『愛してる』
――君の事が好きだった。
「おはよう。」
毎朝挨拶してくれる時の君の陽だまりの様な笑顔がとても好きだった。
その一言だけで僕は幸せで、毎日が鮮やかだった。
何処に居ても必ず君を探してしまう自分がいて、君と目が合うと恥ずかしくてすぐ逸らしてしまうけど。
そんな幼い自分の恋心も僕は好きだった。
今は小さなこの芽を大切に育てていこうと決めた。
***
あれから幾つの季節が巡っただろう……
僕と君の関係を言葉で表すなら“友達”
自分で言うのも変だけど、すごく仲良くなれたと思う。
腕を伸ばせば触れられる距離に君が居て、君と他愛のない話をする時間が一番幸せ。
君の隣はとても心地よくて、こうやって友達として君の傍に居られるだけで僕は十分だった。
だけど。
「貴方は私の“一番の友達”だよ。」
君にそう言われて、嬉しいはずなのに何故だか無性に切なくなった。
“友達”と“特別”は違う……。
「僕は君の事を“愛してる”よ。」
家でひとり君の事を想っていたら涙が出てきた。
僕の気持ちはいつしか“好き”から“愛してる”になっていた……
自分でもその時初めて気付いたんだよ、自分の気持ちが思っていた以上に成長していた事。
それから僕は“一番の友達”の座を守り続ける事にした。
相変わらず僕の胸には切なさが燻っていたけど、でも本当は分かっていたから。
君が“一番好き”なのはアイツだって事・・・・・・
悔しいけど、アイツに向ける笑顔が一番輝いているから。
嫌でも分かってしまったんだ。
君がアイツの隣を望むなら。
それが君の幸せなら、僕は2人のキューピットになろう。
今まで沢山の幸せを貰った僕からのお返し。
心配する事なんてないよ。だって、アイツも君の事を……。
だから君が悩んでいるんだったら僕は背中を押してあげる。
君にそんな不安な顔は似合わないから。
「絶対大丈夫だよ。」
僕はそう言って、アイツの元に走って行く君の背中を見送った。
僕の言葉が君を勇気付けられたなら嬉しい。
これで良かったんだよね。
だって、今アイツの隣を歩いている君は幸せそうで、僕が今まで見てきた中で一番キレイな笑顔だから。
後悔なんてしてないよ。
僕はこれからも君の“一番の友達”
だから今日だけは勝手に溢れてくるこの涙を止められないのを許して欲しい。
明日にはちゃんと笑顔で「おめでとう」って言える様になるから。
そうしたら君はどんな顔をするのかな?
きっと僕の好きな陽だまりの笑顔を返してくれるよね。
***
今まで君に言えなかった言葉。
これからもずっと蕾のまま僕の中に残っていくこの気持ち。
この声が君に届く事はないけれど。
――君の事を愛しているよ。
読んで頂きありがとうございました!綺蝶