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《Meanwhile(関連性)》

 太陽はどの場所にも差別無く辺りを照らす。同様に、雪も、そして強風も共にある場所に降った。

 そこは佐竹の事故現場とはそう遠くない場所にある刑務所。そこであることを知らせる、けたましいサイレンが鳴り響いた――。



 半年前にある男が刑務所に入所された。罪状は殺人と死体遺棄。女子高生をナイフでメッタ刺した後に、山中に捨てるという残虐極まりないものだ。

 ゆえに男はこれからの長い間刑務所で服役していく――はずだった。

 しかし佐竹が死んだ同日、しかも日が落ちるか落ちないかの頃だ。男は看守の目を盗み華麗に脱獄したのだ。さらに自らの足で数分間走った後に、近くの家の住人を石で殴り殺害する。その後持ち主の車のカギを奪い、アクセルいっぱいに車を走らせた。

 ちょうどその頃に刑務所内でサイレンが鳴り響く。しかし時はすでに遅かった――。


 男は車を走らせる。幸いにも他に運転している人もおらず、検問もない。だからアクセルをさらに強く踏む。車はそれに応じてスピードを増した。

 ある一本道にさしかかる頃にはスピードは時速百キロをゆうに越える。自身を追っているはずの警察は今いない。自身を阻む信号も青色しか点灯していない。――そう、男にとって全ては順風満帆であった。盗んだ車にあったタバコを取り出すと、気持ちよく味を楽しんだ。

 その時。男の視界の先にある交差点の辺りに、突如誰かが道の中央へと歩いてくるのが映る。はっきりとしたことは、薄暗いのでよくわからない。しかし、その歩みは遠くから見る男にからでもおぼつかないのは分かる。

 これには殺人を犯した男も驚いた。すぐにタバコを歯にくわえたまま荒々しくハンドルを動かす。

 しかしそれだけではどうしようもない。それは男もわかっていた。ゆえにこの連続・・殺人犯は、気持ちよく足に力を入れて一気に踏み込んだ。



 ――そう、アクセルをだ。


 

 この男は確かに、女子高生を殺して山中へ遺棄したことが原因で、逮捕された。しかしそれだけではない。彼は他に三人もの人々を同様の手口で、しかも笑顔で殺している。

 警察はその事実をまだ知らない。なぜなら、あまりにも男の手口が巧妙だからだ。彼が油断しなければ、捕まることはまずなかっただろう。

 そんな男。彼は狙いを定めるやスピードを上げ、そして……。



 バーン!



 男は車を止めることなく、無慈悲にもその者を漆黒の鉄の塊で押し潰し、そして走り去っていった。

 殺しが好きな男にとってこれは快感以外のなにものでもないはずだった。だが、今回は違う。彼は笑顔にはなれなかった。

 なぜなら男の犯行現場を目撃した者がその場に居たからである。それも自身の顔を見られたと、自分で勝手に勘違いしたのだ。


「あの女……。顔は覚えた、後で必ずブチ殺す!」


 ハンドルを右手で強く握りしめて、強く心に誓う。と同時に、男は左手で煙草を一本出しそれをくわえて火をつける。それをかなり苦く感じていた。


 一方、目撃者である女は救急車を呼ぶために電話をした後、被害者である彼氏を頭を両手で優しく抱き、そして大声を上げて哭いた。風と共に凍てつく雪が顔に当たっているにも関わらず……。その姿はまるで愛する(ひと)を失ったようであった。

 そうその女、脱獄犯に目をつけられたこの人こそ涼子なのであった。しかし涼子はその事実を知る由もない。




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