《★First(定義と要因)》
★マーク=一人称「横道」に変更+長い説明の回+とばしてもあとでまとめる+読み手を減らす個人的にも嫌だが重要な回
さて涼子君が落ち着きを取り戻したようだし、私、横道が今まで多くの人間から得たデータを基に『シュバリエ』の説明をしよう。なんか講義のような、参考書の説明になってしまうような気がするし、少々長くなるけど、いいよね、涼子君。ああ、シュバリエの元々の意味を端的に言えば、騎士という言う意味だ。
まずシュバリエという「現象」だが、これには定義がある。それは、『死んだ雄の個体が愛する雌の個体のために、動き、身を挺して護ること』だ。
「死んだ……雄? てかなんで涼子く」
涼子君、いい質問だ。実を言うとこの現象は、多くの生き物、いや、性を持つ多くの動物に発現するのだ。しかもそれぞれの発現率はいずれも低く、そして異なっており、ヒトという種であれば僅か0.0005%の確率だ。これはつまり男性が1億人いるとすると500人が発現していることになる。しかももう一度言うが、ある条件を満たした……男だけがね。ああ、わかりやすくするために、ここだけは整数でホワイトボードに書き込んでおくよ。
「はあ。にしてもある条件って……そういえば男だけって、女性のほうは」
発現した人には含まれない、というよりも定義を聞いていたよね?
尚発現することを私は『シュバリエ化』と呼んでいる。この現象は世界レベルでも殆ど確認されておらず、そもそもこの現象を調べている人間は日本に至って言うと私ぐらいしかいない。……世界にもいたかどうか怪しいのだが、確かいた。
次に雄がシュバリエ化する要因だが、雌を、自身が死んでいるとはいえ身を挺して護るのだ、よっぽどその雌を愛していなければ護る気にはならないだろう。実際これが要因の一部だ。
一方で雌のほうも自分が愛していない相手に守られたくはないだろう。涼子君、君だってそうだろう。
「まあ……つまり、両想いであることが一つ目の要因ということね」
そうだ。それが一つ目の要因だ。
次に騎士物質という中二病くさい名前だが、その物質を体内に宿していることが二つ目の条件だ。これは色がピンク、スライム状になっている。
ところで世の中には『質量保存の法則』という法則がある――簡単に言えば無機物だろうが有機物だろうが、自然条件下では原子が突然の増減、もしくは全く別の原子にはならないというものだ。しかし抽出し、分析した結果、その法則を無視し、まさに別の物質になってシュバリエ化する予定の雄の体に染み込んでしまうのだ。まさに奇跡と呼べるだろう。ところで涼子君、君は質量保存の法則について分かっているよね。
「え? ……いや、あっ、うん! あれねアレね、分かるよ」
うん、君のプライドのためにこれ以上追及しないでおこう。ちなみに理系なら理解しなければならないことだよ。
話を続けると、騎士物質が体内に入ると急に頭がおかしくなって、死に直結するようなことをしてしまう。これがなんとも厄介で、その身をどれだけ強く拘束しても、監禁しても、結局平均三十分後には何かが作用して死んでしまう。佐竹君の場合は死んだ蚊だったね、それが体の中に入ってしまった後の佐竹君はどうなったな?
「はい、確かに突然おかしくなって……その後」
その後は言わなくてもいいよ。辛いだろうから。アッ泣かないで、色々と困るから。めんどい。
……まあ、これが二つ目の要因。
そして三つ目、四つ目の要因だが……、これはどうも必然的に起こるようなのだ。
「どういう言うこと?」
それについて。まず三つ目はヒトの場合、愛する者の死後七日以内に今度は自分自身が自殺以外の外部からの物理的要因により、死の危機を迎えてしまうこと。これはこの現象の根本的なことに関わることなのだが、奇妙なことに必ず七日以内に『百パーセント』起こってしまう。そして最後なのだが……。
「その最後は?」
『血』
「チ?」
そう血液。これが騎士物質を浴びる前後に必ずその雄の体内の中に雌の血液が様々な形で必ず入るわけ。涼子君の彼のケースの場合は蚊によってあらかじめ媒介されたものではないかなあ。ちなみにこれが色々なことに関わる。故にまずは粗方の説明をする……その前に。
「その前に?」
後ろを向いてごらん……。
横道の言った通りに私は後ろを向いた。
一台の机。その上には緑茶とそれにアンマッチなカップケーキが数個置いてあった。くすんだこげ茶色の湯呑みの中と、白と黒のそれの双方からは白くか細い湯気が出ている。このことからすぐに作り立てだということが分かる。
「君の彼氏、佐竹君が作ってくれたのだ。お茶もたぶん長い話になるだろうし、それに三日間ねえ……」
そう言うと横道は私のお腹の方を見た。……確かにそうだ、先程よりかは何故か収まっているもののお腹がかなり空いている。
「ゆっくり食べた方がいい。その間にも説」
待っていられない。一個目をすぐに口に無理やり押し込んだ。そのあわてて食べる様子を横道は苦々しく笑いながら見ていた。
しかし佐竹君はどこにいるのだろうか。一緒に食べればいいのに。
「さて、シュバリエ化した者の特性だが……」
はぁ、唐突にまた頭の痛い話が始まる。さらっと聞き流そ――。
「食事は一切摂れない」
「!?」
なぜ食事の話から? 偶然……んなわけない。お前絶対人の心読んだだろ!
「読んだよ」
「……」
もう何も言わない。――言わない。
(説明が)続く……。




