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Long time no see  作者: azusa
第1章
9/21

5話‐襲撃者(前編)

お気に入り登録が21件もありました。


感激です。

この小説を登録していただき、本当にありがとうございます。

なにぶん進行速度も遅く、ヒロインもおらず、ファンタジー小説としては本当に地味な展開で申し訳ありませんが、どうかもうしばらくお付き合いくださいますようお願いいたします。


今回は、この小説の舞台についての補足を。

小説本文で説明するのが難しいので、苦肉の策です。

謎の生物達との戦闘の後。


ザルツ隊長は、平原の街道から少しそれた場所の、小さな雑木林を野営場所に選んだ。


あの生物の焼却作業が手間取ったからかな…。

今日中には町か村に着くかもしれない、というようなニュアンスで、オルスが話しかけてきていたけど、まあ僕の予想なだけで、実際は全然違うこと話しかけていたのかもしれない。

戦闘自体は一瞬だったけど、回収作業は倍以上の時間がかかっていたし、日が落ちたのも程なくしてからだった。


いやぁ、しかし、気分の悪い出来事だった……。

なんといってもあの臭い……。

今も、胸がムカムカする。

ゴムを燃やした後の様な、不快な臭いがまだ鼻で燻ぶっている。


ただ、その臭いに皆はそれほど不快感を示していなかった。

彼等にとっては、よく嗅ぎ慣れた臭いなのかもしれない。

現代人が、排気ガスに慣れている感覚に近いのだろうか。




僕は、皆の焚火から離れ、大きな木に背をあずけて夜空を見上げていた。

なんとなく一人になりたかった。自分の考えに集中したかったのもある。


どうやら世界が変わっても、星の輝きは変わらないらしい。

あと、月も一つだった。

二つ三つあったらどうしようかと思って心配した。



昼間の、ザルツ隊長達の戦いを思い返すと、いまだに身体の震えが湧き起こって来る。

僕は確信した。

ここは、「地球」じゃない。「過去の世界」でもない。


「異世界」だ。



昼の光景を思い返す。


見たことのない異形の生物達。

始めは、狼か野犬の群れかと思った。

黒い体毛に覆われた、1mあまりの小柄な体躯。

でもそれらは、近付いてくるにつれ、四足歩行ではなく二足歩行で疾走してきているのに気が付いた。


あの顔面――――人間のようで微妙に違う造形。

人と、猿と、その中間の顔立ち。

なのにそれを「類人猿」だと感じられなかったのは、口からはみ出た牙のせいだろうか。

白内障のように、白く濁り切った巨大な眼球のせいか。

なんの理性も感じられない、獣の叫び声のおぞましさだったろうか。

それとも、手に持つ、(多分血で)黒ずんでいた、粗末な鉄製の剣・斧のせいだったか。…絶対、盗んだりしたものだろうなあ……。


予想外だったのは、どうやらそこまで強くはなさそうなところ。

いや、もちろん俺みたいに一般人だと、瞬殺されるだろうけどね。

少なくとも、ザルツ隊長達職業軍人の面々には、手強い相手…ではなさそうだったし。

事実、瞬殺されたのはあちらだったしね。

手際の良さにびっくりした。

田舎の爺ちゃんが、実家に作られたスズメバチの巣を楽々駆除しているのを、何故か思い出してしまった。



……しかし、振り返ってみると…。


現実離れした森林。

中世の騎士達。

正体不明の、モンスターのような生物。

そして、何故か『漢字』が存在するという、トンデモな事実。



『RPG』。または『ファンタジー』。

そんな言葉が、ふと脳裏をよぎる。



そういえば、昔やったRPGゲームに、異世界に飛ばされた主人公がいたよな。

俺と違って、「異世界」とは言っても、時間軸が違うだけで同一世界だったはずだけど…。


……もし、そのシナリオと僕の状況が同じだったら……。




いかん!いかんいかん!考えるな!

多分違うと思いたい…。

旧文明が滅びた未来へタイムスリップしたなんて、マジ勘弁だ。


……、でも、違うと言い切れないところが怖い…。



「…とりあえず、今日はこのまま寝てしまおう「ソレ無理デス」…か?」




ミシッ。




痛っ!首?!骨?!



「っ…!かっ……?!」


「静カシナサイ、騒グダメデス、コノママ骨折リマス、イイデス?」



カタコトの…日本語??

日本語?!何?!誰?!馬乗り?!痛!!

黒い服…男?女?



「アナタ、質問コタエル。正解、マバタキ1度。間違イ、マバタキ2度。イイデス?」



首を絞める力が弱まる。痛みが、少し引く。

ザルツ隊長達は…遠い。しかも焚火から離れていく…?


待って!こっちに気付いて!!


