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《★Second(主体の特性)》

そしてまたこの星マーク。でも大事なことが書かれているんだよなあ。

 さて、説明を行う前に一つ記号化しなければならないことがある。それはシュバリエ化した者を『A』守られることになった者を『B』とすることだ。理由は簡単、説明がしやすいからだ。逆を言えば説明が自分でも嫌になるほど多いわけだが。


「なんでそんなにも……」


 そんなこと私に聞かれても困る。きっと神様がそんな風にしたんじゃないかな? まあ、そんなこと信じていたらこんなこと続けてないけどね。とりあえずまだまだまだ説明があるから聞いていて。

 では、最初呟いたがAは死んではいるものの一般的に生前と変わりなく生活できる。しかしそれはBを護るためのいわば「手段」であり、それに必要ないもの、例えば食べることや呼吸が当てはまる。また死んでいるため心臓も動くことはない。その場合、それを行うための器官の動きそのものが一切働かなくなるのだ。

 またBをもし護り切れずに死なせてしまった場合、Aはかつての、つまり死んだ状態に戻り、その後同質量の砂になる。Bの存在は弱点、故に護る。そういう解釈もできるわけだ。


「つまり……私がもし死んだら……」


 そうなる。


「え、でもそんな死ぬようなことなんてまず起こらないから……」


 ……。


「なんか言ってよ!」


 ……話を元に戻す。

 一方Bを護るための力は異常だ。

 一つ目にAの身体能力は、専門のアスリート達の身体能力ですら比較にならないほど上がる。

 世の中には『火事場の馬鹿力』なるものが存在する。これについて、確かに死んだことが原因で脳の働きを制限する機能はなくなるから、Aの中で常に『火事場の馬鹿力』状態になっても起こっても不思議ではない。が、それでも説明できないほど、まさに馬鹿みたいに上がる。

 二つ目にAは身体がどのように傷つけられても、護るためならば瞬時に再生する。これだけでも恐ろしいのだが、本当に恐ろしいのは、回復するための起点となる基準、核が存在しないということだ。これはつまり胴体からだけではなく、身体が吹き飛んで腕だけならば腕から、頭だけなら頭から元に戻る。だから基準は存在しない。そしてすべてが完全に消滅してしまっても、Bが死の危機に晒されたら、護るために霧の中からすぐに回復してしまう。よって自身の身体能力を合わせれば、A自体に弱点らしい弱点は存在しないということだ。


「ち、チートじゃん……」


 だが、話はまだ終わらない。この現象は、この時点でももはやファンタジーに近いというのに、最後に物理法則すら無視する能力がある。

 例えば涼子君が日本、佐竹君が南米――まあ、こことは真反対にいるとしよう。ここで涼子君が誰かに、しかも人通りのない場所で襲われたとする。どんなに身体能力や再生能力があっても、通常ならこの時点で涼子君は死亡、佐竹君も死亡でまさにDead Endなわけだ。


「いや、なんでそこだけ英語を」


 しかし! Aは根本的に次の能力をもつ。それは、『Bに死の危機が迫っている時、Aはいかなる状態、場所にあってもBの半径一メートル以内に、瞬時に移動できる』というものだ。ここでの「瞬時に」とは、テレポートと同義だと考えてもらっても構わない。

 生物学を主とする私にはいまいち理解できない。が、量子力学には果てしなく壁にボールをぶつける試行を繰り返せば、小数点以降の、ゼロが並ぶ遥か先の確率だがその壁をボールがそのまま通り抜けることのできるという「トンネル効果」というものがある。どうやら粒子、想像できないほど小さい物質が波としての性質を持つためらしいが……あくまで粒子だからだ。それを人の身でやろうと思ってもまず無理だ。

 しかし、Aはできる。しかも的確な位置へとね。


「話がいまいち理解できないけど……つまり私がさっきの状態に陥っても……」


 うん、A自体の身体能力と合わせればまず君は死なないよ。だから安心すればよい。しかし話が……でも、もうそろそろ……。




 横道がそう言うと、調理場のほうを見た。正確には調理場の先にある廊下を見ていた。

 しかしその先にいったい何があると言うのだろうか。それに何かがあるとしても一面に敷き詰め、積み上げられた紙束の先には行きたくない。

 そんなことを思っていると……あの聞き覚えのある電子音が聞こえてきた。そう、あの聞き覚えのある……お風呂のお湯が沸いたことを知らせる音が。それもはっきりと。


「さっき佐竹君にお風呂を入れてもらったのだ」


「何でそんなことを……私」


「いやあねぇ、そういえば涼子君ずっと寝ていたからお風呂に入ってなかったなあと思ってね」


 いや、そういう問題じゃない。私も一応……いや、完全に女子だ! 気持ちはありがたいが、風呂に入っていないことを普通言うか!? しかも数日前に会ったばかりの男の家(?)に入れようとするか!?

 佐竹君の方も問題だ。なぜお風呂の


「スイッチ」


を押した?! なぜこいつの言


「お願い」


……を聞いた?!


「いや、私が入りたいからお願いしただけだ。涼子君はそのついで。深い理由はない」


「……」


 周りの紙束が両肩にドシンと乗っかった気がした。


「ああそうそう、涼子君が風呂に」


「入りません」


「入るとして、これからは気を付けるのだ。何せ風呂場は転倒により死亡することが多い。故に先程の話と合わせれば、涼子君のシュバリエ化した佐竹君がやってくる、よ」


 横道は私に微笑みかける。

 何が言いたい……少し考え……えっ!


「そ、そんなへましません!」


 顔が熱くなっていく。


「いや、するだろう!」


「いや、しない!」


 口調を少し強める。


「する!」


「しない! だったら今からお風呂に入りに行ってやる!」


 そう言うと私は廊下の紙束に足を取られながらも、音のした方へ向かった。話に乗せられた感もある。しかし! 今は横道の妄想を挫かなければ……なんか変な方向に行っているのは自分でもわかる。でも、入る!

 そしてすぐに私はお風呂に入った――




 一人残った横道は部屋の中央にあるソファーにもたれかかった。細くした目で天井を眺め、ため息を一つつく。そして可哀そうなものを見たかのように一言、こう呟いたのであった。


「実を言えばB、いや涼子君にもある変化があったのだが……まあ、時機にわかる、か……」


 その直後、風呂場から涼子の悲鳴が聞こえてきたのは言うまでもない。





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