云うとバッと翻し、携帯ショップを去っていった――と思いきや、ピンポンと音がし、レジへと向かっていった。かっこ悪かった。
「シンスケ、もういい?」
姉は様子を見て待ってたみたいだ。ニヤけている。別にライトノベル的展開なんてこれっぽっちもなかったのだけれど、説明するのが面倒臭いな。
携帯は見事にスマートフォンしか置いていなかった。
高齢者向けの文字のでかいパカパカする携帯も売っており、俺はそれでもいいというと「ええースマホのほうがいいじゃん」と年齢を10歳くらい間違えた反応を見せたので素直に従った。
どうせ結果は変わらないのだ。料金は今持っている携帯より高かったが、姉が払うと云うのでこれまた素直に従った。
今持っている携帯電話を見せた時に店員の反応はこちらが驚いてしまうくらい驚愕に満ちた顔だった。「! 私が入社する前のモデル……ですね。私が高校生くらいかな」
そんなこんなで我が家にスマホがやってきた。
電源を付けたが立ち上がるのが遅い。学校のパソコンを連想させる遅さだ。技術の進歩はある一定のレベルまで達してしまうと、必ずしも便利になるわけではないようである。
ベッドに寝転び、有機ELのキラキラした画面を見る。指でぷいっと撫でると、その方向に流れていく。よく作ったものだ。俺なんか一生掛かってもこんな機械作れそうにない。そう思った瞬間、手に振動を感じた。ピロリロリン♪ と人工的な音が鳴る。なんだろう。
『新着メール 受信』
最初は、企業か携帯会社からのメールかと思った。しかしそういうメールは最初から受信ボックスに入っていたし、姉以外の知り合いには誰にもメールアドレスを送っていないため、メールなど届きようがない。ボタンが無いなあと思って、ああスマホに変えたんだったと思い出して、画面をタップする。そうすると振動とともに不可解な文面が現れた。
『助けてくれ。頼む』
……助けてくれ?
なんだこれは。俺は背筋がゾワゾワした。
――おいおい、ホラー映画じゃ無いんだぞ。
文章はそこで終わっていた。助ける? 誰を、どうやって?
間隔を開けずして、もう一通のメールが届いた。そこにはURLがリンクされていた。
リンクをタップし、俺はちょっと後悔した。「詐欺かもしれない」その線が濃厚であった。
しかし、押してしまったので様子を見ることにした。ゆっくりと、画面が構築されていく。「すまほう」という字と共に、サイトの印象通りの胡散臭いBGMが流れ、インドを旅行したような錯覚を覚えた。うるさいので音を切った。
「なんだこれ」
Android版とiPhone版とがあった。どうもアプリらしい。
俺は今にも不気味な振動がして『登録完了! 3日以内に5万円支払って下さい』の表示が出るのを戦々恐々としながら待ち構えていたが、5分くらいファイティングポーズをとっていても事態は一向に変化しないため、戻るボタンを押して待ち受け画面に戻った。
そしてそのまま、やたらとテンションの高い姉を醒めた心持ちで眺めながらケーキを食べ、アルコールを勧められたが断り、歯を磨いて布団に入り、寝た。そうしていつもと変わらぬ毎日が再開するのだ。
夜が明け、授業が終わり我々はいつものように屋上でひなたぼっこしていた。屋上は我々犬儒派倶楽部が占拠して日に当たっているため、他の学生からは畏敬の念を持って「日サロ」と呼ばれている。
「渡辺シンスケ君、君はどうしてそんなに離れているんだ」と例のフルチン振り子運動の先輩が云った。私のパーソナルスペースは彼に対してだけ余分に取っているのだ。
「先輩、それは自分に聞いてくださいよ」
「おおそうか。……おおい、なんで渡辺は俺を避けてるんだ?」と、先輩は自らの息子に向かって会話し始めた。全くもって自由だ。俺は再び「辞めたい」と思った。
「そういえば先輩。昨日持田先輩に会いましたよ」
「マジで!?」
がばぁ! と云った感じでフルチン野郎は跳ね起きた。彼も持田先輩のファンなのだ。
「持田先輩パネェっすハァハァ…………おい渡辺、どこで会って、どこに行ったかちゃんと確認しただろうなァああん!」
うるせぇ死ねカス。俺は適当に答える。「あっち」
「うおおおおおおおお持田先輩ぃぃぃやっふゥゥゥうううううううう!!! これぞ青春!」
フルチン馬鹿野郎はそのままの格好で屋上を飛び出し、青春を極めた者どもが集う世界――青春ワールド――へと旅立っていった。彼は自由なのだ。学校の職員も警備員も警察も、彼を止めることなど出来ない。もはや戻ってくることはないだろう。さっさと卒業してほしい。
「渡辺くん。村木先輩、行っちゃったね」