ゴスッ!

一発、頬を殴られた。

こっちを見ろ、ということか…?

心臓の鼓動が、高まる。

命を、握られている…。



「言葉、間違ッテマス?通ジルデス?」



意味は通じる…でも、違う。

外国人が、カタコトの日本語を話す様に、単語のみを組み合わせて話している。


ミシ…。


首の圧力が高まる。



「マバタキ、オ願イデス。殺ス、イイデス?」



瞬きを、一回。言葉は通じていると、訴える。

相手の顔は…見えない。

全身黒づくめで、顔も黒い布を被っている?からか見えない。

この暗闇の中で、僕の顔が見えるのか?



「ワカリマシタ。」



首への圧力が下げられた。

でも、苦しいのに咳き込めない。

まだ、相手は僕の首を締めたままだ。



「アナタ、彼等ニ連レラレテ、ココマデ来マシタ?」


瞬きを一回。


「何故一人デス?ラフェルドナスデ、赤イ髪ノ男ト、会イマセンデス?」


赤い髪の、男…?

そんな奴、知るか。あの森では、15日間ずっと、一人だった。

瞬きを、二回。



「h;;w……。mowduwr5,wedmluals,:swiud9dn。」



相手が、独り言を呟いた。

思案しているようだ。

言葉の抑揚は平淡だが、心なし焦っているように感じる…。


しかし、この声…。

男?にしては高い。女か?

でも、この握力の高さは何だ?

何にせよ、顔がわからない。



「ワカリマシタ。少々、面倒ナコト、ナッテルミタイデス。アナタ、コレカラ攫イマス。」


何?!


「ソノ時、騒グシタラ、骨折リマス。アト、アノ兵士達、何人カ殺ス、イイデス?」



…。

……。

 


瞬きを、一回…。



「デハ。」



そう言って、相手は僕をローブごと肩にかつぐ。

この世界に来てからの食料事情で、僕の体重が軽くなっているとはいえ、凄い膂力だ。

相手の身長は、思ったより高かった。

170cm以上。多分それくらいはある。



「口開イタラ、舌噛ミマス。危ナイデス、イイデス?」



もう首は絞められていないので、頷いておいた。



抵抗すれば、多分殺されはしないにせよ、五体満足は望めない。

そして、ザルツ隊長達に危害が及ぶ。


正直。

たった一人の相手に、隊長達が遅れは取らないだろうけど、今は夜間だ。

視界も悪く、集団で行動できない。

この謎の人物にかかれば、兵士の一人や二人、すぐ殺されそうな気がする…。

絶対、普通じゃない。

まるで、アサシンだ。


だから、従った。

いきなりで驚いていたこともあるが、よく叫ばなかったな、自分。

…ああ、そうか。

本当に驚愕した時、人間は声を発せられないんだったか…。



「行キマス。」



相手が告げる。


……え?まさか、僕をかついだまま、飛び上がるつもりか?


相手が膝を曲げ、木立に身を投げようとした刹那。


ガスン!!


相手の足もとに、槍が刺さった。

投げ槍。

こんな夜間に?!



