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《Course(家より)》

 佐竹君の死から二日が経った。未だに心にポッカリと空いた穴は埋まらない。

 最近は勉強もろくにしていない。センター試験まで一か月もないというのに――。やることなすこともう面倒くさくなり、単にやる気が起こらないのが原因だ。だからここ数日は家で携帯を昼も夜もいじくるだけ。外出なんてもってのほかだった。

 でもこの日、私は外出しなければならない。なぜならば――。

 しかしまだ時間が早すぎる。午後六時辺りからそれは始まるというのに、まだ昼に入ったばかりなのだ。なので、私はリビングでテレビを見ることにした。

 テレビの電源を付けると、たまたま正午のニュースがやっていた。それを確認すると、すぐに私はテレビのリモコンを手に持つ。が、正直特に見たいものがあるわけじゃない。


「まあ……いっか」


 そう妙に納得をすると、私は手にしたリモコンを適当なところに投げ、黙ってソファーの上に寝転んでテレビに目を向けた。


(フゥアアアー)


 大きなあくびを一つ。……ああ、私以外誰もいなかったことが幸いだったけど、よくよく考えてみれば女性として、これ程大きい欠伸は恥ずかしいを超えて情けないことだ。少なくとも佐竹君の前では絶対にしないだろう。


「本当に……ダメだ……」


 自分に小さく悪態をついた。


『次のニュースです。ある受刑者が脱獄し逃走しました。この男は近くの家の車を盗んだものと思われ、その車の持ち主及びその家族は全員殺害されました』


「物騒だなあ……」


 そう呟くと、持ってきたスナック菓子の袋を開ける。そして寝ながら袋の中に手を入れては一つずつ菓子を取り出し、黙々と口の中に入れた。


『なお、コンビニの監視カメラの情報から男は△△市に潜伏している模様。警察は皆様の新たな情報提供をお願いすると共に、△△市に住む市民の皆様に注意と警戒を促しています』


「えっ……」


 言葉が漏れた。と、同時に右の指でつまんでいた菓子が落ちる。


『以上でニュースを終わります』


 ニュースは終わり、料理番組に切り替わった。でも私の驚きはまだ続いている。私の行こうとしている場所がその市にあるからだ。


「大丈夫かなあ……」


 一抹の不安がよぎった。それは刑務所を脱獄した男に遭遇するのではないかということだ。

 でもそんなことはめったに起こるはずがない。それに――万が一出会っても公衆の場で襲うようなことはしないだろう。というよりまず会わない、絶対。まあ、根拠のない自信だけど。


「はぁ、考えすぎてた……」


 落とした菓子を拾い、ためらいながらも口に入れる。そして再び黙って袋にある菓子をまた口に入れた。




 その後は特に覚えていない。確かテレビを見て無駄に時間を潰していた気がする。多分それだけだ。勿論その間外に出てはいない。

 そして空が橙色を帯びる少し前に、制服に着替え終えていた私はその日初めて外に出た。


 家の付近をたまたま通りかかったタクシーに乗せてもらうと、次のように運転手にお願いした。


「△△市にある、『●●』って言う葬儀場までお願い」


 そう、佐竹君との最後の別れをするために――。



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