傍らから天使のような声が聴こえた。「居たのか辻堂」
ダンボールからボッティチェッリのヴィーナスの誕生の如く、辻堂ハルヒが姿を現した。キラキラと汗が辻堂の繊細な頬を伝って滴り落ちる。「最初っから居たよ、ひどいな渡辺くんは」
俺の貧相な語彙では辻堂の可愛らしさ・愛らしさ・繊細さを表現するのに足りず、たとえ豊富であったならば原稿用紙400枚は余裕で埋まるだろう。
俺が持田先輩が去ったこの部に残る理由はただ一つ、辻堂である。一つ、難点があるとしたら彼がセックスに於いてもジェンダーに於いても男である点だ。
が、辻堂を形容するために生まれたであろうと推測される数々の美辞麗句を考慮したならば、まぁ些細な問題であろう。繰り返すが俺は誓ってホモでは無い。
「なんであの先輩捕まらないんだろうね」
「……いや、多分何回か捕まってると思うぞ。そろそろ退学じゃないかな」
「あと一年もしないで卒業なのにね。でも村木先輩が辞めちゃったらこの部活廃部だよ?」
……それは困る。俺が持田先輩のいないこの部活にわざわざ残っているのは辻堂がいるからだ。たとえフルチン村木先輩でもいなくなると問題が起こる。
「あ、帰ってきた」
「え」
ドタドタと階段を駆け上がる音がして物凄い勢いで戸が開くと「うぉい! 渡辺、辻堂!」と大きな声で叫んでこちらへ駆けたきた。二人はほぼ反射的に避け、先輩はダンボールにくしゃりとぶつかり、ディオゲネスの樽を模した我々の活動拠点は見るも無残な姿に変貌した。
「どうしたんですか先輩」
「どうしたもこうしたもあるか! 化け物だ」
「「化け物?」」
俺と辻堂はほぼ同時に声を発した。
辻堂はその意味を頭の中で転がしているようだがその様子があまりにも可愛くて思わず目を逸らしてしまった。日差しが眩しいのか辻堂が眩しいのか俺には判別できない。結局俺にも先輩の言葉の真意は理解できなかった。
「いいから逃げるぞ」
ふざけるな。俺と辻堂のデートタイムを邪魔をしておいて何を云うのか。
「俺はここに残ります」そして教員が来ようが警察が来ようが機動隊が来ようが、ここで辻堂を守るのだ。
「……わかった。じゃあ俺達は行く。お前のことは忘れないからな」
「じゃあ渡辺くん、先行ってるね!」
俺は辻堂の台詞を牛のように三十回くらい反芻してみるものの全く理解できなかったが、辻堂の後ろ姿を見て了承した。
「ええええええ!」おい、ちょっと待て。全裸の分際で、辻堂きゅんを攫うとは、一体どういう了見だ!
「待て!」
走りだした俺は異様な物音に阻まれた。
背後から気配がし、少しでも動いたなら息を止められるような気がした。振り返ってはならない。なぜかそう感じた。――しかし、俺は振り返った。
奇妙な生物が――生物なのかわからない――浮かんでいた。黒くて、モモンガとエイの中間くらいの姿で、強いていうならウルトラマンに出てくるジャミラを毛むくじゃらにしたような姿をしていた。全長2メートルほどの怪物である。それは羽ばたきもせず、屋上の少し外れたところで静かに浮いていた。もちろん足場など無い。
事態の異様さに呆気を取られていると、それはゆっくり近づいてきた。口や鼻は見当たらず、目だけが二つ並んでおり、確実に俺を視界に収めていた。
――そうだ、スマホ。
警察かなんかに連絡しようと思ってポケットのスマホに手を掛けたが、冷静に考えるとこの場は逃げるべきである。一体俺は何を考えているんだ。こんな事を考えている間にも状況は悪化の一途を辿っているというのに。非日常的な展開は人間の思考力を極端に鈍くするようである。
またもや異様な音が響いた。それはその怪物から発せられているらしかった。金管楽器の一番低い音を汚したような音だ。
もはや脳内で反響するあらゆる思考は現実逃避に他ならなかった。
なんでこんな目に合わなければいけないんだ? 俺がいったい何をしたんだ? なぜこんなに怖いのだろう。
常日頃から当事者ではなく、第三者を気取ってる俺はこんな状況冷静に分析して対処できそうなものなのに、何も思いつきもしない。いや、逃げるってわかってるんだ。逃げるってどうするんだ? なぜ考えてもジリ貧なのはわかってるのに時間稼ぎをしてるんだ?
どうも俺は偶然何かが起きることを期待しているらしかった。警察や自衛隊が蹴散らしてくれるとか、誰かが石でも投げて気を逸らさせてくれるとか。俺はこの期に及んでも受動的だ。その時、
「走れ!」
スイッチが入ったように俺は全速力で走りだした。出口へ向かって、足が痛くなるくらいかけていく。
――あと少しだ!
あと少し、そんなところで俺の周囲はカーテンを覆ったように暗くなって、暗転した――。