僕が、かつがれたせいで相手の背中側にある頭を、無理やり正面に向ける。


そこには、長身の兵士――――オルスが立っていた。








セラルード家に生まれ育った自分にとって、『古代帝国言語』‐‐‐‐秘匿されし文字群は、特別な意味を持つ。


「セラルードの者は、古代帝国への憧憬に魅入られている。」


幼いころから、そしてそれは、多分自分の生まれる遥か以前から、ずっと他人に言われ続けてきた。



セラルード侯爵家。

エス・レス・カーンで最も名誉ある家の一つ。

にもかかわらず、宮廷内の権力闘争には露程も関心を示さない。

ただ狂うように『古代言語』のみを追い続けるさまは、探究心の一言で片付けるには足らない妄執の体。


庶民が一生馬車馬の如く働いても手に入れられない額の金貨を、たかだか文字の為に一瞬で浪費する。

正気を疑われてもおかしくない。

金持ちの道楽と指差され非難されても、仕方ない。


でも、それでも自分は。

自分達セラルードの祖は、歴史という大河の浪漫に焦がれた探究者なのだと、そう思っている。



血に刻まれた宿命だろう。

そして自分は、例えどんなに非難され、嘲笑されようとも‐‐‐‐


それを、誇りにも思う。



過去を、歴史を読み解く楽しさを最初に教えてくれたのは、当代最高の古代帝国研究者の祖父だ。

悠久の歴史の足跡を辿る崇高さを、実際に大陸中を巡ることで教えてくれたのは、高名な冒険家の父だ。



侯爵家という殿上の地位にありながら、自衛軍という雑多な身分・境遇の人間が集う職場を選択した。

約束されたエリートコースを棒に振って、過酷な環境に身を置いた。

自身の力だけが身を守ってくれる場所‐‐‐‐そこで生き抜けない人間では、駄目なのだ。

未だ発見されていない、未知なる古代帝国の遺跡。

今ではそこは、魑魅魍魎、夥しい魔物の跋扈するダンジョンと成り果てている。



「残念ながらお前に、魔術の才能は欠片も無いのう。」



幼いある日、祖父の友人で大陸五賢者の筆頭・リヴァルス様にはそう告げられてから、父のように魔術で冒険家を目指す道は潰えた。

ならば、あとは自分の戦闘能力を鍛えるしかないではないか。


槍。


それが、神が自分に唯一、微笑んでくれたらしい力。

だから隊長を‐‐‐‐槍の名手・ザルツ=イルヴァーンの部隊を選んだ。



故に。

この、視界悪い夜闇の中で。

セーヤを拉致し、逃亡を謀った不審者を止める為、自分は自然に槍を放っていた。



だが、外さない自身のあった渾身の一撃を、相手は必要最小限の動きで避けた。

気配を消し、セーヤを避け、相手の機動力を奪う為に脚を狙った槍は、地面に突き刺さる。


相手は僅かな逡巡の後、再び逃走を謀る。



逃がさん!



どう見ても、セーヤの同意による行動ではないだろう。

奴隷商にしてはきな臭い…暗殺者ギルド?何の為にセーヤを攫おうとしているのか謎だが、むざむざ渡す訳にはいかない。


隊長には悪いが、セーヤを本国に移送後、セラルート家の力を持ってして彼の保護観察人になる腹積もりでいるのだ。

この3日間という短い期間でしかないが、セーヤは確実に、古代帝国言語を習得しているという確信に至った。

個人的に所有していた羊皮紙に書かれた173文字を暗誦し、自分の知らない幾つかの文字も教えられた(確かめる術はないが、父や祖父なら知っているかもしれない)。


断言する。

彼を――――セーヤを王宮へと召還すれば、魔術庁の監視下におかれ、『古代帝国期の魔術』究明の為だけに一生を費やされるだろう。

自由を制限され、下手をすれば捕虜の如き扱いになるかもしれない。


彼は、奇跡だ。

我々セラルート家に、神が遣わしたとしか思えない、奇跡の存在だ。


そして、それ以上に私の良き友人だ。

この3日間を通し、わかった。言葉が通じなくとも、私は彼を友と思っている。

彼は私に、とある古代文字を教えてくれた。

確か…『感謝』…だったか…。

良き言葉だ。本当に、古代帝国言語は奥が深い。



それを私に教えてくれる友を、貴様に攫わせるものか!!



一足飛びで、相手に肉薄する。

腰の剣を抜きざまに、相手の四肢を狙う。


だがどの刃も、相手には紙一重で届いていない。

葉が揺れるように、のらりくらりとした動きで全て避けられる。


強者だ。

自分より数段上の使い手。

セーヤを担いだままでのこの動きは、およそ人間業では無い。

刃の、縦の軌道は決して通らない……。




では、「点」ならどうだ?!




先ほどの肉薄した際に、抜刀したのとは別の腕で投げた槍を掴んでいた。

剣を振り切り、その反動で槍の刃を相手に走らせる。


自分の力量では、生かして捕らえられるような相手ではない。


槍の穂先は過たずに相手の身体へ向かう。



その胴体に、槍の穂先が吸い込まれて----



(ヘキ)。」




目の前の空気が、固体化した。



「何?!」



ガヅン、という鈍い音を立て、穂先が止まる。

さながら鉄の盾で阻まれた如く。


……いや!

驚くべきはそこではない!



今のは…。

まさか、古代帝国言語?!



その魔術----今は忘れ去られた魔術。

『古代帝国期の魔術』ではなかったか?!



「悪いが、ここまでだ。」



素顔のわからぬ黒頭巾の向こうから、高い声が発せられた。

女?


いや、そこではない。

相手が『古代帝国言語』を使えるのならば……。



(バク)。」



身体の奥が熱い?!…膨らんで、いく?!


身体が、爆ぜる…?!




「オルス!!!」




耳に、セーヤの叫び声が響く………。

この作品を読んでいただいた皆様、読んでいただいている皆皆様、ありがとうございます。

もうすぐこの作品にも女性が登場しますので、お待ちください。


進行が遅い。

もっと戦え。

ヒロインなり何なり、とにかく女を出せ。

エルフは?竜は?まだ?

etc,etc...のご意見ありましたら、お手数ですが、感想でよろしくお願いします。書置きをもっと練り上げます。


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